■小鳥の巣には謎がある
愁堂れな
感想(ネタバレ含む)
日本のトップに君臨する才門修が我が子霧人の為に創立した小学校から高校までの一貫教育であり全寮制の名門校、修路学園で悲惨な自殺事件が起こった。その自殺はいくつもの疑念が残るものだった為イレギュラーながらも才門修の絶対的権力には抗えず「社会的ダメージ」を考慮し警視庁捜査一課巡査部長の笹本悠李(26)は単身で潜入捜査を行う事となった。自殺した生徒と同学年での潜入と言うことで17歳の高校2年生に化ける訳だが幸か不幸か悠李の外見は10歳近くサバをよんでいるにも関わらず何の違和感も感じさせない程若く見えた。普段「若く見える」事をコンプレックスに感じている悠李ではあったがこの捜査では役に立つのだと己を奮起させた。
寮での同室者は自殺した遠間俊介と同室であり親友でもあった襟川透という愛らしい少年だった。創立以来始めての編入生に皆が注目する中襟川は純粋に悠李を受け入れ校舎の案内をかってでてくれる。そしてそこで謎の長髪の美少年才門霧人と出会う。外界とは遮断された閉鎖的なこの学園に君臨する絶対的権力を有する生徒会の中のトップはやはり才門修の息子才門霧人だったのだ。
修路学園では誰もが霧人を崇拝し羨望の眼差しを向けている。そんな霧人は悠李に対して不自然な程に友好的で逆に他の生徒の嫉妬混じりの反感を買うことになる悠李。捜査の為にその様な事態は避けたい悠李であるが事あるごとに霧人が悠李を特別待遇で扱うので生徒の悠李に対する負の感情はどんどん増していく。
勿論そうなれば捜査所か友達すら作れず孤立した状態になってしまう。
唯一変わらず好意的に接してくれるのは純粋無垢な襟川だけ。そんな中「不良」と恐れられている修路学園には異色な雰囲気の高校3年生岡田昴と出会う。
もう、閉鎖的名門学園とか絶対的権力な生徒会とか笑える位ベターでベター過ぎるけど古きよきベターさだと思う。私意外と嫌いじゃなです。この古くさい設定(笑)
もう事件面に関してはスタート地点から既に最終地点が見える様な分かりやすい内容でしたけどね。
だって霧人胡散臭い感じがプンプンだしね。
年下の癖に自分に怯む事無く上から目線で注意してくる悠李に興味を示す岡田。そりゃ悠李からしたら岡田は10近くも年下な訳だけど岡田はそんなの知らないからね(笑)な、なんだこいつ!って良くも悪くも強烈な印象を与えるのは当然でしょう。
で、私この本読んで始めて知った「念友」の意味。岡田に「念友」になろうと打診された悠李。え、男同士の愛の繋がりって事なんだー!私ソウルメイト的な意味かと勝手にずっと思ってたんだけど。そうだよ!ソウルメイトは「魂友」だよね!やだ恥ずかしいー!
この学園ではそういう意味だけじゃなくごく親しい友達って意味としても使われているのだと襟川から悠李は情報を得ていましたが、実際の男子校ってどうなんだろうね。やっぱあり得ないのかな~。BL的にはウホっ!って感じだけど現実だと、ん~・・・となっちゃう。やっぱり私的にはBLはファンタジーの概念は揺るがない様です。
霧人から皆が憧れる一部の生徒にだけ与えられる特別な「お茶会」に誘われた悠李。自分の事の様に感激する襟川とはうらはらに岡田は「ろくなもんじゃないからやめておけ」と注意を促します。
しかし遠間が「お茶会」に出席してからおかしくなったという事実を手に入れた悠李は刑事として捜査の為にもやはり出席したいんですよね。どうしてもお茶会に悠李を出席させたくない岡田は「百聞は一見にしかず」と悠李を出席させたくない理由を悠李自信に確認してもらう事に。そこで悠李は「お茶会」の実態を知る事になります。
皆の憧れの生徒会主催の「お茶会」はお茶会とは名ばかりの集団レイプの場でした。その場に生徒会長である霧人はいなかったので霧人の関与は謎のままですが、岡田いわくお茶にドラックでも入れて記憶を無くさせての暴挙だから誰も自分に起きた事は覚えていないとか。
岡田は「念友」にまでしたい悠李を当然参加させたくない。けど悠李は「岡田の後輩」である前に10近く歳上の刑事です。こんな事実を掴んだ以上放っておく事など出来る訳がないのです。
やっと事件の突破口を見出だせたのです。勿論事件とは関係無くともこの様な事実を見て見ぬふり出来る性格でも立場でもありません。
岡田は歯痒いでしょうね。しかも意味不明でしょう。自分の可愛い後輩がこんな事実を知って尚お茶会に参加しようとするのですから。岡田に事実を伝えてあげたいです(笑)
いざ敵陣へ、と意気込む悠李の耳には寝耳に水な情報が転がり込んできます。
岡田は才門修が結婚前に付き合っていた恋人との間に生まれた非嫡出子だという事。そして岡田は才門家に引き取られこの学園に入学したという事。これは学園では周知の事実だったのですが世間的には公にされていない情報でした。
霧人は事実上義兄弟に当たる岡田にとても好意的で「いわば彼は被害者、加害者は僕の父、だから僕は父の変わりに一生かけて償いをしていくつもり。」とまで言っている。一方岡田はそんな霧人を無視して校則も破りまくりな問題児でカッコ悪い!と情報源である襟川は悠李に告げるのですが、その事実を知った悠李は反抗的な岡田の生活態度が年相応なモノに対してどうも「作った」感満載の霧人に違和感を覚え、自分の思考が岡田寄りである事に気づき狼狽します。
悠李の心は既に岡田に傾いていたのですね。悠李を大切に思う岡田に対して悠李もなんだかんだ岡田を憎からず思っている!というかもう無自覚に岡田に好意を持っちゃってる悠李。捜査しに潜入してちゃっかり恋愛しちゃうなんて(笑)でも岡田可愛いよ~。俺様だけどやっぱり中身は10代の子供らしい強がっちゃってる感じとか。
岡田は修には見捨てられたも同然だと想いなげやりになっていた訳ですがそんなことはなかったのです。
結果としては悠李が「お茶会」に参加し襲われそうになり岡田が救出を試みるも失敗。やはり主犯であった霧人に二人とも殺されそうになるのですがそこでバーンと悠李の上司と才門修が登場!で事なきを得ます。
自分の悪行が露呈した後の霧人の恥態はザマァとしか言い様がない。本当にとんでもないヤツだったわ。けしからん。
岡田は父から見捨てられていると思い込み愛されてない自分の言葉など父は信じてくれるはずがないと悠李に話したのですが悠李は「思い込み」は捨てて「行動」しなければ。と岡田にアドバイスしていたのですが、やはり修は岡田を見捨てていた訳ではありませんでした。岡田の言葉を信じてこうやって駆け付けて来てくれたのです。
霧人は発狂しながら尚も岡田を蔑む言葉を吐き自分を正当化しようとしますが、父修は二人とも平等に愛してるのだと告げたのでした。
失望と絶望の狭間にある霧人とは裏腹に岡田はもう言葉もでない位感激した事でしょう。自分の背中を押してくれた悠李に感謝
して、また孤独を受け入れ荒んでいた心は修の岡田に対する「父親」としての愛を認識する事ができ感無量。
今までは修自身岡田にどう接していいか分からず結局こんなに時間が過ぎてしまったがこれからは岡田にも目をむけいけない事はしっかり怒る「父親」になると告げます。
事件の解決と共に、どんな事をしても感傷してくれない父に憤り辟易し諦めの境地にいた岡田を救ったのもまた悠李でした。
悠李お見事!お手柄!よくやった!刑事としても、岡田の学友としても素晴らしい働きでした。
でもこの二人、学友の枠には収まらない感情が互いにあるわけで・・・
悠李が刑事だという事実を知ってもその気持ちが変わる事は無く・・・
時は多少流れ、仕事上がりの悠李に来客の知らせが。そう、岡田が訪ねて来たのです。
悠李を手込めにする為に(笑)違うか
岡田は東大への合格が決まりその理由は警察官のキャリアになるためだと告げます。これから、そして卒業後も悠李と時間を共に共有したいのだと。
ベタだけど良い!良いよ~!ここで二人は晴れて恋人同志になるのですが身体の関係は更に時が過ぎ岡田の20歳の誕生日
です。あの事件の後事の顛末を父から聞いた岡田は悠李が政治的圧力から自由に捜査できなかった事実を、そして命令を無視して事件解決に尽力した事実を知り悠李が刑事として精一杯頑張れる様に「警察の頂点にたってみせる」と宣言します。
こんな口説き文句反則よね~!岡田かっこ良すぎ。悠李羨ましい。でもあえて言えば先輩目線のヤサグレてた時の岡田のキャラがワンコキャラにシフトチェンジしちゃってるのが、残念です。や、ワンコで素直な品行方正岡田も可愛いんだけどね。素直になれない不器用岡田が私は結構お気に入りだったのです。
岡田が訪ねて来た時に悠李がつい「昴先輩」と言ってしまった時は岡田同様キュンとなっちゃいました。
悠李も岡田も可愛い!
これからの岡田が警察官となって悠李と共に働くっていう続編がひたすら読みたい私です。
作者さんが後書きで書いてらした元ネタの少女漫画を私は知らないのでその辺の評価はしかねますがとても楽しめる1冊となりました。


