あれも聴きたいこれも聴きたい-Monty Python
 モンティ・パイソンは私の永遠の憧れです。1969年に始まったイギリスのテレビ番組は、英国を始め各国で人気を博し、今に至るもカルト的な人気を保ち続けています。日本でもやっていたというのですけれども、東京12チャンネルは私の田舎では映りませんでした。

 というわけでリアル・タイムでは噂には聞いていたものの、本格的に見たのはビデオからです。1990年代のことです。全巻購入した上に、英語の台本集を買って一生懸命に見たものです。その後の人生に大きな影響を与えてくれました。

 シュールな笑いのセンスは、日本で言えば松本人志が近いのでしょうか。何だか賛否両論出そうな話ですけれども、実際に松本さんにモンティ・パイソンのことを尋ねた人がいましたから、そう思う人も多いということでしょう。

 このアルバムは彼らが発表した6枚のレコードからコンパイルしたベスト盤です。歌もありますけれども、半分以上はコメディ・スケッチ、要するにコントの録音です。ビデオが一般化する前は結構こういう作品がありました。

 私が買った中に東京乾電池の作品がありました。「やめてください、課長」「役職名で言われると興奮するなあ」などというコントをステレオで聴いていたわけです。こうしたレコードはビデオに淘汰されましたが、落語などの話芸は残っています。モンティ・パイソンは後者です。

 収められたスケッチの中で私が好きなのは、死神が相手にされない「グリム・リーパー」や、しゃべりまくる「トラベル・エイジェント」、そして何よりも「死んだオウム」などです。特に「オウム」は英語における死の表現の多彩さに感動すらします。

 しかし、これはCDですから、やはり歌がいいです。モンティ・パイソンの名曲と言えば、真っ先にあがるのが、最大のヒット曲「いつも人生の明るい面を見よう」です。イギリス人はサッカーの試合に負けたり、オリンピックの招致に失敗したりするとこの歌を観客が合唱します。

 ちなみに勝った時にはクイーンの「伝説のチャンピオン」。気難しそうなイギリス人ですが、意外に分かりやすい一面もあることが分かります。関西人だと勝っても負けても「六甲おろし」。まあそれもいいかもしれませんが。

 それから「精子一匹一匹が神聖だ」。貧しいカトリック教徒の家の話。貧しいけれども避妊してはいけないので、何十人も子供がいる、その子供たちが天使の歌声で、このタイトル通りのフレーズを歌います。これが場にそぐわないくらい良い曲です。

 ビートルズのパロディ・バンド、ザ・ラトルスのエリック・アイドルもメンバーでしたし、役者として活躍するジョン・クリース、レポーターとして有名なマイケル・ペイリン、グレアム・チャップマンにテリー・ジョーンズ、それに唯一のアメリカ人テリー・ギリアムの6人組でした。

 イギリス人らしく皮肉に満ちていて、英語の奥の深さをとことん見せてくれるコメディ・スケッチの数々に、新しいマザー・グースとも言うべきさまざまな歌。もはやいずれも古典です。シェイクスピアやディケンズとある意味で並んでいるとさえ思います。

The Ultimate Monty Python Rip Off (1994 Virgin)

(2015/3/15 Edit)