ロング・アイランドに生まれたルー・リードは高校生の頃からロックを演奏し、インディーズでレコードも出しています。そして、シラクサ大学を卒業した後はレコード会社に作曲家として就職するという、ロックン・ロールでない面白いキャリアの持ち主です。
ルー・リードは1942年生まれですから、このアルバム発表時にはまだわずかに30歳です。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代は濃密ではありながらも短かったのだということがよく分かります。それに、昔は皆若かった。今や30歳など鼻たれ小僧です。
ヴェルヴェッツを辞めた後、ルーは音楽業界の外に就職口を見つけようと頑張っています。実際に1年半ほどタイピストの仕事をしていたそうです。そんなルーでしたが、創作の意欲は完全には消えることはなく、詩の朗読会に参加したりしていました。
そんなルー・リードの様子を見たプロデューサーのリチャード・ロビンソンらの強い勧めがあって、ルーは英国にわたり、このアルバムを制作することになりました。さすがに埋もれてしまう人ではなかったわけです。音楽の神はこういう人をほおっておきません、
この作品のために用意された新曲は「ゴーイング・ダウン」と「ベルリン」の2曲だけで、残りはすべてヴェルヴェッツ時代の楽曲です。後にヴェルヴェッツのライヴ盤で有名になる曲もありますけれども、ほとんどが当時は未発表だったはずです。
集められたミュージシャンの顔ぶれが今考えてみると凄いです。イエスのスティーヴ・ハウやリック・ウェイクマンの名前が見えます。当時はイエスがブレイクする前ですし、とりわけリックはスタジオ・ミュージシャンとしても活躍していましたから、驚くことではないのですが。
しかし、後の軌跡を知っている身からすれば、十分に驚くべきことです。イエスとルー・リードの接点など何も考え付きません。そんなことが起こるところがポピュラー音楽の良いところです。とはいえ、アルバムを聴く限り、これがベスト・マッチとは到底言えないのが残念です。
日本では「ロックの幻想」という意味深なタイトルが付けられたアルバムですが、ルー・リードのソロ・キャリアの中では高い評価を受けているわけではありません。それは本人が失敗作だと広言していること、そして2作目が大出世作になったことが理由でしょう。
このアルバムは決して悪いアルバムではありません。演奏はそれなりのレベルですし、曲は結構充実しています。ただ、後にアルバムに発展する「ベルリン」や、ヴェルヴェッツのライブでおなじみの「オーシャン」、「リサのお話」などやっつけ仕事感は否めません。
むしろ、そうした大曲よりも、シンプルを極めたようなラブ・ソング「アイ・ラブ・ユー」や、おしゃべりはいつも雨の話に行き着くという歌詞がユーモラスな「ワイルド・チャイルド」など、ここでしか聴けない類の曲がいいです。この2曲は後にベスト・アルバムにも収録されます。
伝説の人ルー・リードと思って聴くから拍子抜けするんです。彼はもともと魔性の声ながら、シンプルなロックン・ロールを歌う人です。挨拶代わりのシンプルな一枚としてもう少し人気がでてもおかしくないと思います。ルーのソロ第一弾として暖かく迎えてあげたい作品です。
Lou Reed / Lou Reed (1972 RCA)
*2011年1月9日の記事を書き直しました。
Tracks:
01. I Can't Stand It
02. Going Down
03. Walk And Talk It
04. Lisa Says
05. Berlin
06. I Love You
07. Wild Child
08. Love Makes You Feel
09. Ride Into The Sun
10. Ocean
Personnel:
Lou Reed : vocal, guitar
***
Calab Quaye : guitar, piano
Steve Howe : guitar
Paul Keogh : guitar
Rick Wakeman : piano
Les Hurdie : bass
Brian Odgers : bass
Clem Cattini : percussion
Kay Garner : vocal
Helene Francois : vocal
ルー・リードは1942年生まれですから、このアルバム発表時にはまだわずかに30歳です。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代は濃密ではありながらも短かったのだということがよく分かります。それに、昔は皆若かった。今や30歳など鼻たれ小僧です。
ヴェルヴェッツを辞めた後、ルーは音楽業界の外に就職口を見つけようと頑張っています。実際に1年半ほどタイピストの仕事をしていたそうです。そんなルーでしたが、創作の意欲は完全には消えることはなく、詩の朗読会に参加したりしていました。
そんなルー・リードの様子を見たプロデューサーのリチャード・ロビンソンらの強い勧めがあって、ルーは英国にわたり、このアルバムを制作することになりました。さすがに埋もれてしまう人ではなかったわけです。音楽の神はこういう人をほおっておきません、
この作品のために用意された新曲は「ゴーイング・ダウン」と「ベルリン」の2曲だけで、残りはすべてヴェルヴェッツ時代の楽曲です。後にヴェルヴェッツのライヴ盤で有名になる曲もありますけれども、ほとんどが当時は未発表だったはずです。
集められたミュージシャンの顔ぶれが今考えてみると凄いです。イエスのスティーヴ・ハウやリック・ウェイクマンの名前が見えます。当時はイエスがブレイクする前ですし、とりわけリックはスタジオ・ミュージシャンとしても活躍していましたから、驚くことではないのですが。
しかし、後の軌跡を知っている身からすれば、十分に驚くべきことです。イエスとルー・リードの接点など何も考え付きません。そんなことが起こるところがポピュラー音楽の良いところです。とはいえ、アルバムを聴く限り、これがベスト・マッチとは到底言えないのが残念です。
日本では「ロックの幻想」という意味深なタイトルが付けられたアルバムですが、ルー・リードのソロ・キャリアの中では高い評価を受けているわけではありません。それは本人が失敗作だと広言していること、そして2作目が大出世作になったことが理由でしょう。
このアルバムは決して悪いアルバムではありません。演奏はそれなりのレベルですし、曲は結構充実しています。ただ、後にアルバムに発展する「ベルリン」や、ヴェルヴェッツのライブでおなじみの「オーシャン」、「リサのお話」などやっつけ仕事感は否めません。
むしろ、そうした大曲よりも、シンプルを極めたようなラブ・ソング「アイ・ラブ・ユー」や、おしゃべりはいつも雨の話に行き着くという歌詞がユーモラスな「ワイルド・チャイルド」など、ここでしか聴けない類の曲がいいです。この2曲は後にベスト・アルバムにも収録されます。
伝説の人ルー・リードと思って聴くから拍子抜けするんです。彼はもともと魔性の声ながら、シンプルなロックン・ロールを歌う人です。挨拶代わりのシンプルな一枚としてもう少し人気がでてもおかしくないと思います。ルーのソロ第一弾として暖かく迎えてあげたい作品です。
Lou Reed / Lou Reed (1972 RCA)
*2011年1月9日の記事を書き直しました。
Tracks:
01. I Can't Stand It
02. Going Down
03. Walk And Talk It
04. Lisa Says
05. Berlin
06. I Love You
07. Wild Child
08. Love Makes You Feel
09. Ride Into The Sun
10. Ocean
Personnel:
Lou Reed : vocal, guitar
***
Calab Quaye : guitar, piano
Steve Howe : guitar
Paul Keogh : guitar
Rick Wakeman : piano
Les Hurdie : bass
Brian Odgers : bass
Clem Cattini : percussion
Kay Garner : vocal
Helene Francois : vocal