ジブリ映画は今まで機会に恵まれなかったりして、あまり映画館で見ていなかった。
子供が小さいせいもあったが、上の子(♀)は3歳くらいからアニメなど集中してみるタイプだったのに対して、下の子(♂)はもうすぐ4歳なのだけど、アンパンマンとか15分程度のものでも、ちょっと飽きるとすぐ別のことに興味を持ってしまうタイプので、映画館は難しいかな、と思っていた。
ただ、好きな「千と千尋の神隠し」だけは下の子もビデオで繰り返し見ている。
これは上の子も同じで、もう20回以上見せられているが、自分もジブリ作品の中では最高の評価をしているので、20回見ても飽きはしない(セリフも覚えられるくらい・・・子供と絵コンテ集を見ながらみたりしていた)
といってもトトロの方は上の子と違ってあまり繰り返しみたいと思わないらしい。(それでも数回見たが)
で、今回の話は事前に聞いている限りはトトロっぽいし、駄目かもな、と思いつつ、まあ下の子が飽きたらそりゃつまんなかったとあきらめて映画館を出るのも仕方ないと思いつつ、ポニョを見に先週末としまえんのシネコンに行った。
とりあえずポップコーンなど菓子を買い込んでいったおかげもあろうが、なんとか2時間近くもった。子供二人はそれなりに楽しめたようだ。
で、自分としての評価は・・・まあ佳作という感じか。ジブリ美術館でコンパクト版みせるといいかも、ともおもったりしたが。
すでにネット上でいろいろ語られているし、あんまり分析とか好きではないので、ここで語るつもりはないが、前知識としての人魚姫というのはまあその通りで。
例の歌は確かに耳に残るが、内容的にはディズニーの「リトルマーメイド」の『パート・オブ・ユア・ワールド』のほうが同じ内容を歌っていて名曲だと思う(何度聞いても泣ける)。
別に比べるほどのことはないけどね。ようするに「いいないいな、にーんげんていいな」って内容なんだが。
で、絵は非常に美しく、原画に彩色したかのような手書き感は今までの作品と比しても最高の作品だと思う。
それだけに、後半のストーリー展開があまり気に入らない。
といっても、絵本的な唐突さ・破綻・突拍子もなさ、というのは別に気にならない。それよりも、セリフで「試練だ」とか「これで救われた」とか語ってしまうのは・・・今では安っぽいゲーム的・ロープレ的でどうにも引いてしまった。
あと、フジモトはキャラ的には最高なのだけど、声優・所ジョージは個人的に最悪であった。別に所さんが嫌いじゃないのだけど、これに限っては別の人にやってもらいたいと思った。
はてブでクトゥルー神話に結びつける分析をしていたエントリがあったはずだけど、映画見る前だったのでタイトルだけで読まなかった。
で、そのタイトルだけ覚えていて映画を見たら、あれ、これクトゥルー神話というより諸星大二郎のクトルーちゃんそっくりだな、母ちゃんも顔でかいし、夜の魚(陸の魚になる奴)とか古代魚なんかも出てきたりしていろいろ類似点大だな、と思ってしまったら、ちょうど昨日見た伊藤剛氏のブログで
『崖の上のポニョ』見てきました。 (伊藤剛のトカトントニズム)
に
ポニョとその両親て、クトルーちゃん@栞と紙魚子とその両親みたいじゃね?
と、同じ感想を持たれた旨が書かれていて、シンクロニシティがうれしかったりしてw テケリ・リ~
さすがにフジモトキャラに見られる手塚っぽさの指摘は、言われてなるほどと思ったんだけど。
海版トトロともいわれているようだが、まあ確かにもう陸上にファンタジーを求められないのかな、となれば、まだ未知の領域が大きい深海の世界に向かおうというものだ。パンゲアに夢を求めて老人と海へ。
で、諸星大二郎つながりというわけではないけど、先日の栞と紙魚子の新刊から間もない別の新刊で非常にうれしい。
- 未来歳時記・バイオの黙示録 (ヤングジャンプコミックス)/諸星 大二郎
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諸星氏の作品の中でもダーク未来なSF系は古くから数多く描かれている。
その頃からある程度共通の世界観を維持しているけど、エピソードスタイルにしても、中国奇譚系の五行先生や日本の神話・民話系の妖怪ハンターのようなシリーズ型はあまりなく、SFではショートショートのスタイルが多い。
以下の2つも、ある程度世界は繋がっているが、ストーリーとして繋がるシリーズとまではいえなかろう。もちろんお奨めであることにかわりはないのだけどね。
- 私家版鳥類図譜 (KCデラックス)/諸星 大二郎
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で、今回も最初はそうだったのかもしれないけど、幕間劇という形で加筆されることで、2000年あたりの作品から最近のまでを1本の線で結んでいる。
最初は妖怪ハンターのひとにぐさSFバイオホラー?って感じで、いつものSF短編かと思って読み進める内にベースが繋がっていき、最後は同氏の初期の名作、生物都市(自分が小学生の時に同氏の作品として初めて読んだ作品だ)+みんなでぱらいそさいくだ、を融合させたような展開で、「バイオ人類の新しい世界」へ昇華され完結している。
スティーブンキングの作品「呪われた町」で吸血鬼になった彼女のセリフに号泣した自分としては、"そっち側"へ行くことの恐怖や不安と解放への期待とが交錯するこの作品は非常にお奨めである。
それにつけても、毎度ながら諸星氏の幅広い作品スタイルに共通する女性の独特な色っぽさにまたも魅了され、同時によく現れる少年の寂しさに泣かされた。キャスタ&レポーターのマスミ増殖に苦笑いも。