2024. 1. 25 産経新聞「話の肖像画」
海援隊の解散、武田流の龍馬のドラマと、渥美清さんに言われた言葉。
〝「金八」の仮面脱ぐため「龍馬」に〟
《海援隊は昭和57年、いったん解散した》
解散を言い出したのは私です。
日本武道館でコンサートができるようなグループになったので、一回エンディングを作っておいた方がいいんじゃないかと。
仲間2人に了解をとり解散しました。
よく承服しましたよね。
ちょっとくたびれたのかもしれません。
歌だけでなくドラマ、映画も始めたもんで。
その間、彼らを待たせているんです。
罪の意識がいつもあって。
一方で、「金八」をどう脱ぐか、もがき続けました。
仮面をかぶっていたら取れなくなったような感じです。
それで金八の反対側のキャラクターを演じたいと考えたのが、ハンガーで人をぶったたく映画「刑事物語」。
それから容姿なんか全然似てないのに、坂本龍馬そのものをやろうということに無我夢中になったんですよね。
《これが脚本と主演を務め、57年11月に日本テレビ系で放送されたドラマ「幕末青春グラフィティ 坂本龍馬」だ》
司馬遼太郎さんの小説とは全く違う武田鉄矢の「龍馬がゆく」をやりたかったんです。
龍馬は決して長身の格好いい英雄ではなく、ずんぐりむっくりのちょっと頭のゆるいローカル青年。
ただ一つ、人生で友達を大事にしたいというだけの田舎者の青年が、時代の中でゆっくりと英雄になっていく過程を。
若いなりに一生懸命考え、司馬さんが描く龍馬と、安岡章太郎さんが書いた小説「流離譚(りゅうりたん)」の龍馬を合わせてコミカルに描けたらと思ったんですね。
流離譚は、武市半平太の土佐勤王党に加わった安岡さんの先祖の安岡嘉助・覚之助兄弟が出てくる話ですが、土佐藩は身分にうるさく、郷士にげたを履かせず、わら草履でした。
龍馬は郷士の裏切り者として書かれている。
ドラマは、郷士である龍馬はその胸の痛みに耐えかね、履物に身分のないヨーロッパ社会のブーツに恋をしたという話です。
龍馬はなぜブーツを履いたのかというドラマをずっとやりたかったんです。
《ドラマには吉田拓郎や井上陽水らフォーク仲間も出演した》
スタッフがあちこちからスターを引っ張ってきまして。豪華絢爛です。
龍馬を斬る奴は誰がいいかと話していたら沢田研二を出しましょうよと。
漫才師のビートたけしって面白いらしいですよという話になり、山内容堂役でいこうと。
でたらめを言っていたら全部当たっちゃった。
つづく〜