個人的にiPhoneは爆発的に売れるとは思ってない。

魅力的でないというつもりはない。ブログなどを中心にPC親和性の高い人にはそこそこ売れると思うし、自分もまあ余裕があれば買いたいかな、と思う。


しかしいろんなブログやニュースサイトなどで見られる、「ガラパゴス状態を打ち砕く黒船」とかそういう意見には賛同しかねる。
CNETのオンラインパネルディスカッション「iPhone 3G、日本のモバイル業界を変えるか 」でも同意できるのはこの人 くらい。他はもう持ち上げすぎっつーくらい。

いや、もちろんケータイサイトを企画する仕事もする自分にとっても、新たなコンテンツプロバイド先が1つできるというのならそれはありがたいと思うのだけど・・・
何より、一般の携帯利用者にどの程度アピールするかな?という点では非常に難しいと思う。少なくとも短期的には。

で、多くがiPhone待望という中で、まあ釣りっぽいタイトルで目を引いたのが

■それでもiPhoneが売れない9つの理由 (デジタルマガジン)

という記事があって、その論拠に賛同できそうかな、と見てみたが、どうも説得力がない。

1つ1つ見てみよう。


1.FeliCaなどの電子マネーに対応していない
あれば便利で使うだろうが、この機能自体がないから購入を躊躇する人は少なかろう。


2.ワンセグがない
これも1に近いものの(実際見ることはまれであっても)、最近の機種でデフォになってるだけに、少し影響はあるかも。


3.プランに強制加入というのが気に入らない
実質フルブラウザ利用を考えれば安いくらいだし、他のキャリアと比較して高いというわけではない。パケホ利用者の利用額平均8900円だし、通話で1万前後も妥当。それでも、PCフルブラウザまで含めたパケホ”しか”選択肢がない縛りはユーザを限定するとは思う。特に2台目需要はiPod touchに流れてしまい、難しいだろう。


4.カメラが使えない
これは妥当な指摘だが、付いてないわけではなく、更に音楽再生を軸とすればバーター可能な妥協点だろう。


5.本体が高い
これは他機種と同様だから(906が高いと同じ)これを理由に売れないという論拠にはならない。欲しい人には魅力的な値付けだろう。


6.キャリアがソフトバンクモバイルである
辺境とかでなければカバー率は極端に違わないし、販売台数への影響は微々たる違いであろう。それに1の「都市生活者云々には必要」とかの論拠と矛盾する。ドコモだったら(まだドコモも発売する可能性をにおわせてるだけど)iモード搭載その他いろんな縛りが出てきそうだし、PCネットの親和性があるSBが妥当だと思っていたし、その通りになった。


7.通信がもたなさそう
「売れたらパンクしそう」だから売れないというのは理由にならない故に論拠になってない


8.Appleの初物は危険
Appleにかぎらず昨今の携帯の多くが不具合を持ち、ソフトウェアアップデートで対応している。
ハード的な不具合という意味では確かに最初のiPhoneも不具合があり、更に3Gで薄くなってリスクは高いだろうが、だから売れないという理由にはならない。

9.バッテリーが取り外せない上にサポートがダメ
バッテリー交換は店だが保障対象外バッテリーの交換は1週間はかかるというのはまあ本当にかかったら痛いだろうが、さすがに日本でそれはないだろう。



とまあ、手放しに賛同できるほどの説得力がないのだ。

しいていえば2,3,8,9だが、これを持って売れない、と断言するような決定的な要因ではなかろう。


だけど、やっぱり自分は爆発的とまでは売れないと思う。


結局、ウィルコムのZero3とか京ポンとかイーモバイルのEM-ONE等々、昨今のインターネットマシン・スマートフォン・通話機能付きPDA、その他呼び方はいろいろあろうものの、こうした狭いシェアの中ではヒット商品、といえるくらいになると思うけど、ケータイ全シェアからすれば・・・やっぱり小さいと思うわけで。

もちろんiPhoneとWindowsMobileを比較すればインタフェースその他優位性は段地だと思うのだけど、あくまでもそれは普通のケータイとして、じゃない。

つまりPC(Mac含む)オーナーのサブマシン的なツールとしては大きいけど、多くのケータイしか使わない主流派にとっては、むしろ公式のメガアプリとか遊べないの?とか、キーはやっぱりボタンでないと高速入力できないとか(絵文字とかどうなのかね?)、いくらiPhoneのUIがすごくても、そこで購入しようとする人はいない(最初に購入する)んじゃないか、というのがあるわけで。


じゃあどのくらい売れそう?というのはまだみんな予想してないんだが・・・まあ正直わかんないよね。

とはいえ適当に予想してみると・・・


MacユーザでiPodユーザがコアターゲットで、黙ってても買ってくれるはず。
次のメインターゲットはPCオーナーでもiPod利用者で、更にiTMSからDLでガンガン買っている人。これは結構年齢層が高くPCにも親和性のあるリッチ層なので、こっちもほっといても(2台目とかで)買ってくれそうだ。

と思ったら、どうやら音楽配信は直接できず、Wi-FiでiTMSに接続しなくちゃいけないという話で、こりゃ非常に大きな阻害要因だ。むしろこれができれば売れるかも、と思えるんだけどね。米国はやらないけど日本ではやるってこともあるんじゃないか。ケータイの着うたフルを切り崩す為には。


うまくして上記のユーザの大半が買ってくれたとしても・・・せいぜい1年で50万台くらいいけば御の字じゃないか?100万台売れればすごいと思う。

米国で最初のiPhoneが出た時は2ヶ月で100万台、現状600万台というのは、もちろんそれなりにヒットだろうけど、ケータイ市場を塗り替えるとまではいかないだろう。

これはPDAに親和性が高くてスマートフォン需要も高い米国だから、というのもあり、日本ではPDA的な文化はマニアのもので、とても小さい。

既存ケータイにPDA的要素が付加されるならユーザも使うが、PDAに通話機能が付いたといっても飛びつくユーザはかなり限定的だろう。


業界トップのシャープの2007年出荷台数が1000万台超だし、ドコモ・au・SBのシェアを5:3:2と考えればおおざっぱにシャープのソフトバンク端末200万台として、半分の100万台もいけばそれこそ万々歳だろうが、じゃあそれがケータイ業界を変えられるか、といえばそんなはずもなかろうと。

(ドコモのBlackberry端末より売れるだろうことは確かだと思う)


追記:日本のスマートフォンのシェアは約3%だそうで、1億台の3%とすれば300万台、まあそれなりに大きくなったとはいえ、まだまだだろう。


ここでも伏兵として、ドコモでも販売されれば、これが1つのプラットホームとして大きく変わるかもしれないのだけど。


で、今のソフトバンク利用者の多くは学生さんのようなあまりお金がない人か企業利用であろうことを考えると、期待できるのはiPod利用者でソフトバンク利用者か。その辺に訴求していく(ケータイとiPod両方の買い換え時のサービス等)とか方法はあろうと思うけど、どこまでやってくれるだろうか。

MacやiPodのようなある種殿様商売型ではダメだと思うし、iPod成功要因がコンテンツ(iTunes+iTMS)あってこそ、というのがわかっていれば、と思いたい所だけどね。


長期的には、上記のように直接DL購入ができるようになることで、PCで買いにくかったダウンロード販売がケータイで楽になり、今の着うたフルみたいな殿様商売を徐々に脅かす、とか、アプリの充実とかいうコンテンツ蓄積要素もあろうけど。

あとは既存のケータイサービスやコンテンツがどこまで「iPhoneユーザは儲かりそう」と本腰入れて参入してくるか、というところじゃなかろうか。


で、上記記事のコメントにAppleファンらしい人が「イヤ売れる!」と書いたりしてるけど、むしろAppleファンは売れて欲しくないのじゃないか?
「この良さがわかってる人だけ買えばいいんです」というスタンスが一番だと思うわけで。
まあそれを超えるのがキャズムwっつうんでしょうが。