あれも聴きたいこれも聴きたい-Bjork6
 ビョークの作品はパッケージにも凝りに凝っています。おかげで、これはまた困ったジャケットです。観音開きをビョークのシールでとめた仕様です。ファンとしては何度も剥がしたりできない。結局、別にCDを保管しています。困った人です。かっこいいジャケットですが。

 ブックレットの写真がこれまた考えもつかない内容でとてもカッコいいです。ジャワ島のお面のような色使いで決めたビョークが炎でVOLTAと書いている姿の連作写真。常に意表をつく人ですね。ビジュアルは本当に素晴らしい。

 さらに、このヴォルタのツアーが素晴らしい。大きな旗を持った女性陣とともに歌い踊る姿はこれまた圧巻、圧倒されます。ビョークはアルバムの発表も、ツアーの実施もすべてが常にイベントです。トータルな内容が凄い。

 このアルバムはティンバランドが協力しているので、ポップだとの前評判が高かったようです。これまでで一番商業的だと噂されていました。ビョークは「いつも最新アルバムが一番商業的だと宣伝されてきたのよ」と意に介していない様子ですが。

 今作では中国の琵琶やアフリカの楽器などが使われているところ、それに英国人のトランスジェンダー歌手アントニーのデュエットがあるところ、などが目につく新しい試みです。曲の作り方も変わったようですが、それは結果からみても分かりません。

 これまでのアルバムではまずビョークが曲を書いて、一人で何か月も練り上げ、それを共同プロデューサーのマーク・ベルに送って彼が少し加えるという感じだったそうですが、今回は先にマークが曲を書いたり、歌だけ作ってそこにマークがビートを加えたり。

 結局、どの曲も隅々まで計算しつくされ、練り上げられているわけで、結果を見ると分からないわけです。全体にゆったりとした佇まいが感じられるところが違いと言えば言えるのかもしれません。もちろん、ボーカルも力強くて、いつものビョークに違いありません。

 ただし、今作は前作よりも攻撃的になっていて、「ディクレアー・インディペンデンス」や「アース・イントルーダーズ」なんていう直截なメッセージをシャウトしています。前者ではコンサートでチベットやコソボの名前を連呼して物議を醸したりしています。

 してみると、今回はそういう気分で作ったということでしょう。「冒険をする時期が来たのだと思う」と彼女ははっきり言っています。タイトルのヴォルタも電池を発明したヴォルタにちなんでいて、エネルギーの詰まった言葉だと選んだのだそうですし。

 前作の911に相当するのはインドネシアの津波です。アーティストは凡人よりも衝撃を受ける度合いが強いんでしょう。ビョークは被災地を訪れて、衝撃を受けた後に本作のレコーディングを開始しています。

 聴きやすいと言えば聴きやすいのか、本作はオリコンで12位と日本でも売れました。ただ、もちろん標準以上の素晴らしいアルバムですけれども、ビョークへの期待は無茶苦茶大きいので、もう少し驚きたかったというのが正直な感想です。

Rewritten on 2018/2/22

Volta / Björk (2007 One Little Indian)