あれも聴きたいこれも聴きたい-JoanJett
 ランナウェイズ解散後、1980年にジョーン・ジェットは初のソロ・アルバムを制作します。しかし、23ものレコード会社にことごとく断られ、やむなく自主制作で発表しました。これが自主制作としては記録的な大ヒットを記録することになりました。

 その実績をもって、ジョーンは晴れてレコード会社と契約することができました。今度は良いマネージャーに恵まれたようです。ケニー・ラグーナという人で、1960年代からバブルガム・ポップのグループで活躍した業界のベテランということです。

 ジョーンは次いで自分のバンド、ブラックハーツを結成し、満を持して発表したのが、この作品です。タイトル・トラックは7週間もの間、全米1位を続けました。アルバムは1位にこそなりませんでしたが、全世界で1000万枚を超す売り上げを誇るメガヒットとなっています。

 タイトル・トラックは、彼女のオリジナルではありませんが、ジョーンの代表曲としてばかりではなく、ロックン・ロール・アンセムとして有名になりました。全米1位となった最後のシンプルなロック曲とも言われます。

 この曲はジョーンがランナウェイズにいる頃に初めて聴いたそうで、ランナウェイズでも演奏しようとメンバーに持ちかけました。しかし、リタ・フォードを始めとするメンバーはこれに反対します。その判断は間違いではないでしょう。ランナウェイズには合わないです。

 ブラックハーツにこそ映えます。そのビデオ・クリップも格好いいです。結果的に大ヒットとなりましたが、当時の音楽シーンでこんな歌がこれほど売れると思った人はほとんどいなかったでしょう。このスタイルでは、レコード会社が断るのも無理はありません。

 ジョーンに言わせれば、自分のやりたい音楽をやりたいようにやったというだけなのでしょうが、当時はこんなシンプルなロックは時代遅れとされていました。本人は本当に不器用なんでしょう。売れるとかそういうことを考えずに、やりたいことをやる。

 映画「ランナウェイズ」の中で、ジョーンは「ロックがなければ死んでいたか刑務所に入っていた」と語っています。幸せなロック馬鹿です。歳をとってもロックン・ロールしか聴かないという人は本当に音楽を愛しているのかもしれません。うらやましいです。

 このアルバムからは他にもカバー曲「クリムゾン&クローバー」がベスト10ヒットとなりました。他にはジョーンのオリジナルも入っていて、どれもこれもシンプルでどすの利いたギターを全面にフィーチャーした曲ばかりです。ジョーンのざらついたボーカルも素敵です。

 映画の中で独白として使われていた「ラヴ・イズ・ペイン」はランナウェイズへのオマージュです。かくも激しい青春を共に過ごした仲間への愛憎を見事に歌い上げた傑作だと思います。映画になるだけのことはあります。

 このアルバムの大成功がなければランナウェイズ伝説はこれほど大きくならなかったでしょう。他にもリタ・フォードのソロでの成功がありましたが、やはりランナウェイズはジョーンのグループですから、これほどのインパクトはありません。ランナウェイズは偉大です。

Last Edit : 2016/1/23

I Love Rock N' Roll / Joan Jett & The Blackhearts (1981 Blackhearts)