あれも聴きたいこれも聴きたい-LouReed04
 陰影に富んだ傑作を発表して、意気揚々のルー・リードの次なるアルバムはライヴ・アルバムでした。ルーはライヴになると陰影とか抒情とか気にせずんび轟音ギターをかきならしてロックする人ですが、この頃はボーカルに専念していたようでもあります。

 「ロックン・ロール・アニマル」と題された初めてのライヴでは、彼の代わりにアリス・クーパーのバンドで活躍するディック・ワグナーとスティーヴ・ハンターの二人がツインでリード・ギターを弾きまくっています。これはこれで大正解、結構な商業的な成功も収めました。

 当時はグラム・ロックの隆盛期にもあたり、ルー自身もお化粧をしてグラマラスなイメージでステージをこなしていました。この頃の映像をみると、やせたルー・リードが妖艶ながら底冷えのする凄味をまきちらしながらステージをうろうろする姿が確認できます。

 もともと音程に拘泥しない人ですから、ライヴは何とも凄まじいことになっており、そこがかっこいいといえばかっこいい。何ともややこしい魅力の人ですが、とにかく四の五の言わせない迫力がみなぎっていました。ルーのライヴはとにかく評判となっていきます。

 本作品は1973年12月21日にニューヨークのアカデミー・オブ・ミュージックで行われたステージを収録したライヴ・アルバムです。発表当時は全部で5曲の収録で、このうちソロ・アルバムからの曲は「レイディ・デイ」のみ、ほとんどがヴェルヴェッツ時代の曲です。

 後に同日のライヴからの別曲が勝手にアルバムにまとめられるわけですが、そちらはソロ作品からの曲が大半を占めています。としてみると、単純にヴェルヴェッツ時代の曲の方がライヴ映えもして出来が良かったということなのでしょう。深読みは禁物です。

 なお、CD化に際して、問題作「ベルリン」からの2曲が加わりました。明らかに出来栄えはオリジナルに及ばないのになんで入れたのかなと思ったのですが、聴きどころはその2曲の曲間にありました。ルーが観客に向かって♪シャアラップ!♪と叫んでいるんです。

 おそらくはそれが収録したかったんでしょう。私は後にルー・リードのライヴを何回か見ることができたのですが、ルーが無礼な観客を叱るのはお約束になっています。客が叱られると盛り上がるんです。倒錯していますが、ルーのパブリック・イメージのなせる業です。

 アルバムは元ブラッド・スウェット&ティアーズのスティーヴ・カッツがプロデュースしています。どこまでカッツの役割があったのかは分かりませんが、至極まっとうなロックン・ロール大会となっていて爽快です。名曲「ヘロイン」でもギター・バトルが展開するくらいです。

 アルバムの白眉は「スウィート・ジェイン」と「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」の2曲で、これは後のベスト・アルバムにも収録されました。ライヴの数だけある「スウィート・ジェイン」のベストは本作品ではないかと思うくらいにかっこいいアレンジです。ハード・ロックの鑑。

 ヴェルヴェッツ時代、さらにはこれまでのソロ・アルバムのイメージを持って針を下ろすと見事に裏切られます。しかし、ルー・リードの本来の姿はこちらでしょう。ジャケットの写真は一癖も二癖もありますけれども、ロックンローラーとしての本来のルーの姿が眩しいです。

Rock And Roll Animal / Lou Reed (1974 RCA)

*2011年1月13日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Intro - Sweet Jane
02. Heroin
05. White Light / White Heat
06. Lady Day
07. Rock 'N' Roll
(bonus)
03. How Do You Think It Feels 暗い感覚
04. Caroline Says I キャロラインのはなし1

Personnel:
Lou Reed : vocal
***
Dick Wagner : guitar
Ray Colcord : keyboard
Pentti Glan : drums
Prakash John : bass
Steve Hunter : guitar