* アンビシャス・ラバーズ ~ グリード
アンビシャス・ラヴァーズのセカンド・アルバムは「七つの大罪」シリーズの第二弾ということで、「グリード」、すなわち「貪欲」と名付けられました。彼らほど貪欲とはほど遠い人たちもいないと思いますけれども、とにかく「貪欲」です。罪のなかでも最も罪深い。 本作品からは名義がちゃんとアンビシャス・ラヴァーズになりました。ジャケットにも今回はきちんと二人が写っています。さらにプロデュースもアート・リンゼイではなくピーター・シェラーの単独名義です。しっかりと二人が対等の形でデュオを組んでいることが分かります。 しばしば彼らの最高傑作と評される本作品は、前作でみせたブラジル音楽とロックの融合をさらに押し進めており、ワシントン・ポスト紙はこの作品を「サンバ・パンク」と呼んでいます。これはリンゼイのキャリアも加味した上手い言い方ではあります。 とはいえ、本作品のサウンドはサンバやパンクと形容してしまうのは少々違和感があります。冒頭の大名曲「コピー・ミー」のからからに乾いたファンキーなサウンドを聴いてしまうと、ジャンルで形容するならファンクという言葉は外せません。かっこいいです。 まあジャンル分けは本作品には不毛です。当時、こんな音楽は聴いたことがありませんでした。独特な空気感で、浮遊感にあふれていて、とにかくかっこいい。私にはとりわけ「コピー・ミー」が耳から離れず、コピー機に向かうともれなく頭の中で流れてきます。中毒性が高い。 本作品には前作同様にブラジル音楽風味があふれていますけれども、そこまでブラジル一辺倒ではありません。ファンク系のリズムにガシガシ弾きまくるノイズ・ギターを中心に、ブラジルの楽器がなったり、ボサノヴァの曲があったりと、何とも独特な世界が展開されています。 今回はゲストがとにかく豪華です。リンゼイのニューヨーク人脈が中心で、ニューヨークの顔役ともいえるビル・フリーゼルやジョン・ゾーン、彼らと組んでいたジョーイ・バロン。リヴィング・カラーのヴァーノン・リード、さらにブラジルの至宝ナナ・バスコンセロス。 そして嬉しいことにリンゼイも参加していたラウンジ・リザーズのジョン・ルーリーまで参加しています。ルーリーは本作品の中で、その名も「表参道」という曲で味わい深いサックスを披露しています。明け方の表参道でごみを漁るカラスのようなサックスです。 ブラジルのパーカッション奏者も大挙して参加して、しっかりアルバムの顔になっています。とにかく隅々までかっこいい作品です。発売時の帯の文句は「混沌とした戦慄または象牙色の狂気」です。何とかサウンドに追いつこうとかっこよさげな言葉を並べました。 リンゼイは「ノー・ニュー・ヨーク」に参加した屈指のアングラ・インテリ・バンドDNAのギタリストとして、一部神格化されています。その時のギターを彷彿とさせる場面もあるのですが、このアルバムの世界はもっとしなやかで、昔にこだわるのが馬鹿みたいに思えてきます。 何ともゴージャスでファンキーなサウンドは唯一無二です。ラウンジ・リザーズと同じ匂いも感じますけれども、こちらはさらにごった煮感が強い。それでいて、猥雑にはならない。例えるならばマティーニの味がする音楽です。個人的な感想に過ぎますか...。Greed / Ambitious Lovers (1988 Virgin)*2011年10月5日の記事を書き直しました。Tracks:01. Copy Me02. Privacy03. Caso04. King05. Omotesando06. Too Far07. Love Overlap08. Admit It09. Steel Wool10. Para Não Contrariar Voce11. Quasi You12. It Only Has To Happen Once13. Dot StuffPersonnel:Arto Lindsay : vocal, guitarPeter Scherer : keyboards, synth bass, drum programming, sampling***Vernon Reid, Steve Horton, Bill Frisell : guitarMelvin Gibbs : bassJoey Baron : drumsJohn Zorn, John Lurie : saxJill Jaffe : violinD.K. Dyson, Gall Lou, Bernard Fowler : chorusNaná Vasconcelos : percussion, vocalMarçal, Luna, Eliseu, Trambique, Gordinho, Perrota : percussionKazu, Rebecca Wright, Lo Wright : voice