あれも聴きたいこれも聴きたい-Zappa03
 マザーズ・オブ・インヴェンションによる「ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー」はマザーズの3作目、フランク・ザッパ先生の公式リリース第4番です。発表当時は「マザーズ・オブ・インヴェンションのおかしな世界」と邦題が付けられていました。

 前作までとは聴いただけでかなり違うサウンドになっています。「ここで聴かれるすべての音楽はフランク・ザッパによって作曲され、アレンジされ、そして科学的にばらばらにされている」とクレジットには書かれています。ミューティレートされていると。

 また、どのサウンドも「電気的に生み出されたものではなく、普通の楽器の音を電気的に変換したのだ」とも書かれています。ボーカルから何から電気的な処理がされていて、とてもサイバーな感じの仕上がりになっています。そこが前作までと大きく違う点です。

 そのサウンドは、とても電子的ではありますが、ICチップの世界ではなくて、トランジスターの世界です。昔は電子機器を動かすにも多大な電力を必要としました。そんなアナログな香りの高いデジタル風景が広がっています。まさに「おかしな世界」です。

 ただし、ザッパ先生のあずかり知らぬところでレコード会社がその内容にびびった結果、歌詞に検閲を入れて一部を削除したばかりか、全体のイコライジングを変えて聴きとれないように細工したという話もあり、複雑な気持ちになってしまいます。

 その検閲はジャケットにも及び、ビートルズの「サージェント・ペパー」のパロディーとなっているアートワークは黒い目線を入れられた挙句に差し替えられてしまいました。ザッパ先生のレコード会社との戦いはこの頃から熾烈をきわめていたのでした。

 さらに当初CD化された際にはリズム・セクションを収録したテープが見当たらず、再発当時のザッパ・バンドの二人、チャド・ワッカーマンとアーサー・バロウが演奏していました。よりサイバー感が強かったですが、このCDでは無事に発見されたオリジナルが使われています。

 収録時間は短いわりに19曲も収録されています。ただし、前作に引き続き曲間に切れ目はありませんから、それぞれが独立した曲になっているというよりも、全体として1曲、組曲だと扱ってよいでしょう。最後の曲「クロム・メッキのメガホン」のみ独立性が高いですが。

 この時のマザーズのメンバーはザッパ先生を含めて10人、いわゆる10人マザーズです。本作品の中心になっているのはその中でもイアン・アンダーウッドとロイ・エストラーダだといわれています。ザッパ先生の右腕として活躍するアンダーウッドのお目見えです。

 なお、この時にスタジオに遊びに来たエリック・クラプトンの話し声が入っていますし、ジミ・ヘンドリックスはジャケットのフォト・セッションに参加しています。ポール・マッカートニーにはジャケットのことを相談されて弁護士に任せてしまうという残念なエピソードが残されています。

 本作品はキャッチーでポップな曲が多いのですが、ブックレットには、本作品を聴くに際して、カフカの「流刑地にて」を読んでおくこと、第二次世界大戦中にカリフォルニアに設けられた強制収容所を思うこと、と指示がなされており、シリアスな作品でもあります。

We're Only In It For The Money / The Mothers (1968 Verve) #004

*2011年6月10日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Are You Hung Up?
02. Who Needs The Peace Corps?
03. Concentration Moon
04. Mom & Dad
05. Telephone Conversation
06. Bow Tie Daddy
07. Harry, You're A Beast
08. What's The Ugliest Part Of Your Body
09. Absolutely Free
10. Flower Punk
11. Hot Poop
12. Nasal Retentive Calliope Music
13. Let's Make The Water Turn Black
14. The Idiot Bastard Son
15. Lonely Little Girl
16. Take Your Clothes Off When You Dance
17. What's The Ugliest Part Of Your Body? (repreise)
18. Mother People
19. The Chrome Plated Megaphone Of Destiny

Personnel:
Frank Zappa : Guitar, Piano, Lead Vocals, Weirdness & Editing
Billy Mundi : Drums, Vocal, Yak & Black Lace Underwear
Bunk Gardner : All Woodwinds, Mumbled Weirdness
Roy Estrada : Electric Bass, Vocals, Asthma
Don Preston : Retired
Jimmy Carl Black : Indian of the Group, Drums, Trumpet, Vocals
Ian Underwood : Piano, Woodwinds, Wholesome
Euclid James “Motorhead” Sherwood : Visible on back cover, road manager, soprano & baritone saxophone, all purpose weirdness & TEEN APPEAL
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Suzy Creamcheese : Telephone
Dick Barber : SNORKS
Gary Kellgren : engineer for two months of basic sessions at MAYFAIR STUDIOS is the one doing all the creepy whispering
Dick Kunc : record and remix engineer for the final month of recording at APOSTOLIC STUDIOS is the one responsible for the cheerful Interruptions
Eric Clapton : (noted philosopher and guitarist with THE CREAM) has graciously consented to speak to you in several critical area
Spider : (from a group that hasn't destroyed your minds yet) is the one who wants you to turn your radio around