作家の背中を追いながら。 | メメントCの世界

メメントCの世界

演劇ユニット「メメントC」の活動・公演情報をお知らせしています。

メメントC第5回公演『劇が孵化する夜に』にお越し戴いた皆様ありがとうございました。
早いもので幕が下りて一週間が経ちました。

私の読みの甘さもあり想像以上の荒技でご協力戴いた出演者ならびにスタッフの皆様には感謝の気持ちで一杯です。

今回の公演では3人の女性劇作家のパワーに押されっぱなしでした。
よく考えたら普段対する作家は一つの公演で1人ですから、当たり前・3倍のパワー・・・もしくはそれ以上のパワーが稽古を押し進めて行きました。

女性劇作家の競演と銘打ってもやはりそれぞれの戦う相手は己なんですね。
そんなストイックな3人を纏めるべく呼ばれた私でしたが、かなり早めに俯瞰の位置に行ってしまいました。
金塚さんも堀田さんも、勿論嶽本もはっきりとした世界観を打ち出して来ました。
そこから具現化していく作業ですが紆余曲折、3人ともその手段のタイプが違うので私も立ち位置がその度変わるのです。
正直疲れました。
しかし3本ともに共通していたのは作家の背中を見つめ続ける事でした。

勿論お客様に観て戴くのですから有る程度の判り易さや3本の戯曲の並べた時のバラバラ感が出ない様に位は少し考えましたが、基本的には強制的に台本を直してもらったりカット候補を伝えたりと言うのは今回はやめました。
内容には一切口出ししませんでした。
それは作家同士がやっていました。
作家に通じる作家同士の共通言語が有るんです・・・勉強になりました。

余談ですが私の祖父は売れない推理小説家でした。
だから母は子供時代から清書をさせられ、締め切り前には物音一つ立てない生活を余儀なくされたと良く言っています。
また私自身とある医療ジャーナリストの電話番を一週間だけした事が有りますが、コーヒーメーカーのポコポコを聞かせない為だけに少し早く入るという繊細な配慮をしなくてはなりませんでした。
そう作家とは静寂とコンビと言うか気を使う職業のイメージがあります。

しかし今回の女性作家を見て武田泰淳の奥様・百合子さんが思い起こされました。
子供をあやしながら食器棚の上に原稿用紙を置いて書いていた百合子夫人。
ちょっとやそっとの音ではビクともしなかったでしょう。
そして筆が乗っていても何かの家事で中断する事も多々有ったでしょう。
でもエンドマークをつける!
なんでしょうこの・・・私はそれを一種の衝動の様に思います。
もしくは欲。食欲や睡眠欲と同じそれが無いと死んでしまう事に体する欲。

それ位じゃないと戯曲なんて書けないですね。

結果かなり無謀だったと後々判るタイムテーブルを組んだにも関わらず千秋楽は早々にSold Out。
そして有り難い事に座布団が投げられる様な事にはなりませんでした。

それは作家の強い衝動がはっきりと出易いリーディングという形式の中で3人の真摯な姿が浮かび上がったからではないかと思っています。

3人の背中は広く大きく、そして繊細でした。

また機会が有ったらやってみたいですが、今回の反省をまずはしたいと思います←私自身。


本当に3日間5公演お越し戴いたお客様、いらっしゃれなくてもこのブログに来て下さっていた方々(アクセス数新記録が今回有りました涙)今後とも宜しくお願い致します。





*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆田中史子