あれも聴きたいこれも聴きたい-Cure 素敵なジャケットじゃああありませんか。思わずチャーリー浜が入ってしまいました。わざとぼやかした淡い色調の風景写真というのは、80年前後の心象風景をよく表しています。一言で言えば軟弱な美意識です。私たちは若い頃こういう文化で育ったんですね。

 キュアーは後に世界クラスのバンドになりますが、この2枚目のアルバムの頃はまだ駆け出しの新人バンドに過ぎません。予算の制約の中で、制作は思い通りには進まなかったようです。しかし、見事英国でトップ20入りを果たし、後々まで高い評価を獲得することになりました。

 全体を通して、同じビートを叩いているのではないかと思わせるドラムを背骨にして、アンビエントでミニマルなキーボード、ギター、ボーカルがかぶさります。暗いといえば暗い。これが後にゴシックと呼ばれて、一大ジャンルを築くことになる音楽です。

 PVを見て頂くと、怒りだす人がいるかもしれません。気合い入れろ!!という声があちこちから聴こえてきそうです。当時はだらしないのがかっこいいと思われていたんですよ。今でもそうかもしれませんが、ヒップホップ系の力強さがない分、昔の方が軟弱でしょう。

 それにこの音が素晴らしいですね。なめとんのかというくらいのアマチュア作り。デモ・テープのようです。今なら気の利いた高校生バンドでももう少しゴージャスなつくりにしそうです。DIY的な部分が残っているところもポスト・パンクならではということでしょうか。

 ゆっくり聴いていると、お腹の底、胃の下ですから十二指腸あたりからじわりじわりとキュアーな空気が立ち上ってきます。後のポップなキュアーやゴシック全開のキュアーもいいですが、初期の絶妙な空気感も捨てがたいです。

Seventeen Seconds / The Cure (1980)