初日の光景 | メメントCの世界

メメントCの世界

演劇ユニット「メメントC」の活動・公演情報をお知らせしています。

初日の光景 ・・・ 嶽本 あゆ美

 もう幕は開いて二日目です。

 ドキドキの初日が終わると、いろいろな事象が定着していくのですが、まだ二日目という事もあり、新鮮です。それにお客さんの反応がおもしろいのです。とにかく、女性が笑っています。人妻キーソチカがよろめく度にクスクスと。喜劇だから当たり前ですが、皆さん、思い当たる節があるからこその、熟女の笑いがさざめいていました。とにかくよい舞台なのでたくさんの方に観て頂きたいと欲望のるつぼになりつつあります。で、終わってからネタばらししても、事は終わっているのであまり意味は有りません。ネタばれしますが、観ようかどうしようか迷ってる方をターゲットにガンガン書かしてもらいます。

 小説にもキーソチカは不幸な結婚をした女として描かれていますが、私の脚本の中では、どちらかというと、そこいら辺のええしの奥さん、アッパーミドルの暇を持て余すゆえに不幸でチャーミングな女なんだろうなという位置づけです。どこが違うって?不幸かどうかというものは主観が全てだと思います。金はある、暇はある、旦那は留守で元気とくれば、まあそれほど悪くないと思います。ここで不幸が発生するとすれば、キーソチカ自身が旦那に愛されたい、かまって欲しいと思うから満たされないわけですね。満たされない女は何かにつっぱしりたくなります。そこに現れたのがアナニエフ、昔、自分を慕っていた中学生、年下の男の子ってなわけです。二人はプラトニックに家でお茶していますが、その間もアナニエフの下心の妄想がマンガのふきだしのようにせりふになって飛び出してきます。これがおもしろい。しかし、チェーホフも私もキーソチカの吹き出しは書かなかった。書いたらもう身も蓋もないですが・・・・

 ここで、ふと、なぜあんなに中年女性が笑っているのかというと、無いはずの吹き出しが、皆さんの頭の中にしっかりあるのです。アナニエフに「キーソチカ、僕にどうしてほしいの?」と言われ、舞台上のキーソチカは「いけませんわ、いけませんわ」とお決まりのセリフを言うのですが、笑っている観客の頭の中には、いけませんわも好きの内のごとく、「私、行きますわ。行きますとも」のセリフがあるのではないでしょうか?二回観ろとは言いませんが、もしもキーソチカの頭の中をご自分で深読みしたら、更なる爆笑が生まれるでしょう。いや、しかし、あの美しいラブシーンを台無しにしないで!というブーイングも聞こえそうですので、やめておきますが・・・・

 しっかりと大人の芝居ができる俳優に恵まれて、私の脚本は28日までの限定期間、立体となって世の中に存在します。是非是非、劇場までお越しください。


$メメントCの世界


メメントCの世界


メメントCの世界