今回、引用させて頂いたのは「バイエンス」「食の雑学総集編」から、冒頭の「アルコール」に関する部分です。


バイエンスは地球外生命体から地球人を見た視点で色々と語ってくれるチャンネルです。声優さんの心地よい声に反して、なかなかに皮肉の効いたドライな構成。ハマります。

近年、アルコールに適正量などなく、一滴も飲まないのが最も良い。という研究結果が出たと話には聞いていたのですが、大人の事情なのか、なかなか表に出てこないので、知らない人が意外と多いなと思っていました。

 

バイエンスらしく? 淡々と語っている動画を見つけたので、ぜひご覧ください。アルコールだけでなく、甘いものや、お肉など、食の雑学が詰まっています。

 

 


ここでは「お酒」に関する雑学の一部を抜き出します。

 

 

口から摂取したアルコールは、20%が胃から、残りの80%が小腸から吸収され、数10分ほどで脳に到達します。
ここでアルコールは神経細胞にあるギャバ受容体を活性化し、リラックス感を覚えます。また中脳辺縁系や側坐核でのドーパミン放出が促進され、快楽のシグナルが脳内を埋め尽くします。さらにアルコールはNMDA受容体という部位を抑制し、短期的な記憶障害や判断力の低下が生じます。
この複雑な脳内反応こそが酒の酩酊感の正体です。これは諸刃の剣であり、強すぎる快楽は人を依存させます。

20種類のドラッグの依存性や害の程度を比較した研究によると、お酒の快感の強さは、ヘロインやコカインについで第3位。
その依存性は、20種類中第6位と極めて高いスコアです。

 

画像
The Lancet

 

 

画像が小さくて見えにくいですが、アルコールよりもタバコの方が下位にあります。ここらへんに企業の力関係が垣間見えますね(薄ら笑い)

 

 

さらに酩酊感の影響、人の社交面に与える影響、医療コストから算出された 社会的害に至っては、ヘロインについで堂々の第2位です。
アルコールは科学的には超一級の麻薬であり、社会にとってはただの迷惑です。

アルコールという毒は肝臓において2段階のプロセスで分解されます。
第1の反応は、アルコール脱水素酵素による代謝。お酒に慣れた人の場合は大量の飲酒において別の酵素系もこれに参加し、アセトアルデヒドが生じます。

ついでこれが、アセトアルデヒド脱水素酵素により酢酸に代謝され、生じた酢酸は筋肉などの組織に運ばれてさらに処理されます。
そしてこの経路の中間帯であるアセトアルデヒドが実に厄介で、この化合物は人体にとって有毒であり、顔面紅潮、心拍数増加、吐き気、頭痛などの悪酔いを引き起こすとともに、発がん性まで有しています。

せっかくのアルコール無毒化プロセスなのですが、その中間帯が強烈な毒とは実に残念。このような毒物を毎日摂取するのですから、人はもちろん壊れます。

長期的な大量飲酒により様々な臓器に影響が出ますが、特に悲惨なのが肝臓です。一例を上げるとアルコールにより損傷した肝臓は毒物の分解が困難になり、これが脳へと達して脳機能を壊すケースがあります。これは肝性脳症と呼ばれ、昏睡、錯乱などの症状を引き起こし、場合によっては死に至ります。
他にも長期にわたる大量飲酒は、うつ病のリスクを増加させますし、胎児の発達に悪影響があるため、妊婦にとって、お酒は強烈な毒です。

 

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ちなみに1日1杯から2杯程度の適度な飲酒であれば心疾患のリスクを下げるという意見を聞いたことがあると思うのですが、これには注意が必要です。というのも過去のアルコールと健康増進に関する研究には、統計的な不備があり、これを修正すると健康増進効果は消失するという報告が2016年になされています。
さらにダメ押しとして、195の国と地域のデータを基に酒の健康被害を調査した2018年の研究においては、お酒の健康被害を最小化する飲酒量がゼロと結論付けられました。
これを分かりやすく言い換えると、適切な飲酒量など存在しないとなります。研究グループはこの論文によって現在のアルコール規制ポリシーに異議を唱えており、世界中で再検討をする必要があると主張しています。

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というわけで酒は百薬の長ではなさそうです。現代の科学は酒は一滴でも毒だと主張しており、適正飲酒という酒飲みの安全地帯を科学の論理で塗りつぶしつつあります。

依存性の麻薬であり、人体にとってもそして社会にとっても実害が大きすぎる酒。あなたたち人間は、この魔の液体からの解放を望むのでしょうか。答えはきっとNOでしょう。
アルコールがもしこの世から葬り去られたとしても、あなたたち人間はその代替品を見つけ出し、リスク覚悟で摂取することでしょう。あなたたち人間のリアルはシラフで生きるには残酷すぎるのかもしれません。
だからこそ人類は、酒がもたらす麻痺と酩酊を強く求め、一部の人々はこれに殺されます。人類に最も愛された毒。それがアルコールの正体と言えそうです。

 

 

「酒は一滴でも毒」
酒飲みにとって、これほどショッキングな研究結果はないでしょうね。
ただし酒造会社の権力は計り知れないです。なにせお正月の朝から堂々とCMを打っているような企業ですし、そのお値段はミネラルウォーターよりも安価だったりします。
タバコがあっという間にテレビから撤退させられたのに対し、お酒のCMは今でも当たり前に流れています。

しかし法律で禁止されたとしても、人はお酒の代替品を求めるでしょうし、それ以前に飲酒が法律違反となる未来は想像できないですね(^^;
過去、禁酒法がマフィアを肥え太らせただけに終わったように、人にとってのアルコールはなんとしてでも手に入れたい麻薬なのでしょう。

 

「適正飲酒などない」
これが現代科学の論理であり、アルコールは依存性物質です。
その事実を知った上で、飲酒をやめるか続けるかは本人しだい。
昔の人にとってのお酒は、神事の時だけ口にする特別なものであり、決して毎日飲むようなものではありませんでした。

人類は毒を嫌いながらも毒を欲すのですね。
無添加の食品を求めながらも、アルコールとともに食事をする。このアンビバレンツ。愚かに見えつつも、人間ってそういうものとも感じます。

毒を食らっていても、長生きする人は長生きする。
なにが良かったのかは、終わりの瞬間まで分からないのでしょうね。