あれも聴きたいこれも聴きたい-倉木麻衣08 このアルバムは倉木麻衣のデビュー10周年という「自分にとってすごく大きな分岐点」に発表された記念すべきアルバムです。

 これまでのアルバムに比べて、最大の変化はジャケットです。デジパックになりました。とまず肩すかしをしておいて。このジャケットを見てください。そう笑顔なんです。これまで、ベスト・アルバムを除くと笑顔のジャケットはありませんでした。ベストでもこちらを見ていませんでしたから、これは大きな変化です。

 タイトルも「タッチ・ミー」です。これまでのアルバム・ジャケットの顔だったら、「イフ・ユー・キャン」と後に続くのではないかと深読みするところですが、この満面の笑顔ですから、素直に受け止めましょう。

 そんな彼女の心情をはっきりと示しているのは、タイトル曲ではなくて、本アルバムで最も歌謡曲テイストが濃い「キャッチ」でしょう。デビューからの心境をつづったと思われる歌詞がなかなか素敵です。♪掴めない 掴みたい♪。

 サウンド面での最大の変化は音のバランスでしょう。これまでの彼女のアルバムでは、低音部を強調した大人なサウンドが楽しめましたが、このアルバムでは高音域が強くなりました。歓迎する人も多いようですので、よかったんでしょう。私は少し残念ですが。

 楽曲の方は、今回もシングル4曲、テレビやCMで使われた曲3曲、リミックスが1曲となかなかににぎやかです。カバー曲も一曲。カーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」です。演奏までオリジナルに忠実なアレンジになっていて、なかなかいい感じです。心配していた英語もうまくなりました。

 今回の最大の冒険はタイトル曲です。歌詞の乗せ方がこれまでとは少し違います。ただ、ちょっと力が入り過ぎなんではないでしょうか。一方で、最後に「夢が咲く春」のリミックスが入っています。これをアルバムの最後に持ってくるセンスはとてもいい感じです。ご本人も単純に、「みんなにこういう『夢が咲く春』別バージョン的なものも聴いてもらいたいなと思って、入れさせて頂きました(笑)」と明るく語っています。

 今回も多様なアーティストの楽曲やアレンジとなっています。サイバーサウンドも2曲ほどやっていますが、あまり洋楽テイストはありません。それに歌謡曲的なテイストも今回は少ないですし、何といいますか、さらりとJポップです。

 そんなところが受けたのか、このアルバムは久しぶりにオリコン・チャートで1位の座を獲得しました。コンスタントに活動していましたから、特に低迷していたわけではないのですが、チャート的には久しぶりの快挙となりました。

 それに今回は10周年ということなのか、紅白歌合戦以外では初めてとなるテレビの音楽番組出演がかないました。それまでは、あまりテレビに出ない人なので、紅白などは、何かが起こるのではないかとハラハラしながら見ていたものです。大人になりましたね。

touch Me! / 倉木麻衣 (2009)