あれも聴きたいこれも聴きたい-Police border=
 ポリスは来日した時に「夜のヒットスタジオ」に出演して、「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ」を演奏しました。司会の吉村真理さんに「「演奏がどの程度か、とっても聴きもの」などと言われている中で堂々と口パクを披露してくれました。やんちゃなトリオでした。

 私はどうにも後のスティングが苦手です。ロック系の人が集まるチャリティー・イベントには皆勤賞なところといい、世間が大物と認識する前に芸能界が大物認定してしまったような居心地悪さを感じてしまいます。立派な人には違いないのですが。

 このアルバムはロック界最強のトリオと言われるポリスの三作目。彼らのオリジナル・アルバムは全部で5作ありますが、これが一番虐げられたアルバムです。中だるみでしょうか。超多忙の中で十分な時間をかけられなかったとか何とか、メンバーの評判も散々です。

 しかし、そのわりにはチャート・アクションはよくて、英国で1位、米国で5位、シングルカットされた「高校教師」と「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ」もトップ10ヒットとなかなかのものです。もっとも、メンバーの不満は後々まで響いて、シングル2曲は後にレコーディングし直しています。

 そういうアルバムに限ってコアなファンがいたりするものですが、残念ながら私はその一人ではありませんし、ここでこのアルバムを大いに持ち上げようという気もさらさらありません。ポリスのアルバムの水準からすれば、残念ながら一段落ちることは認めざるを得ません。

 しかし、彼らの名誉のために申し上げると、一般的な水準にてらせば立派なアルバムであることは間違いありません。「高校教師」と「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ」の二大ヒット曲などはさすがに素晴らしい出来です。後に再録音されますが。

 前作との違いと言えば、まず、アンディー・サマーズのギター・ソロが目立ちます。それも彼独特のチキチキなる音色ではなくて、流れるようなソロ、リズム・ギターではなくリード・ギター然としたソロがあるんです。

 極めつけはまたまたグラミー賞を獲得したインストゥルメンタル曲「ビハインド・マイ・キャメル」です。これはアンディーが以前係わっていたプログレの雄ソフト・マシーンの曲だと言われてもおかしくない。素晴らしい曲ですが、あまりポリス的ではありません。

 スティングはこの曲が大嫌いで、演奏を拒否しています。そこで、ベースもアンディが弾くことになりました。スティングの気持ちも良く分かる楽曲です。繰り返しになりますが、私はこの曲は大好きです。さすがはアンディーです。

 スチュワート・コープランドのメロディーを感じると言われるドラミングも、前作までと比べるとバス・ドラムの音が目立つようになりました。ちょっと丸くなった気配が漂っています。フォロワーをたくさん生んだ彼のドラムはさらに進化を遂げました。

 詩作の面では、ソ連のアフガン侵攻や世界の貧困問題など社会派となって来ています。大阪人にはたまらない変なタイトルを別にすれば、ポリスはスーパースターとなる準備を終えました。ちょっと蛹状態が入ったアルバムではないでしょうか。

(2017/1/12 全面改訂)

Zenyatta Mondatta / The Police (1980 A&M)