あれも聴きたいこれも聴きたい-LouReed15
 前作から1年後に発表されたルー・リードのアルバム「ニュー・センセーションズ」です。このアルバムはレコード会社がプロモーションに力を入れており、ビデオ・クリップも制作されました。そのせいか、私も久しぶりに発売直後に入手したものです。

 紙ジャケット再発にあたって封入されたライナーノーツで、和久井光司氏は本作品を黒人音楽の要素を前面に押し出した重要なアルバムだと位置づけています。他にもそのような作品がありますけれども、和久井氏のとにかく褒めなければいけないという気持ちが伝わります。

 ライナーノーツを書くという仕事は大変なことです。とにかく良いところを見つけなければいけません。それでもなかなか原稿用紙が埋まらない時にはディスコグラフィーをおさらいするという荒業も必要です。今回はなかなか重宝するディスコグラフィーが掲載されました。

 閑話休題。私はこのアルバムはルー・リードが「ギターを弾いてみました」というアルバムではないかと思います。これまではギタリストとしてのルー・リードが前面に出てくるアルバムは意外にありませんでした。バンドに必ずギタリストがいましたし。

 本作品には前作まで粋なギターを鳴らしていたロバート・クインがおらず、ほぼ全面的にルーが一人でギターを弾いています。なんでもルーとクインは仲たがいをしたようです。それがきっかけとなって、いっちょやってみるか、と出来たアルバムが本作品ではないでしょうか。

 ルー・リードのギターは生で聴くととてもパワフルです。ロンドンのウェンブリー・アリーナで行われたヴェルヴェッツの再結成コンサートでは、ルーのギターがあまりに大きな音で響くため、陰影に富んだヴェルヴェッツの魅力が損なわれてしまったほどです。

 ところが、ライブ盤を聴くとさほど大きくはありませんし、スタジオ盤ではなおのこと轟音からは程遠い。むしろ、ギターをこちょこちょと触っているような、まるでやさしくギターを愛撫しているようなサウンドが特徴的です。私はこれを曖昧ギターと呼んでいますがどうでしょう。

 本作品でも特にタイトル曲などはその曖昧ギターの魅力がさく裂しています。見方によっては凡庸ともいえるギター演奏ですけれども、渋いルーの歌声のお供としてはこれ以上ないサウンドです。弾き語りっぽいイメージで、米国のカレッジ・サーキットのバンドのようです。

 しかし、本作品では、ブレッカー兄弟のホーンであるとか、当時売れっ子だったシャンカルのバイオリンであるとか、いつになく多彩なサウンドが聴こえてきます。楽曲もかなりポップよりで、時にはカリプソ調まで出てきます。リズムもシンプルながら強く主張してきます。

 その多彩さと基本的に弾き語り的なパーソナルな感じが同居しているところがこのアルバムの魅力です。これを一般にB級作品の魅力というのではないでしょうか。そこが何とも耳に残るわけで、なんだかなあと思いながらも本作品を繰返し繰り返し聴いたものです。

 ところでジャケットが話題になりました。ジョイ・スティックを握るルーの姿には何か主張がありそうです。しかし、座り方がなっていません。実はあまりゲームをやったことがないとみました。当時はまだファミコン革命前夜、ゲームはそこまで一般的ではありませんでした。

New Sensation / Lou Reed (1984 RCA)

*2011年2月8日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. I Love You, Suzanne
02. Endlessly Jealous
03. My Red Joystick
04. Turn To Me
05. New Sensations
06. Doin' The Things That We Want To
07. What Becomes A Legend Most
08. Fly Into The Sun
09. My Friend George
10. High In The City
11. The Great Defender (Down At The Arcade)

Personnel:
Lou Reed : guitar, vocals
***
Fernando Saunders : bass, guitar, backing vocal
Fred Maher : drums
Peter Wood : piano, synthesizers, accordion
Lakshminarayana Shankar : violin
Michael Brecker : tenor sax
Randy Brecker : trumpet
Jon Faddis : trumpet
Tom Malone -:trombone, horn arrangement
Jocelyn Brown, Rory Dodd, Connie Harvey, Eric Troyer : backing vocals