〜つづき
マレ近くの海に実物大の「浮かぶモデルハウス」があるという。
港から小舟で5分ほど沖へ向かうと、係留されたクルージングボートの合間から、ポツンと浮かぶカラフルな建物が現れた。
「小さなデッキだから、少し揺れるかも。でも、本物は十数棟が一体となった大きな構造だから全く揺れませんよ」
リヤズの案内でデッキへ飛び移ると、予想に反して、揺れはほとんど感じなかった。
路地に見立てた空間の片側に平家と2階建ての住宅が、反対側には軒下にバーカウンターを併設した店舗タイプの平家が立っていた。
地面には白い砂が敷かれ、家の前にはカウチセット。
「子どもたちが路地で遊び回り、人々が井戸端会議に花を咲かせる。モルディブの昔ながらの島の風景がモデルです」
浮かぶモデルハウス
2階建て住宅は、1階にダイニングキッチンとリビング、2階は小さな書斎と寝室2部屋。
屋上から、海の向こうに島が見えた。
首都の住宅事情を改善するため、1990年代後半からマレ島の北東に埋め立ててつくった人工島フルマーレだ。
拡張工事をへて現在はマレ島の2倍の広さで、二つの島は橋で結ばれている。
島の端には団地のような建物群が見えた。
「二十数階建ての公営住宅です。あれと同じ価格帯を浮かぶ都市で実現したい」とリヤズが指さした。2階建てタイプで25万ドル (約3700万円) ほどを目指すという。
「これまでは埋め立てで土地不足を解消してきた。だが、埋め立てによって周辺の海流などが変わり、別の海岸が侵食され、失われた分を補うためにさらに埋め立てを行い、また別の場所が侵食され……と、負の循環が生まれている。
新しい方法が必要なのです」
マレから西へフェリーで10分、隣島のビリンギリは、一変して低層の住宅街とビーチが広がるのどかな住民島だ。
海岸沿いを歩くと、砂浜が波で削られ、ヤシの木が傾いて根がむき出しになっている箇所があった。海岸線が道路のそばまで迫り、土嚢(どのう) が積まれている。
侵食されたビーチ
地元の環境NGO「セーブ・ザ・ビーチ・モルディブ」の代表ハッサン・ベイベ・アフメド (36) によると、現状では、未知数の部分が多い温暖化の影響以上に、島内外の埋め立てによる海流の変化の影響が顕著だという。
高校生のころ、遊び場だったビーチで埋め立て計画が持ち上がり、友人たちと座り込んで抗議したのが、今日の活動につながる。
島の清掃や子ども向けの自然教室のほか、サンゴの調査や工事予定地からのサンゴの移植にも取り組む。
周辺では16年、海水温が上昇し、広範囲にわたってサンゴが白化した。共生する植物プランクトンが抜けて白くなり、長く続くと死に至ることもある現象だ。
白砂のビーチは、サンゴからできている。
この国を支える観光業も漁業も、美しい海によって成り立っている。
「私たちは海とともに生きてきた、海の民。環境を破壊しない開発が必要だ。浮かぶ都市が実現したら、理想だと思うよ」。
アメフドはこつ期待を寄せた。
世界の巨大都市の9割が海面上昇に対して脆弱(ぜいじゃく) だとされる中、「浮かぶ都市」への注目は高まっている。
国連人間居住計画 (UN-Habitat) は21年、韓国・釜山市と米企業とともに、釜山沖に1万2000人が住む浮かぶ都市の構想を発表をした。
サウジアラビアで建設が進む未来都市「ネオム」でも紅海上での計画が公表されている。
〈上空からの完成予想図 (①) に、目が釘付けに!
六角形ベースの住宅群、まるで蜂の巣のよう。
昔から、そして今も海水との闘いをしているオランダの蓄積された経験・技術を取り入れ、、というのは賢明な選択。
モルディブのような国、地域、はたくさんあるようなので、これが完成・成功したら世界に広がってゆくと思います。
すでに韓国の釜山やサウジアラビアでも計画が進んでいるというのは驚きであります。
日本は…?
もしかしたら大阪万博でこれらの〝未来都市・住宅〟の展示等があるのかも〉