あれも聴きたいこれも聴きたい-UeharaShoei 何はともあれ、ビデオをご覧ください。心躍る実に楽しい演奏です。スーパーじいさんですね。

 全く聴いたことがありませんでしたが、何となく、上原昌栄、沖縄JAZZ協会会長、75歳にして初のリーダー作、という文句と、ジャケットに写るおじいさんの笑顔に惹かれてついつい買ってしまいました。日経新聞にも登場してましたしね。

 普通のジャズのアルバムなので、それほど大きな期待もしていなかったのですが、鳴り始めた瞬間に驚きました。何なんでしょう、この軽やかさ、しなやかさは。生き生きとした音がぴちぴち跳ねていて、とても素晴らしいと思います。

 上原昌栄さんは、高校時代から沖縄の米軍クラブに出演します。最初はカカシという人数合わせのためにステージで楽器をもって立っているだけの役立ったそうですが、何とそれでも普通のサラリーマンの月収の倍は軽く稼いでいたということです。

 やがてドラムスの才能が認められ、以来、沖縄で活動を続けていらっしゃいます。東京でも十分にやっていける実力でしたが、あえて沖縄を選んだということで、そのまま75歳の今も現役です。お父さんが三線をやっていたということですし、琉球古典音楽も勉強していらっしゃいます。

 このアルバムに収録された曲の中にも琉球音階を使ったものがありますし、ボートラでは沖縄民謡の「十九の春」を三線を弾きながら歌も披露されています。このボートラでは一緒に演奏するのは若い女性ばかりで、実に気持よさそうに歌っていらっしゃいます。バックを務めるストリングスのアレンジは絶妙ですね。

 ビッグ・コンボが2曲、カルテットが6曲にボートラが1曲。タイトル曲はビッグ・コンボとカルテットでそれぞれ演奏されています。エリントンの「A列車で行こう」、灰田勝彦の「鈴懸の径」のジャズ・バージョン、オリジナルでは盟友とされる故屋良文雄をしのぶ曲など多彩な楽曲がならんでいて片時も飽きさせません。

 カルテットはクラリネットがフロントに立っていることもあって、懐かしい感じの音に仕上がっていますが、強靭なドラムは強烈に現在進行形です。75歳ですよ。凄いじいさんがいるもんです。

 気合いの入らない馴れ合い風のジャズは大嫌いなのですが、これはその対極にあって、ジャズの底力を感じさせます。あのブエナ・ヴィスタ・ソーシャル・クラブを思い出しました。

 いやあ、ジャズって本当にいいもんですね。水野晴夫調になってきました。

Uchina Beat! / Shoei Uehara (2011)