〜つづき
昨年、北朝鮮は、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへ砲弾などを提供し、見返りに約30万㌧の小麦粉を得た。
しかし、金氏の真の狙いはロシアが持つ先端軍事技術だ。
具体的には、偵察衛星撮影装備や極超音速ミサイル、戦闘機、原子力潜水艦といったもの。
砲弾などの代金ではそれらの獲得には足りず、このところは、近年開発した新しい短距離弾道ミサイルの提供を始めている。
金氏は、ウクライナ侵攻が終わってしまえば先端技術を得る機会がなくなると考え、執着している。つまり、小麦粉などの食料が23年を大幅に上回る規模で届く可能性は低い。
深刻な食糧難は今年も続くだろう。
「人道支援」を重ね
前回の本連載でも紹介したが、岸田氏は昨年11月の国民大集会で
「さまざまなルートを通じ、さまざまな働きかけを絶えず続けているが、早期の首脳会談実現に向け、働きかけを一層強めていく」
と語った。
水面下で、拉致被害者を返すなら大量の米の提供など、人道支援を実施すると繰り返し伝えているはずだ。
餓えと寒さで苦しむ北朝鮮の人々のことを思うと心が痛い。
日本からの食糧はまずは支配階級に回るだろうが、総量が増えれば人民の腹に届く。
私は今回の岸田氏への見舞い電報について、他の専門家らの見方からもう一歩踏み込んで、金氏が日朝首脳会談を真剣に考えていることの表れではないかと分析している。
岸田政権は一昨年10月以降、核・ミサイルと拉致を切り離し、人道支援の対象として拉致を先に動かそうとしている。
関係者によると、北朝鮮首脳部はこの姿勢に高い関心を示し、親の世代の被害者家族が存命中という「期限」も、よく理解したようだ。
金氏にも意義を説明したに違いない。
そして今回の電報は、金氏の名前で送られているから、絶対に金氏の指示と決裁があったはずだ。
「自分の名前で岸田氏へ電報を送れ」と命じたのだ。
事態の進展に期待したい。
つづく〜