あれも聴きたいこれも聴きたい-AliceCooper02 アリス・クーパーは最初はザ・スパイダースと名乗ってシングル盤をリリースしました。まったく話題にならなかったため、ナッズと名を変えて再出発を図りますが、この名前はすでにトッド・ラングレンが使っていたため、結局アリス・クーパーに落ち着いています。

 このアルバムには「リターン・オブ・ザ・スパイダース」なる曲が収録されていて、彼らの遊び心が伺えます。まだまだ下積み状態ですけれども、自分たちの過去を大事にする姿勢はこの後も一貫していくように思います。

 彼らの2枚目のアルバムは前作と同様にフランク・ザッパのストレート・レーベルから発表されました。今回はニール・ヤングとの仕事が有名なデヴィッド・ブリッグスをプロデューサーに迎えて制作されました。ザッパ先生の影はまるで見えません。

 前作がアマチュア然とした音の作りだったのに対して、本作はちゃんとプロ仕様になっています。これを私はプロデューサーの役割が大きいものと思いました。前作がセルフ・プロデュースだったのに対し、何と言っても今回のプロデューサーはプロですから。

 しかし、前作が実はイアン・アンダーウッドのプロデュースであって、今作のプロデューサーのデヴィッドはアリス・クーパーのサウンドを「サイケデリックな糞」と毛嫌いしていて、何ら有益な助言を与えなかったと聞くと複雑な気持ちになります。

 サウンドの進歩はメンバーがスタジオに慣れてきたという点も大きいのでしょう。そこに、とにかく手堅くまとめるブリッグスの仕事師らしい腕前が重なってこうなったのだと思います。前作でのイアンの奮闘ぶりは無駄ではありませんでした。

 バンドは楽器が急にうまくなったわけではありませんが、ボーカルを含めてそれぞれの音の分離がよくなり、とても生々しくなりました。これなら、アリス・クーパーの作品だと分かります。前作から1年としては大きな進歩です。

 この頃の彼らのステージ・パフォーマンスは、ギロチンや電気椅子を使ったり、生きた大蛇を体に巻きつけて登場したりとショッキングなものになってきました。目の周りを黒く塗って、さらにそれを垂らす悪魔メイクも定着します。

 サウンド自体は、あまり楽器がうまいとは思えない不器用なハード・ロックですが、すでにかなり演劇的な展開をみせます。ボーカルの声は前作とは違って、かなり個性が出てきています。要するに後に大成功する姿の萌芽がよりはっきりとみてとれるということです。

 そういうわけで、前作に比べると、私には随分と楽しめる作品でした。心躍る展開です。イギリスでは前作とほとんど間をおかずに発売されて、にわかに彼らのビジュアルが注目されるようになったそうですけれども、そこにはこのサウンドの進歩が根底にあったのでしょう。

 ところで、この作品もザッパ先生のレーベルからなのに、全然ザッパっぽくありません。一体ザッパ先生はアリス・クーパーの何がそんなに気に入ったんでしょう。後にスーパースターになる素質を見抜いていたんだということにしておきましょう。

Updated on 2016/7/9

Easy Action / Alice Cooper (1970 Straight)