あれも聴きたいこれも聴きたい-KatoKuniko 結論から言おうか...グゥレイト!と取り乱して思わず永ちゃん風になってしまいました。このアルバムは素晴らしいアルバムだと思います。

 細かく刻んだ音による短いフレーズを少しづつ変化させながら重ねて繰り返していく音楽、というのがミニマル・ミュージックの簡単な説明ということになるでしょうか。ビジュアルで言えば、ウィンドウズ95時代のディスクのデフラグ画面を思い出して頂ければよいのではないかと思います。断片化されたハード・ディスクが整理されていく様は見飽きないものでした。共感を求めたいところですがいかがでしょう。

 ということでミニマル・ミュージックを説明したことにしましょう。私はミニマル三人衆の一人、スティーブ・ライヒは昔から結構好きで少し聴いていました。ジャズの名門ECMからレコードが出ていたこともあって、ロックやジャズの世界からも比較的親しくされていたと思います。

 ロンドンにいる頃にはコンサートも見に行きました。当日は高熱に下痢という最悪のコンディションだったので、半分くらいしか聴けなかったことを覚えています。その時の演目の一つがドラムを使った曲で、円陣を組んだ4人のドラマーが小太鼓で同じフレーズを少しづつずらしながら叩いていく曲でした。面白かったですが、お腹に響きました。

 この作品はパーカッションによるライヒ作品のアレンジということで、お腹に響く音を何となく想像していましたが、全く違いました。この作品は、加藤訓子さんが、スティール・パン、マリンバ、ヴィブラフォンを使って、一人で多重録音して作り上げられた作品です。ライヒも絶賛しています。

 ライヒの作品はアフリカの民族音楽に似ているところがあるにもかかわらず、さすがに現代音楽に分類されるだけにどことなく冷たい手触りがあるような気がします。しかし、この作品では、特にスティール・パンがそうなんですが、全体に柔らかな音でほっこりとした気分にさせてくれます。

 とはいえ、デフラグつながりではないですが、頭の中が次第に整理されて、明晰になって行く様を体験できるところは失われていません。アートでシリアスな魅力はそのままに、人生それだけじゃないぞと柔らかく包んでくれる包容力があるということでしょう。

 こういうの好きなんですよね。今後、折に触れて死ぬまで聴いているだろうなと予感させる音楽です。この感動をいかに伝えるベけんや。

 ジャケットがいいですね。加藤さんの立ち姿は、20世紀を代表するジャケットとして名高いクラッシュのロンドン・コーリングを思わせます。あまりの格好よさにしびれました。

 一つ訂正です。昨日、アマもプロも録音に差がないようなことを書いてしまいましたが、お詫びの上訂正します。この作品の録音は無茶苦茶凄いです。プロが本気を出すと全然違いました。

Kuniko Plays Reich / Kato Kuniko (2011)