あれも聴きたいこれも聴きたい-Omokage ラッキーホールってご存知ですか?時々娘も覗きに来るブログですから、具体的に説明するのもはばかられます。というわけで内容は各自検索して頂くことにして、これは80年頃の新宿的なるものの典型の一つだということを言っておきたいと思います。懐かしいエロ、なんでそこまでやるかなあという恥ずかしいエロの世界です。最後の歌謡曲の世界とも言えるかもしれません。

 面影ラッキーホールはそんな空気を色濃くまとったバンドです。本人たちは「もののあはれ」と言っているようですが、本居宣長先生の使い方とは随分違うものだと思います。

 私は音楽を聴く時に歌詞の意味をとることは基本的にしないんですが、この作品はそうはいきませんでした。彼らが歌うのは物語です。心理描写よりも情景描写を中心とする物語を語っているわけですから、新内語りとか義太夫、琵琶法師の類なんでしょうか、最初から物語を追ってしまいます。

 歌詞担当はボーカルのaCKy氏、彼がつむぐ物語は古き良き歌謡曲の世界、自らは日本人の多数派であるヤンキー世界を観察して描きだした物語だということです。イメージとしては週刊誌にある男と女の犯罪を突き詰めた特集記事ですかね。本作品の楽曲群は、ファースト・アルバムは大手レコード会社から「歌詞が下品」という理由で発売を拒否された、という彼の面目躍如たるものがあります。

 ただ、素晴らしいのですが、私など根が真面目なものですから、「ゴムまり」を聴いて、心に傷を受けました。悔しいので、ビデオをご紹介しておきます。PVを見るのは怖かったのですが、幸い「ゴムまり」は登場しませんでした。ほっとしました。

 サウンドは歌謡ファンクです。素晴らしい演奏です。フォーマットは歌謡曲なんですが、見事なファンクになっています。ドラムとベースは素敵なのですが、それを強調しすぎるのではなくて、ブラス・セクションがリズムの中心になっているようなそんなファンクぶり。徹底的に練り上げられている様子で、聴けば聴くほど味があります。いいですね。

 おっさんのおっさんによるおっさんのためのバンドじゃないですかね。それもスナックで飲んでいるようなおっさん。そういう世界にリアルにデビューはできないけれども、そういう友達もいて、気持は分かる私のようなおっさんにも適用可能です。カラオケでも歌えますし。

 そういう確固たる世界観を提示すれば、若い人もついて来るでしょうね。知らないうちに日本の音楽シーンのすそ野は確実に広がっていたようです。自らの不明を恥じるのみです。

 素晴らしいバンドです。ぜひ友達にも勧めてください。

Typical Affair / 面影ラッキーホール (2011)