あれも聴きたいこれも聴きたい-LouReed06
 ルー・リードは1975年7月に初来日公演を行っています。このアルバムの頃とはメンバーも違っていますが、アルバムの発売時期はちょうど来日公演の直前でしたから、ひょっとすると来日記念盤的な扱いをされていたのかもしれません。

 この初来日時のインタビュー記事がとても印象的でした。私のルー・リード像はそこで作られたと言っても過言ではありません。うかつにも私は途轍もなくカッコよく思ってしまったんです。背徳の人ルー・リード、異端の人ルー・リード。それはこんな調子でした。

 「あなたはニューヨークに住んでいるのですか?」「あなたがそれを『住んでいる』と言うならば、私はかつてニュー・ヨークに住んでいました。」「それでは、今はどこに住んでいるのですか?」「私は今ここに住んでいます」。インタビュアーも困ったことでしょう。

 「私はギターが大好きです。ただし、私のギターには弦が張ってありません。先日、素晴らしいギターを買いました。もちろん弦なしですが。」とも発言していたと記憶しています。インタビュー途中で突然黙り込んでしまったりすることも普通にあったと書いてありました。

 神聖困ったチャンです。これがこのアルバム発売の頃の彼のキャラクターです。裏ジャケットの美川憲一のような写真をみると理解が進むのではないでしょうか。彼はこの頃、レイチェルという美青年と一緒に住んでいました。ゲイであると広言していたわけです。

 背筋が凍るほどカッコよいと思ってしまいました。「馬鹿みたい」という反応を示すこともできたはずですけれども。この頃のルー・リードはどうやら精神的にはかなり不安定だったようです。メディアに対する姿勢は斜に構えたものでした。

 次の来日時のインタビューでは、村上龍と意気投合して普通に対談していました。「都会で生き抜くにはスピードが必要だ」とか、「言い逃れるために親が死んだとみえみえの嘘をついたとしても、それに同情してくれないような奴は友ではない」とか、そんな話をしていました。

 もう何十年も前のことをこうして鮮明に覚えているのですから、当時の私のルーへの入れ込みようが分かってもらえるというものです。後に彼がグラミー賞のステージで演奏する姿を見た時に「青春を返せ」と思った私を誰が責められましょうか。

 前置きばかりになりましたが、この作品は、「ロックン・ロール・アニマル」と同じステージのライブ音源をレコード会社が勝手に編集して発売したものです。それでも結構売れたようです。前作がヴェルヴェッツ時代の曲が過半だったのに対して、こちらはソロ曲中心です。

 「トランスフォーマー」から「ワイルドサイドを歩け」を含めて3曲、「ベルリン」から2曲、ヴェルヴェッツ時代の曲が1曲という構成です。CD化に際してボーナスの収録はありませんでした。前作には入れてこれにはない。やっぱり本人に呪われたアルバムは不幸です。

 「悲しみの歌」などはギターの見せ場が多い曲ですが、心なしか元気がありません。やはり元々選ばれなかった演奏ばかりだというところにどうしても残念感が漂います。もちろん「ロックン・ロール・アニマル」と同じ日のステージなのでそれはそれでかっこいいのですが。

Lou Reed Live / Lou Reed (1975 RCA)

*2011年1月15日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Vicious 背徳
02. Satellite Of Love
03. Walk On The Wild Side ワイルドサイドを歩け
04. I'm Waiting For The Man 僕は待ち人
05. Oh Jim
06. Sad Song 悲しみの歌

Personnel:
Lou Reed : vocal
***
Dick Wagner : guitar
Ray Colcord : keyboard
Pentti Glan : drums
Prakash John : bass
Steve Hunter : guitar