あれも聴きたいこれも聴きたい-GratefulDead14
 ファンキーなジャケットに包まれています。チョッパーに乗ったヘルス・エンジェルス、路上でタコ踊りをする男女、逮捕されている男、やせた犬。シェイクダウンとは「ゆすり、たかり、強奪」なんていう意味ですから、まさしくやばいストリートを描いています。

 グレイトフル・デッドの1年ぶりのアルバム「シェイクダウン・ストリート」は1978年の暮れに発表されました。当時はディスコの時代です。「サタデー・ナイト・フィーバー」が大ヒットしたのは1977年のことでした。ディスコが大いに盛り上がっていた時代なんです。

 意外にもデッドもその影響を受けました。ミッキー・ハートは「サタデー・ナイト・フィーバー」を見ていたく感動し、ジェリー・ガルシアにも映画を見せています。ガルシアも感動したようで、見終わった後にはみんなでホテルで踊りあかしたのだということです。

 本作品のタイトル曲はもろにディスコの影響を受けています。まさにディスコ・デッドです。デッドはこの曲が爆発的に売れると思ったようで、ラジオ・フレンドリーに編集されていますけれども、残念ながらヒットにはほど遠い結果に終わりました。

 デッド・ヘッズの皆さんにも受けは良くなかったようで、今でもその評価がついて回っています。ディスコ・ビートにふわふわギターとゆるいボーカルがのったとてもいい曲だと思うのですが、シングル・ヒットするというのはなかなか難しいものです。

 デッドはこの作品の制作途上でエジプトでライヴを行っています。欧州ツアーでストーン・ヘンジに魅せられたデッドは歴史的な遺産の前で演奏することを夢想していました。それがギザのピラミッドという絶好のロケーションを得て実現しました。

 残念ながらビル・クルーツマンがけがをして片腕が使えなかったりして、完璧なライヴとはならず、多大な費用を回収する使命を負わされていたライヴ盤の発売はなりませんでした。それではとばかり、本作品に期待がかけられました。そんな事情もありました。

 本作品のプロデューサーは、リトル・フィートのローウェル・ジョージが務めています。ジョージの役割については諸説ありますけれども、プロデューサー然とはしていなかったことでは一致しています。ジョージ色が出ているわけでも、ディスコを持ち込んだわけでもありません。

 アルバムはタイトル曲に引っ張られるように、そこはかとなくディスコの匂いがします。加えてティンバレスの活躍が目立ちます。これがデッド流ディスコなのかもしれません。短めでタイトな曲が並んでおり、デッドのアルバムの中ではやや異色です。

 ハートの代表曲ともなる「ファイヤー・オン・ザ・マウンテン」や、ガルシア=ハンターの可愛らしい「スタッガー・リー」、ボブ・ウィアによるデビュー盤の再カバー「ミングルウッド・ブルース」など佳曲揃いです。暖かい気持ちで接するとよい作品だと思います。

 なお、ボートラにはジョージがボーカルをとる「グッド・ラヴィン」、ハンザ・エル・ディーンをフィーチャーしたピラミッド・ライヴから3曲が収録されています。本編でのダナ・ゴッドショーのリード・ボーカル曲2曲を加えて、この時期のデッドの動静がよく分かります。

Shakedown Street / Grateful Dead (1978 Arista)

*2011年12月17日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Good Lovin'
02. France
03. Shakedown Street
04. Serengetti
05. Fire On The Mountain
06. I Need A Miracle
07. From The Heart Of Me
08. Stagger Lee
09. All New Minglewood Blues
10. If I Had The World To Give
(bonus)
11. Good Lovin' (studio outtake)
12. Ollin Arageed (live)
13. Fire On The Mountain (live)
14. Stagger Lee (live)
15. All New Minglewood Blues (live)

Personnel:
Jerry Garcia
Donna Godchaux
Kieth Godchaux
Mickey Hart
Robert Hunter
Billy Kreutzmann
Phil Lesh
***
Jordan Amarantha : percussion
Matthew Kelly : help
Steve Schuster : horn
for bonus
Lowell George : vocal
Hamza El Din : oud, tar, handclapping, vocal
The Nubian Youth Choir : hand clapping, tar, vocal