あれも聴きたいこれも聴きたい-Funkadelic4
 前作発表後、ファンカデリックの面々はバーニー・ウォーレルを除いて、全員が去ってしまいました。ドラッグが原因であったということで、棟梁ジョージ・クリントンとしては若者の無軌道ぶりに頭が痛かったことでしょう。ベースのビリーはこれを「解散」と呼んでいます。

 去って行ったとは言っても、完全に切れたわけではなく、彼らも断続的に演奏には参加しています。そこはさすがに床屋の大将、懐が深いところです。このアルバムには総勢30名を越えるミュージシャンのクレジットがあります。まさにプラットフォームとしてのPファンクです。

 今回のアルバムの中心になったのは、賛辞が捧げられている三人、キーボードのバーニー・ウォーレル、ドラムのタイロン・ランプキン、ベースのプラカッシュ・ジョンです。タイロンはクラシックもジャズも出来、バーニーと相性がいいドラマーです。

 プラカッシュ・ジョンはアリス・クーパー・バンドからやって来て、ルー・リード・バンドに去って行くという、涎が出そうなキャリアのベーシストです。ベーシストも三人がクレジットされていて、その中では一番ファンカデリックとの縁が薄いところが面白いです。

 このアルバムの大きな話題は、Pファンクの屋台骨を支えるメンバーの中でも、バーニーと並ぶ横綱ブーツィー・コリンズが参加していることです。ほんの2曲程度の参加ですけれども、彼の提供した曲「フィルモア」は、明らかに際立ったトラックとなっています。

 他にも後の中心メンバーとなるギターのゲイリー・シャイダー、ベースのコーデル・モッソンも初お目見えしています。彼らはクリントンがバンド再建のために呼び寄せたU.S.というバンドのメンバーで、いつの間にかファンカデリックに吸収されていたのでした。

 帯の宣伝文句によると「ジョージ・クリントン自らがプロダクションの主導権を掌握、2年近くを費やし制作された、後のグループの方向性を決定づける2枚組の4作目」だとなっています。これまでも主導権はクリントンでしたが、レコード会社との確執があったんでしょうかね。

 サウンドはグループの方向性を決定づけるという感じではありませんが、明らかにこれまでのファンキーながらヘビーなサイケデリック・ロックからは遠ざかりました。ジャム・バンド的だったこれまでに比べ、きちんと構成された曲が目立ちます。

 さらにブーツィーの「フィルモア」は、これぞ後のファンカデリックのグルーヴの萌芽的な魅力を湛えています。それに、「ジョイフル・プロセス」などの曲を筆頭にバーニーのキーボードが縦横無尽の活躍を見せていて、これまた後に控える大成功を予感させます。

 その「ジョイフル・プロセス」には明らかに「シャボン玉とんだ」のメロディーが出てきます。この曲は実は賛美歌「ジーザス・ラヴ・ミー」なんだそうです。中山晋平も意識して翻案したはずだということで、驚きました。洋楽と邦楽の交差するところですね。

 何とも過渡期的なアルバムですから、偏愛している人がいるのではないかと思います。私も、もしも、ファンカデリックのアルバムの中で、最初にこのアルバムに出会っていたとすれば、おそらく大好きになったであろうと思います。ここからいろいろと広がりそうです。

America Eats Its Young / Funkadelic (1972 Westbound)

参照:「P-Funk」河内依子

*2010年12月11日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. You Hit Th Nail On The Head
02. If You Don't Like The Effects, Don't Produce The Cause
03. Everybody Is Going To Make It This Time
04. A Joyful Process
05. We Hurt Too
06. Loose Booty
07. Philmore
08. I Call My Baby Pussycat
09. America Eats Its Young
10. Biological Speculation
11. That Was My Girl
12. Balance
13. Miss Lucifer's Love
14. Wake Up

(bonus)
15. Loose Booty
16. A Joyful Process

Personnel:
Bernie Worrell : keyboards, melodica
Tyrone Lampkin, Zachary Frazier, Tiki Fulwood, Frank Waddy : percussion
Harold Beane, Phelps Collins, Eddie Hazel, Gary Shider : guitar
William Bootsy Collins, Prakash John, Cordell Mosson : bass
Bruce Cassidy, Arnie Chycoski, Ronnie Greenway, Clayton Gunnels, Al Stanwyck : trumpet
Randy Wallace : also sax
Robert McCullough : tenor sax
Ollie Strong : steel guitar
James Wesley Jackson : juice harp
Albert Pratz, Bill Richards, Victoria Polley, Joe Sera : violin
Stanley Solomon, Walter Babiuk : viola
Peter Schenkman, Ronald Laurie : cello
Harold Beane, Diane Brooks, Phelps Collins, William Bootsy Collins, Clayton Gunnels, Ronnie Greenway, Prakash John, Steve Kennedy, Eddie Hazel, Gary Shider, Frank Waddy, Randy Wallace, Bernie Worrell : vocal