新宮・浄泉寺・遠松忌法要2017
ご報告
2016年の東京試演会、新宮お披露目会を経て、6月23日、24日にとうとう、「彼の僧の娘ー高代覚書ー」が、新宮の浄泉寺に里帰りしました。法要前日の公演と法要に続く公演の2公演でした。物語の舞台の寺、そこでの上演は2013年から「太平洋食堂」の実現、そして再演、その後も走り続けてきた私たちのゴールでもありました。
里帰りというと、押し掛け里帰りのようですが、昨年の新宮公演を観られた山口住職より強い希望を頂き、また東本願寺大阪教区の皆さんのご協力などで、浄泉寺本堂での公演が実現しました。ご協力、ご支援いただいた皆様、ありがとうござます。心より御礼をもうしあげます。
写真は紀南新聞、熊野新聞です。記念講演は、天理大学名誉教授の池田士郎先生でした。「プロキュストの寝台」でもご教授頂きました。
満堂の中、新宮メンバーの川口一央さん、羽山真弓さんも加わってのアンサンブルは、2015年以来、交流してきた新宮の皆さんとの繋がりの中で生まれました。顕明役の川口さん、普段は労金の支店長さんですが、遠い昔、無名塾のオーディションも受けたり、地元で劇団をしたりという、演劇青年??でした。先輩の羽山さんは、意地悪置屋の女将や、市民の声など、新宮弁で情緒溢れる芝居で盛り上げてくださいました。土地の声、本当に豊かでした。
昨年の間宮さんが演じた特高警察のパートは、桝谷裕さん。細い体から特高警察のすごみを本堂中に響かせてくれました。
写真は、秋田杉の杉皮を用いた木工品。秋田刑務所で制作されているものです。今回、来られなかった元大谷大学教授の泉惠機先生よりお預かりして、本堂で素敵な花を活けていただきました。泉先生は、顕明が自死して100年目に秋田監獄の跡地を訪れました。当時の服役囚も作業として様々な木工作業をしていたとのことです。
高代を演じた明樹由佳は、渾身の演技、三畳ほどの狭いスペースに、広い広い演劇世界を作りだしました。地唄舞の「黒髪」、そしてジェストダンス、ムーブメントで 祈りの場を立ち上げました。
長い長い旅でした。
様々な取材、インタビュー、たくさんの人々の証言を繋ぎ、イメージを貰い、時に共に泣き笑い、怒り・・・・・花街に響いた三弦の音を探し、邦楽の指導を受け、曲を書いてもらい、着物を探し帯を選び、髪を結い、所作を学び、日本舞踊の振付、それをコーディネートして芝居という立体にする共同作業には、ものすごく沢山の人が関わっています。そしてそれを見て頂く場を用意するのも、受け手があって初めてできたことです。そして、それを限られた人しか見ないのですが、同じ時間を同じ呼吸で過ごすことで、過去の物語が女優の身体によって顕わされて、皆が共有するのです。それが演劇です。演劇にしかできないことでしょう。
三味線を弾きながら、響きが吸い込まれていく瞬間、満堂の人々の聴く息遣いを感じました。様々な種類ではありますが、皆が祈った貴重な1時間10分でした。
この物語は、この後、香川に9月、東京で12月14、15日と再演されます。それもまた形はどんどん変わります。ご期待ください。



