あれも聴きたいこれも聴きたい-Edgar Winter 3
 あまりにもひどいアルバム・タイトルです。邦題はジャケットのイメージそのままに「謎の発光物体」となっていて許容できるんですが、原題がひどい。ひどすぎる。「エドガー・ウィンター・グループ・ウィズ・リック・デリンジャー」はあんまりです。

 これは、例えて言えば、キャンディーズのアルバムを「ランちゃんバンド・ウィズ・ミキちゃん」とするような暴挙です。スーちゃんの立場はどうなるというんでしょうか。このバンドの曲の大半を書き、見事なボーカルも披露しているダン・ハートマンの立場やいかん。

 もちろん、このバンドの大看板は生まれながらのスター、エドガー・ウィンターですし、プロデューサーでありギタリストとしてスターの輝きを放っているのはリック・デリンジャーです。しかし、ハートマンも負けてはいないはず。地味キャラの悲哀です。

 こんなことをしていてはバンドは長続きしません。案の定、この作品がこのバンドの最後の作品になりました。もっとも、彼らの友情は続くようで、バンド解散後もそれぞれのアルバムに参加したりします。レコード会社が悪い。

 長々とタイトルに文句を書きましたが、このアルバム自体は悪くありません。グループとしてもこれまでの成功に気をよくして乗っていますし、メンバー各自もそれぞれにキャリアを積んで自信が深まってきています。余裕すら感じさせる作品です。

 この作品ではリックも3曲を提供して、ボーカルもとっています。残りはダンとエドガーが作詞作曲とボーカルを分け合っています。3者バランスがとれてきました。三人それぞれの微妙に異なる個性は、エドガーとリックのソロを経て隔たりが少し大きくなってきました。

 しかし、三者三様の楽曲は粒ぞろいで、バラードからハードなロックまで取り揃えて、そしてポップに決めているというエドガー・ウィンター・グループらしい作品になっています。これまでとの違いを強いて言えば全体にファンキーの度合いが増してきたところでしょう。

 ファンキーの解釈はエドガー的には、時代も進んできて、いよいよ表舞台に出てきたAOR方面へ、ダン的にはディスコ方面へと分かれていきます。ここでは、両者の個性がうまく共存していて、重厚なファンキーが聴かれます。

 シングルカットされたのはダンとエドガーの共作「ダイアモンド・アイズ」です。後期ドゥービー・ブラザーズもかくやと思われる見事なバラードです。やはりシングル曲はダンの存在が光ります。リックのギター小僧ぶりはシングルには向かないのでしょう。

 ただ、シングルもアルバムも商業的には失敗に終わりました。全体になんだか妙に落ち着いてしまっているのが原因でしょう。前作のキラキラした溌剌さがありません。曲は悪くないんですが、何かひっかかるものがない。やはりソロ活動が良くなかったのではないでしょうか。

 私は前作をそれこそ死ぬほど聴いたんですが、このアルバムは聴いたことがあったかどうか記憶に残りません。もちろん聴いていたはずですし、聴けば「ああこれこれ」と思い出すんですが、どうにも印象が薄い。残念といえば残念。

The Edgar Winter Group with Rick Derringer (1975)