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三十年前から書き始めたこのシリーズも今回の同人誌出版で一区切りです。
現在。入稿したところ。三月二日に納品予定です。

絵師さんにオーダーメイドでお願いした表紙絵。タイトルを変えてまた使用させてもらいます。

本編『ONE』いのちのクリムゾン 死のトパーズ は、三十年前から六年かけて初稿を書きました。その後、四半世紀ほったらかしてから推敲をはじめ……続編も書き、外伝も書き。

ONE 続編 表紙サンプル

このシリーズは主人公カツミ(上のイラストの彼)の成長譚なわけですが、二人三脚で校閲して下さった師匠に、さんざんダメ出しを食らいつつ(笑)続編。二か所は褒められたのでピックアップしときますわ。少ないし(笑)

 

 夏の虫が庭園に配された樹々から命を叫ぶ。天空に輝く細い環(リング)が、その声を受け止めて揺らぐ。
 儚く消えるものと永遠にすら見えるものは、そうしていつも惹かれ合い、しかし交わりは一瞬で終わる。違う時を生きながらも同じ時を刹那に共有し、そしてまた離れていく。
 落ち切ってしまうモアナを留めようとでもするように、大気は世界の全てを黄金色に染めていた。
 森も湖も、はち切れんばかりに叫ぶ夏の虫も同じ色を映す。やがてそれらが薄れて闇の中に戻っていくのを惜しみながら。

 

 ──いのちのクリムゾン。死のトパーズ。
 やがて虚空となりゆく相手を見つめ、生死の狭間がゆらりと光る。クレイルの脳裏にカツミの送ったイメージが『映し出された』。
 真っ先に春の訪れを知らせる花。白い小鳥が一斉に羽ばたく音。甘い香が風に乗る。その香を纏って白い群れが青空に舞う。
 白い花の洪水。白い花の渦。漆黒の星空を映す水鏡(みかがみ)に、白い花が揺らぐ。
 冷やされた夏の夜は薄明の空に蒼く染まる。熱を戻し、熱に満ちる。
 安息の闇は希望の光に。そしてまたトパーズの黄昏に。
 時は循環し、時は渦巻き、そして時は波紋を広げる。透明な水の鏡に、想いを映す花を浮かべて。

 

同人誌の発送がひと段落したらウェブに再掲載の予定だけど。
多すぎてめんどい……(おい)