あれも聴きたいこれも聴きたい-けいおん さすがに映画を見に行く勇気はないので、劇中歌のCDを購入することとしました。そのうちWOWOWでやってくれることを期待します。

 「けいおん!」は何だか凄いことになっているようです。社会現象とまで言われています。普通に暮らしていると社会人にはなかなか気づかないことがいろいろとあるものです。

 オリジナルは恋愛も根性も魔法もなく、ただ若い子たちの日常を描いたコミックです。空気系とかいうそうです。私は「あずまんが大王」が大好きで、それこそ何十回と読んだ口なので、これもそういう系統かなと思って読んでみました。結果、これはこれで面白いです。あずまんに比べると、より女の子女の子しています。絵はちょっとぽっちゃり系ですが。味わい深い漫画です。

 主人公は桜高軽音部の女の子たち、バンド名は「放課後ティータイム」ですが、感動系の漫画ではないので、演奏風景はほとんど漫画には出てきません。練習風景もそれほどありませんが、作者が音楽好きであることはよおく分かります。

 彼女たちの音楽はオリコン・ベスト10の常連ですし、累計で100万枚を売っていますから、本職の歌手も馬鹿にはできない存在です。これは映画の劇中歌アルバムだけあって、そんな彼女たちの代表曲が収められています。ベスト・アルバムに近いと言えましょう。

 曲はいろいろありますが、基本はパンクです。リズム・ギターのあずにゃんは優等生的にギターがうまいですが、リード・ギターの平沢唯は絶対音感を持つ天才にもかかわらず、譜面も読めませんしギターの初心者です。ドラムの律ちゃんは「走りすぎる」し、個人個人は大したことないのに、みんなで演奏するとなぜか素晴らしい。その設定はパンクそのものですよね。

 素人のバンド演奏ですから、パンクが最もふさわしい、というか自然にパンクになる。パンクは実に普遍的な音楽形態だったということがよく分かります。同じく普遍的な音楽形態なのはヘビメタです。これは、このCDについてくるさわちゃん先生のバンド「デス・デビル」の「光」で聴かれます。残念ながら歯ギターはありません。

 今どきのコンピューターはなんでもできるので、油断できませんが、このCDはあえてバンドの生音にこだわった作りになっています。もちろん素人っぽいわけではなくて、端正に演奏されていますから、下手というわけではありません。そこそこいい曲がならんでいますし、100万枚を売るバンドの実力はそれなりに大したものです。演奏している面々の愛を感じます。

 ただ、ちょっと残念なのは、やっぱりバンドにはなっていないことですね。ボーカルは声優さんたちがキャラクター・ボイスで歌っているので、オリジナルなのにモノマネのような感じが出てしまいます。演奏と歌が別。デス・デビルの方は歌と演奏が別でもよいキャラ設定ですから、そっちは気になりません。

 そうは言いつつ、王道のアイドル歌謡はここにあり。結構楽しめます。一昔前のアイドルで育った私の世代にとっては、AKBよりもこういうアニメにこそ懐かしいアイドルを感じるんです。 

放課後ティータイム in Movie (2012)