あれも聴きたいこれも聴きたい-PIL04 PILの3枚目はライブ・アルバムになりました。2枚しかアルバムを発表しておらず、しかも、そのスタジオ・アルバムに比較的忠実に曲を演奏するという、あまりライブにする意味がないアルバムです。ジョン・ライドン自身もこのアルバムを「買うな」とファンに向かって語っています。

 ではなぜ出したのか。長らく疑問でしたが、ライナー・ノーツに行川さんが「経済的にせっば詰まっていた」ことが発表の原因だと示唆されていまして、その疑問が氷解しました。こういうライナーはありがたいですね。

 金が必要だから、ライブを一発、というのも見上げた理由だと考えられなくもありません。この当時、私も含め、ジョン・ライドンのファンは何でも買いましたからね。10枚組じゃないだけ良心的な人だと思いましょう。

 バンドはドラマーとしてマーティン・アトキンスが加入しました。そのデビュー・ギグがこのアルバムになるという何とも無茶な展開です。しかし、このバンドにおいては、他のキャラの立ったメンバーに比べると、ドラマーの地位はかなり低いですから、あまり不具合は感じません。むしろ初回の緊張感を優先したのかもしれません。

 やっつけアルバムだからと言って、つまらないかと言えば、そんなことはありません。次のアルバムまでの間に、PILサウンドの要の一人だったベースのジャー・ウォブルが脱退してしまいますから、結果的に貴重な瞬間をとらえたアルバムになっています。私は、この後、来日した彼らのライブを見ていますが、このセットとは似ても似つかないものでした。

 このアルバムの殺伐とした雰囲気は何物にも代えがたい魅力です。寒いんです。コンクリートの打ち放しが寒々としている廃墟のようです。廃墟フェチなる人々がいらっしゃるようですが、そんな人たちにお勧めのアルバムになります。

 さらにパンクの帝王、ジョン・ライドンのファンにはこたえられない台詞が入っています。「シャアラップ」です。Mの私には堪りません。「豚野郎」ともおっしゃいます。

 そういうわけで結構よく聴いたアルバムです。ののしられたい方にもお勧めですね。

Paris au Printemps / Image Publique S.A. (1980)