今でも女優として活躍する小川知子のデビュー・アルバムです。このアルバムが発売された時、彼女は19歳です。ちなみに私は8歳、誤解なきように申し上げておきますが、彼女は私より上のいわゆる団塊の世代のアイドルです。

 当時の若い女性歌謡歌手のアルバムによくあるように、ナレーション入りのアルバムです。そのナレーションの中で、彼女は♪ゴーゴーも凄く好き、サイケデリックな感じも好き♪と言っています。当時の世相を反映してサイケデリックなんです。

 ブックレットに小川知子画伯による「人間のかっこうをした花と舌を出す太陽」と題されたサイケデリック全開の絵が印刷されています。絵の真ん中には舌を出したペコちゃんスタイルの小川知子の顔。遊び心満載と言えるでしょう。

 音の方はサイケデリックとは関係ないと思われるかもしれませんが、どうしてどうして。アルバムの後半はまさかまさかの洋楽カバー。それもサイケデリック・ロックの定番中の定番、ジェファーソン・エアプレインの「あなただけを」が〆の一曲です。

 再びナレーションに戻ると、仕事から帰ると明りを消してロウソクをたて、外国のレコードばかり聴いている知子さんです。♪いつかこんな曲歌ってみたいなあって♪♪私の好きな歌ばかり集めてみたの♪。ということで、洋楽メドレーが続きます。

 最初は1966年にビートルズより売れていたボビー・ヘブの「サニー」、マリサ・サンニアの「カーザ・ビアンカ」、ボサノバのスタンダード「サマー・サンバ」、そして「あなただけを」と当時の洋楽事情を反映した選曲ではあります。

 この部分を除きますと、とてもオーソドックスな60年代歌謡曲です。今なら演歌に分類されると思います。妙にエロエロな歌詞を19歳の小川知子が♪吐息タッチ♪の声で歌います。団塊の世代はくらくら来たんでしょうね。私もこども心に素敵だなあと思っていました。

 ともかく落差が大きいわけです。それで、どっちがどうかと申しますと、明らかに洋楽カバーの方が生き生きと歌っています。それに何よりもカバーの方では「東芝レコーディング・オーケストラ」の演奏がとても楽しげです。それぞれの楽器が溌剌としていて耳を奪われます。

 特に「あなただけを」の歌唱はいいですねえ。デュエットの男声ボーカルが今一つですが。やはりまだ10代でこの頃の歌謡曲を歌うとなるとどうしても歌わされている感が強いことでしょ。そこにご褒美として好きな歌を歌える。それは楽しいでしょう。

 好きな言葉は♪ゴーイング・マイ・ウェー♪の小川知子のたっての希望か、オケの面々への懐柔策か、制作サイドの遊び心か、本当にご褒美なのか真相は分かりませんが、当時のおおらかな空気が感じられて面白いです。

 この当時の歌謡曲の中には結構いい曲が多くて、私のソウルの中に刻み込まれています。彼女の場合は、セカンド・アルバムの「初恋のひと」がそれなんですが、この紙ジャケ復刻盤にはボーナス・トラックとして収められています。さすがです。

Rewritten on 2018/3/31

ゆうべの秘密 / 小川知子 (1968 Express)

me width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/0sJRE24X564" frameborder="0" allow="autoplay; encrypted-media" allowfullscreen>