* ロッド・ステュワート ~ グレイト・アメリカン・ソングブック
それなりの活動を続けてきたロッド・スチュワートが、またまたスーパースターらしい輝きを取り戻しました。2002年に発表された「ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック」はロッドに久しぶりの全米トップ10ヒットをもたらし、ここから始まるヒット街道の起点となったのでした。 本作品ではタイトル通り、古き良きアメリカのスタンダード曲のカバーを全編にわたって展開しています。これまでもロッドは数多くのヒット曲をカバーしてきましたが、こうしてカバーを前面に立てたアルバムは初めてのことです。しかも、一貫したテーマにそった選曲です。 収録された曲は1930年代から40年代の楽曲が中心です。作曲者には、ジョージ・ガーシュウィン、ホーギー・カーマイケル、コール・ポーターなどの大御所が並んでおり、楽曲も私でも知っている超スタンダードばかりです。真っ向からの直球勝負で変化球はありません。 ロッドの年齢からいっても生まれる前の曲が中心ですから、幼少期に聴いていたということなのでしょう。ロッドはこうした曲が大好きで、「ステージで『マギー・メイ』を歌えるように、こうした曲を歌って声をウォーミング・アップしていた」のだそうです。 ロッドは早くも1983年の段階で、「『ジーズ・フーリッシュ・シングス』や『忘れられぬ君』を歌うアルバムを作りたい」と構想していましたが、当時のマネジメントは、キャリア的に時期じゃない、と押しとどめていたそうです。まあ分からないではありません。 そして、ついに時は来ました。ロッドはレーベルに内緒で旧知のプロデューサー、リチャード・ペリーと構想を具体化していきます。しかし、ワーナー・ブラザーズはこれに興味を示しません。そこでロッドは私費を投じて、プロジェクトの具体化に進みました。 ここで登場するのが業界の大物クライヴ・デイヴィスです。デイヴィスはロッドに出来上がったトラックを聴かされると、即座にプロジェクトを設立したばかりのJレコードで引き受けます。デイヴィスはさらにフランク・シナトラを手がけていたフィル・ラモーンも参加させます。 デイヴィスは、制作中ずっと「フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのような音にしてほしい」と言い続けていて、ある朝、ビヴァリーヒルズ・ホテルの一室でとうとう全員でアステアのように踊りだしたと言うことです。何と楽しそうなことでしょう。 そのデイヴィスの構想通り、ペリーとラモーンがプロデュースした本作品では、ロック的なアレンジではなく、スタンダードをスタンダードとして当時の雰囲気を漂わせたアレンジがなされました。古き良きスタンダードをそのまま歌う、これまた直球勝負です。 それにしてもロッドは本当に歌が上手い。スタンダードへの深いリスペクトを込めた歌唱は素晴らしいです。これならばリアルタイム世代にも、両親が聴いていた子ども世代にも十分に届きます。結果は全米8位の大ヒット、さっそく続編が企画されるのでした。 ワーナー・ブラザーズは歯がみしたであろうこの企画は、日本にも飛び火し、ご存じの通り、徳永英明がこのアルバムに触発されて「ヴォーカリーズ」シリーズを制作して大ヒットさせています。私としては本作品のようにもっともっと古い時代の曲でやって欲しかったですが。It Had To Be You... The Great American Songbook / Rod Stewart (2002 J)*2011年9月10日の記事を書き直しました。Tracks:01. You Go To My Head 忘れられぬ君02. They Can't Take That Away From Me 誰も奪えぬこの思い03. The Way You Look Tonight 今宵の君は04. It Had To Be You もしあなただったら05. That Old Feeling06. These Foolish Things07. The Very Thought Of You08. Moonglow09. I'll Be Seeing You10. Every Time We Say Goodbye いつもさよならを11. The Nearness Of You12. For All We Know13. We'll Be Together Again また会う日まで14. That's AllPersonnel:Rod Stewart : vocal***Tal Bergman, John Ferraro, Alan Schwartzberg, Shawn Pelton, Harvey Mason : drums, percussionDave Carpenter, Reggie McBride, Bob Magnusson, David Finck, Chuck Demonico : bassJimmy Rip, Jim Fox, Bob Mann, Jeff Mironov, Dennis Budimir : guitarRenato Neto, Will Hollis, Randy Kerber, Rob Mounsey, Doug Katsaros, Leee Musiker, Don Sebesky, Russ Kassoff, Randy Waldman : piano, keyboard Philippe Saisse : keyboardDan Higgins : clarinet, alto sax, synth vibeAndy Chukerman : syynthesizer PadMichael Brecker, Dave Koz : tenor saxArturo Sandoval : trumpet, flugelhornChris Boti : trumpetJeremy Lubbock : strings & woodwinds conductor