スティーヴィー・ワンダー ~ カンバセーション・ピース
ルキノ・ヴィスコンティ監督に「家族の肖像」という作品がありました。ヴィスコンティらしい退廃を感じさせる美しい映画でした。その英語題が「カンバセーション・ピース」、家族の団欒を描いた絵画を指す言葉で、イタリア語での題名はより直截な言葉になっています。 そのイメージがあるものですから、スティーヴィー・ワンダーの7年ぶりとなる新作スタジオ・アルバムの題名が「カンバセーション・ピース」と聞いた時には少々驚いたものです。スティーヴィーはヴィスコンティとは対極の位置にいる存在のような気がしたものですから。 ただし、ここでは「ピース」が同音異義語に置き換えられて「平和」になっています。結局、タイトルが意味するところは「対話と平和」、いつものスティーヴィーらしい主張になっているのでした。同名の曲では家族も交えて平和を訴えています。 本作品は構想が発表されたのが1989年でした。前作「キャラクターズ」から2年ですから、ちょうどよいタイミングです。しかし、そこからが長かった。途中で「ジャングル・フィーヴァー」というサントラ制作もあったりして、リリース情報は浮かんでは消えての繰り返しでした。 完成のきっかけとなったのは1993年に憧れの国ガーナを訪れたことのようです。毀誉褒貶の激しいローリングス大佐の招待を受けての訪問ということで、若干もやもやしないではありませんが、人の好いガーナ人たちとの交流が刺激となり曲があふれてきたようです。 そこからもスタジオ作業に予定以上に時間はかかりましたけれども、ついに1995年3月に本作品が発表されました。完成した作品を通して聴いたスティーヴィーが涙したと伝えられています。実に11歳の初レコーディング時以来の出来事であったそうです。 スティーヴィー渾身の作品は70分を越える、LPならば二枚組の大作です。長らく待たされたファンの皆さまの感激も一入だったことでしょう。それに本作品はスティーヴィーのクラシック期、あの三部作や「キー・オブ・ライフ」の頃に戻ったと評されています。感激の二乗です。 確かにアルバム全体を聴き通すと、1970年代のスティーヴィーを思わせます。久しぶりに三部作の立役者の一人ロバート・マーゴレフが2曲でミキシングを担当していることもその印象に棹を差しています。軽やかなシンセがずっしりと腹にくるサウンドです。 聴きなれたサウンドだからと評価を下げる向きもあり、実際、全米チャートでは16位どまりではあります。しかし、私は耳に馴染んだスティーヴィー節の作品がまた一つ増えたことを素直に喜びたいと思います。ちなみにオリコン・チャートでは11位と大健闘です。 アルバムからはクラシックな珠玉のバラード「フォー・ユア・ラヴ」がシングル・カットされ、大ヒットにはならなかったものの、見事にグラミー賞に輝いています。この曲を筆頭に全13曲はそれぞれが緻密にアレンジされていて腹いっぱいになること間違いありません。 黄金期に比べるとまだ45歳なのに声はかなり渋くなっています。何も知らずに聴くと、スティーヴィーのそっくりさんかなと思うかもしれません。若さには欠けるものの、それに変わる円熟の極みを示した作品です。流行などは無関係なところに立っている作品です。Conversation Peace / Stevie Wonder (1995 Motown)Tracks:01. Rain Your Love Down02. Edge Of Eternity03. Taboo To Love04. Take The Time Out05. I'm New06. My Love Is With You07. Treat Myself08. Tomorrow Robins Will Sing09. Sensuous Whisper10. For Your Love11. Cold Chill12. Sorry13. Conversation PeacePersonnel:Stevie Wonder : vocal, instrumentsEdley Shine : reggae chantingBen Bridges, Greg Moore, Melvin "Wah Wah" Ragin : guitarNathan Watts : bassGreg Phillinganes : keyboardsLenny Castro, Munyungo, Bill Summers, Vinx : percussionJorge Arciniega, Terence Blanchard, Ronald Brown, Fernando Pullum, Nolan Shaheed : trumpetGary Bias, John Stephens : alto saxRay Brown, Ernie Fields, Jr.,, : tenor saxBranford Marsalis : saxOllie Brown : conductorDr. Henry Panion III : stringsStephanie Andrews, Anita Baker, Kimberly Brewer, Daryl Coley, Julie Delgado, For Real, Katrina Harper, Kenneth Lee Harris, Dorian Holley, Bobette Jamison-Harrison, Jazzyfatnastees, Keith John, Marva King, Ladysmith Black Mambazo, Melodyu McCully, Della Miles, Aisha Zakiya Morris, Katrina Perkins, Sounds Of Blackness, Take 6, Deniece Williams, The Winans, Syreeta Wright : chorusAkosua Busia : president/organizerThe Christian Entertainer's Fellowship : chant