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こんな経験ないかな。

見捨てられ不安があるような気がする。
他人との関係が上手く築けない。依存しすぎてるかもと思ってしまう。
妙にドライにふるまってしまう。親しみを表現することが苦手。
友人関係や恋愛関係が長く続かない。
他人のことを信用できない。優しくされると逆に勘ぐってしまう。
キブアンドテイクじゃないと居心地が悪い。甘えられない。
関係が深くなってくると逆に不安になって遠ざかってしまう。

愛着障害って聞いたことあるだろうか。愛着はアタッチメントって言うんだけど、上記のように思ってしまう人には、このアタッチメントに問題がある場合があるんだよね。
愛着障害については普通五歳くらいまでの子供の問題を指して言うらしいんだけど、大人にもその後遺症というか違った形で残ってる場合があるみたい。

そういう場合は愛着障害とは呼ばずに、大人になるまでの色んな問題によって呼び方は変わる。
アダルトチルドレンとかもその一種だろうね。

 

愛着 アタッチメントとは

愛着とは「情緒的なくっつき」のこと。動物が特定の対象に対して形成する特別な情緒的結びつきのこと。

赤ちゃんが生命を保つためには、親からおっぱいを貰ったり、外敵から身を守ってもらったり、体温を保つために親にくっついていたりしなきゃいけない。親に頼るってのは生存本能。

もちろんそれだけじゃなく、情緒的欲求が大事になる。情緒的にくっついて、それが維持されることでの安心感・安定性が大切になる。
たいていは母親が対象になるわけだけど、その特定の人との選択制が維持され続けることが大切なわけ。

おなかがすいた、おむつが濡れたっていう不快感を取り除いてくれる相手。その相手と赤ちゃんの間には信頼関係が築かれるし情緒的な結びつきが出来る。愛着が形成される。
赤ちゃんの発信行動があって、母親のボンディング・応答反応があって、結びつきが深まっていく。

愛着が失われると(死別や離婚、親が逮捕されたとか)子供は抵抗、絶望、抑うつ状態、脱愛着(ギリギリのなかで愛着をいったん切り捨てる)という過程を経て現実に適応していく。
その後に別の保護者との愛着関係を築くこともできる。祖父母とか、里親、施設職員とかね。

大人の愛着障害って言葉があるけど、これはDSM-5(アメリカ精神医学会による診断・統計マニュアル)では正確な言葉ではない。
明確な診断基準があって「大人への愛着が持続的に欠落する社会的なネグレクトを受けている」などの厳しい基準がある。なので大人が愛着障害と診断されることはほとんどないそう。

ってことは、愛着障害に苦しんでると感じる大人のほとんどは、愛着の問題はあったけど本人の資質が苦しさに影響しているってことになるみたい。

とはいえ、愛着を持ったり育てていくことは、大人にとっても社会生活を送る上で大事なこと。とくに生きづらさを感じている人にとっては大切なんだよね。大人でも愛着障害を克服することで色んな良い面がある。



DSM-5での愛着障害の分類

①反応性アタッチメント
養育者に対して抑制された情動に引きこもっている状態。大人に欲求しない子供。

①つらくても養育者に愛着を求めない。甘えない。感情表現が乏しい。
②つらくても養育者の保護や愛情の言動に反応しない。反応が希薄。

こころのコントロールが上手くできない。甘えられないし、優しくされるのを嫌がったり、用心深くて他人を信用していないように見えたりする。また怒りや不安、悲しみがふいに現れる。自閉スペクトラム症(ASD)に似ていることもあって見分けがつきにくかったりする。

②脱抑制型対人交流症
愛着が選択的になされていない。愛着がきちんと形成されていない状態。

①見慣れない大人に積極的に近づき交流する子供。過度な交流にためらいがない。過度になれなれしい。
②不慣れな状況で親と離れても、親のことをあまり確認しようとしない。
③見慣れない大人にためらいなくついて行こうとする。

大人の注意をひこうとする一方で、子ども同士の関係は築きにくい。一見すると「注意欠如・多動症(ADHD)」の特徴に似ている。

 

愛着障害の要因

①養育者からの虐待
身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクト。
重度のネグレクトは、愛着障害に関係すると言われてる。ネグレクトとは、育児放棄や育児怠慢のことで、食事を与えない、不潔にする、病気やケガをしても病院に連れて行かないこと。

あと、親の機嫌によって養育環境がころころ変わるのも良くない。身体的虐待の後にやけに優しくなったり(DVだね)。家では暴力をふるうのに人前ではやけに優しいとか。発言がその都度変わるとか。アンビバレンツな言動をされ続けることで、子供は親を信頼出来なくなる。

②愛着の対象がいなくなった
愛着対象を剥奪された、離別したってのは、愛着障害の原因になる。
ただ前出したように、親じゃなくても祖父母など他の人との愛着を形成していくことは出来る。

③複数の養育者
いわゆる、親の死後の親戚でのたらいまわしってのが、一番分かりやすいかもしれない。愛着形成には特定の人との深く長い関係が必要なので、しょっちゅう養育者が変わる環境では、そりゃあ満たされないよね。

③他の子どもと差別されてきた
例えば、親が長男ばかりをひいきしていたとかね。兄弟のなかで特定の子供ばかりを親が可愛がったり甘やかしていたとしたら、そして自分には冷たくて厳しかったら、その子には劣等感が生まれたり、自分には価値がないと思ったりするよね。

 

愛着問題のチェック方法(大人)
アダルトアタッチメントインタビューによって診断する。一時間ほどかけて行う質問形式。四つの型に分けられる。

①自律・安定型
乳児の安定型に対応し、親の肯定的側面・否定的側面の両方を支持する具体的なエピソードを挙げつつ、一貫した語りを行う。

不安が強かったり他人を避けることは少ない。他人に愛されたり尊敬されることに疑いがなく、ある程度、自分には愛される価値があると思えている。
他人を信頼できるので親密な関係を築ける。必要な時に他人に頼ることもできる。

②とらわれ型(不安・アンビバレント型)
乳児のアンビバレント型に該当し、質問に無関係な詳細も含んだ長い語りを示し、親に対する怒りを表すことが多い。

不安が強いのが特徴。他人と親密になりたい気持ちが強い。親しい人をそばに置いておくことで自分の不安を解消したいと思っている。
逆に相手からの要求や依頼には応じないことも多い。
不安を分かってほしい、どう思われてるか不安、必要とされてるか不安。
見捨てられること、必要とされないこと、拒絶されることをとても怖がる。

③拒絶・回避型(愛着軽視型)
乳児の回避型に該当し、親を理想化して語るが、具体的なエピソードで裏付けられない。

他人を信用できない。ただし、とらわれ型みたいな不安は持っていない。
親密になることを避けようとしたり、近づいてくる相手のことを嫌になる。自分はドライで一人でも大丈夫と思っていることが多いので、他人からはある程度自信があるように見える。
実際は、他人と深く付き合わないことで感情を乱されないようにして、自分を守っている。

④恐れ・回避型(未解決型)
乳児の無秩序・無方向型に該当し、未解決のトラウマや喪失を抱えており、亡くなった親がまだ生きているかのように語るなど思考の誤りを示す。

相手から嫌われたらどうしようという不安と、相手と親密になりたくないと回避する両方の側面を持っている。一貫した行動がとれない。
このパターンを持っている人は、自分がそうされた経験を持つ人が多い。
暴力を振るわれた後に優しくされる経験をしたとか、信用してた人に裏切られたとか。そんな経験を何度もした人。
どんな関係が自分や相手にとって心地いいものなのか、適切なのかが分からない。相手に対する自分の気持ちも分からない人が多い。

 

大人の愛着障害の特徴・症状

『注意』この特徴や症状があることで愛着障害があるというわけではない。

①愛着対象からの分離不安
親密な相手から離れることに不安を感じる。

②過度にいい子でいようとする
他人の顔色を気にしすぎる、なんでも引き受けてしまう。自分を守るための生存戦略とも言えるので、一概に悪いこととは言えない。

③自分で選んで決めることが難しい
相手の顔色を窺って自分の意見を言わなかったり、相手が望む選択ばかりしていると自分の基準で選べなくなる。何が必要か何がしたいのか分からなくなってしまう。

④こだわりが強い
大切な人に対してこだわったり執着しやすくなる。自分のこだわりを守らないと気持ちを落ち着けることが難しくなる。

⑤自分を傷つける
満たされて来なかった気持ちを解消するために、自傷行為をしてしまう。

⑥いろんなパートナーと関係を持つ
誰かと深く長く付き合うのが苦手。「基本的信頼関係」を作って維持出来ない。両想いになった途端に相手の気持ちへの応え方が分からなくなるので、色んな人と関係を持つ。一種の自傷行為とも言える。
 

愛着障害を克服することでの利点

①人を信用できる
人に甘えたり受け入れてもらったりすることは、大人でも大事なこと。そのやり取りのなかで信頼関係を築いていける。

②自分の気持ちを相手に伝えられる
常に思い通りになるわけじゃないけど、気持ちを伝えることで相手とのコミュニケーションをとる能力が上がっていく。

③一人でも大丈夫になる
大人になっても新しいチャレンジで挫折したり、人間関係で傷ついたりもする。でも自分には見守ってくれる人、何かあったら助けてくれる人がいるって信じられたら、安心してまたチャレンジできるし傷ついたこころを癒すことが出来る。

戻って来れる安心できる相手のことを「安全基地」って言う。
何かあっても自分には安全基地があるって思えると、常にその人にくっついていなくても一人でチャレンジしていけるようになる。


大人の愛着障害の克服法としては、フォーカシングがあげられる。
アメリカの哲学者・臨床心理学者ジェンドリンが考えた心理療法。
基本になるのは「自分の体に尋ねること」。マインドフルネスに近い。

身体は心よりも素直だから自分に正直に答えやすい。
「自分の体がどう感じているか」ということから「自分のこころは何を感じているか」に発展させていける。
自分の気持ちや考えを大事にしてあげることで、主体性が育っていくと言われている。

とはいえ、なにより「安全基地」を自分の中に育てることが一番の解決法だよね。子供の頃に与えられなかったり不足していたものを、過去を遡って得られるはずもないのだし。

うむ。「退行」って方法はあると思う。子供の頃に好きだったことを思い出したり、童心に帰るって感じだろうか。ただまあ、大人の皆さまはいつでも童心に帰れるわけじゃない。大人には色々と世知辛いことがあるんで(笑)

ただまあ、大人の愛着障害ってものがあるんだなーと知っておくことは、ちょっと生きにくさを感じている人にとっては悪いことじゃないと思う。
親ガチャを嘆くためじゃなく、死別を恨むためじゃなく、大人になってからでも「安全基地」を手にすることは出来るんだって知るために。

「安全基地」ってのは、成長していくと自分の中に持って出歩けるものになる。大切な人、信頼できる人が遠くにいても、そこに繋がった「安全基地」が自分の手のなかにある。なので一人で色んなことに挑戦していける。

完璧な母子関係なんてものは、まあ存在しないよね。どっかが欠けてる。
その部分を友人だったり恋人だったり、尊敬する大人で補っていくわけだ。

ぶっちゃけ日本人って、アミニズム(万物に魂が宿っている)と考える国民だし、身近にある自然のなかに自分の守護神がたくさんいるわけだよね。
狭い親子関係に視点を固定しなくても、空を仰げば、山を眺め見れば、自分を見守っている神様がたくさんいるわけだ。まあ、そういうふうに思えない日もあるわけだが(笑)

 

ちょっと話は反れるけど。
「ライナスの安心毛布」って知ってます? スヌーピーに出てくるライナスって男の子。彼がいつも持ってる毛布のことなんだけどね。
あれと愛着障害って関係あるのかなーと思って検索したけど、まあ関係ないかもねって言われた(笑)

ただわたし、ライナスの気持ち分かるんだわ(笑)
わたしの場合はタオルケットを抱えていないと眠れない。念のために付け加えるけど、抱えているのは眠る時だけだよ(笑)
洗い立てではなく、二、三日使ってちょっとクタッとした頃の肌触りがいい。まさに安心タオルケット(笑)

わりと早く大人と別の部屋で寝かせることの多い外国では、日本よりも「ライナスの安心毛布」事例が多いみたい。毛布だけじゃなくて、テディベアなんかも同じかな。

毛布やぬいぐるみ。これを問題視して子供から引っ剥がそうとする大人がいるんだけど、成長すれば眠る時だけとかに限定されていくから、親はただ見守りましょうね。何もかも十分に満たされている人なんていないんだから。
その、もふもふ、ふわふわが、精神安定剤がわりなんだしね(笑)

ま、まずは自分が安心できる場所(物理)を確保すること、安心できる物を確保すること。そして安心できる人間関係を築くこと。
帰っていける場所があるから、安心して冒険にも行けるわけだし。

長い時間をかけて培った深い信頼関係のある人。
それが親だったらとても幸せだと思う。親じゃなくても、別の人の顔が浮かんだら幸せだ。大人になってからも築いていける関係なのだから、いま誰の顔も浮かばないって人も育てていける。

まずはタオルケットを抱えて眠ろうか(違うだろ)