あれも聴きたいこれも聴きたい-Bangles
 一見、全くジャンルが違うように思えるバングルズとランナウェイズですけれども、ロスのガールズ・バンドという共通項だけではなく、バングルズのベーシスト、マイケル・スティールはランナウェイズの初期メンバーだったというつながりがあります。

 バングルズの活躍は1980年代後半です。ロスのガールズ・バンドと言えば、バングルズの前にゴーゴーズがいます。80年代前半に女性だけのバンドとしては初めて全米ナンバー・ワン・ヒットを飛ばしたあのゴーゴーズです。そして、次に来るのがこのバングルズ。

 ランナウェイズの頃にあった決意とか決心とかそういう悲愴なものはありません。女性にも大きく道が開かれたということでしょう。振り返ってみればランナウェイズが滑稽にも見えてしまいます。時代が変わるとはそういうことなんでしょう。

 さて、このバングルズ、4人のメンバー全員が曲も書けばリード・ボーカルもとるというスーパーなグループでした。イーグルスかビートルズかっていう感じです。ヴィジュアルも女性らしいゴージャスさで素敵です。田舎くさかったゴーゴーズとは大違いです。

 曲調はもろに80年代の典型的なポップなロックです。ギターの音があくまでクリアですし、ドラムスの処理の仕方など、とても懐かしいです。4人のボーカルがそれぞれ個性がありながらも、まとめてバングルズというところでしょうか。曲調もバングルズとしての個性があります。

 しかし、彼女たちの全盛期は長くはありませんでした。前作の「シルバー・スクリーンの妖精」とこの作品の頃が全盛期となります。前作からはプリンス提供の「マニック・マンデー」と「エジプシャン」の大ヒットを飛ばしました。

 今作からは、「恋の手ほどきIN YOUR ROOM」と英米で1位となった「胸いっぱいの愛」の大ヒットが生まれました。私は「胸いっぱいの愛」が好きなのでこちらのアルバムを買いました。しかし、改めてアルバムを通して聴いてみると、明らかに異質な曲です。

 バンドらしくなく、ギターのスザンナ・ホフスの実質ソロ作品です。以前からスザンナをフロントに押したてようとするレコード会社の思惑がバンド内に不協和音をもたらしていました。それがこの曲で決定的になったようです。そうして、バンドは活動を休止することになります。

 こうなると全然ランナウェイズと違うようでいて、結局は同じ穴の狢のようでもあります。バングルズは、ランナウェイズのような凸凹した構成ではなくて、全員がゴージャスで魅力的な女性ばかりですから、余計に難しかったのかもしれません。

 そんなことを思うと複雑ではありますが、バングルズのこのアルバムは素晴らしい出来栄えです。「胸いっぱいの愛」は確かに名曲ですけれども、マイケルやヴィッキー、デビーの歌う歌の方によりバングルズらしさを感じることができます。そしてそれがいい。

 4人の緊張関係がいい意味で作用していて、捨て曲なし。「いつでも Be With You」とか「サムシング」とかキュートな歌ばかりです。80年代に特有のポップス魂がここにはあります。バングルズは永遠のポップ・アイコンです。

Last Edit : 2016/1/23

Everything / Bangles (1988 Columbia)

こちらが問題の「胸いっぱいの愛」。


聴き比べると一目瞭然。こちらが「いつでも Be With You」