翠林堂
映画 ハゲタカ(2枚組) [DVD]/大森南朋,玉山鉄二,栗山千明

¥5,040
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世界で最も権威ある放送番組国際コンクールの1つである「イタリア賞」をはじめとして、数々の賞に輝いたNHKドラマ「ハゲタカ」の映画版です。舞台設定はドラマ版から4年後の日本ですが、ドラマ版を知らないままいきなり映画版を見ても楽しめました。映画版が面白かったので、ついドラマ版にも手を出してしまったほどです。
ドラマ版と映画版を比較すると、やはりドラマ版の方が尺が長いぶん、ストーリーに深みがあるように思います。両方を見る余裕がある方には、ドラマ版→映画版という順番での視聴がお薦めです。評価は、ドラマ版が星5つ、映画版が星4つ。
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「ハゲタカ」と呼ばれる外資系ファンドの日本法人代表として名を馳せた鷲津政彦(大森南朋)は、旧態依然とした日本のマーケットに絶望して、海外で暮らしていた。
一方、経済成長を続ける中国では、日本企業が持つ技術力を獲得すべく、政府系ファンドを通じて日本を代表する自動車メーカーである「アカマ自動車」を買収する目論見が進んでいた。アカマ自動車役員の芝野健夫(柴田恭兵)は、政府系ファンドから任を受けた劉一華(玉山鉄二)が仕掛けた買収に対抗すべく、鷲津に助けを求める。
かくして、鷲津と劉は、アカマ自動車をめぐって激しい買収合戦を繰り広げることになった。
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あらゆる手を尽くしてアカマ自動車を買収しようとする劉と、それに対抗する鷲津の戦いは、緊張感があって見応えたっぷりです。確かに、リーマンショックを引き起こしたのは鷲津だった、というストーリー展開は若干やり過ぎという気もしますが、それを差し引いても十分に楽しめる内容でした。
ただ、ドラマ版で見事に描かれていた「カネと倫理」をめぐる主人公達の苦悩ぶりが、映画版ではあまり表に出ていません。そのせいか、ドラマ版に比べてストーリーがやや薄くなり、激しいマネーゲームを見せて観客を楽しませる作品に終始してしまった感があります。もちろん、それでも十分に面白い映画であることは前述の通りですが、ドラマ版の出来に及ばなかったことは残念です。
なお、経済の話で難しそうとお思いになる向きがあるかもしれませんが、私のような素人が見ても、専門的すぎて理解に苦しむ場面はありませんでした。その点は、どうぞご安心頂ければと思います。
オススメ度★★★★☆ 路上のソリスト 【VALUE PRICE 1500円】 [DVD]/ロバート・ダウニーJr.,ジェイミー・フォックス,キャサリン・キーナー

¥1,500
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LAタイムズ紙のコラムニストと、かつてジュリアード音楽院に在籍した天才ホームレス音楽家の交流を描いたヒューマンドラマです。監督は、『プライドと偏見』、『つぐない』で注目を浴びた若きイギリス人監督、ジョー=ライトが務めました。この監督の過去のメジャー作品はいずれも原作を元にしていますが、本作にも同じタイトルの原作が存在します。
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LAタイムズ紙で人気コラムを連載するスティーヴ=ロペスは、ある日、ヴァイオリンを演奏するホームレスに街中で出会い、彼をコラムで取り上げようと思い立つ。そのホームレス(ナサニエル=エアーズ)は、かつてジュリアード音楽院にも在籍した天才演奏家だった。ナサニエルは統合失調症のためにジュリアードを途中退学し、ホームレスに身を落としていたのだ。
スティーヴは、ナサニエルを不遇な状況から助けようと考えて、次々と手を打つ。しかし、ナサニエルは統合失調症による幻聴が現れることを恐れているため、なかなかスティーヴの助けを受け入れようとしない。それでもスティーヴは、この才能ある音楽家をなんとか路上生活から抜け出させようとするのだった。
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本作は、ホームレスが音楽界の出世階段を駆け上るサクセスストーリではありません。それどころか、音楽を主題に据えた映画ですらありません。この映画で描かれているのは、高い壁に幾度となく阻まれながらもナサニエルを助けようと奮闘するスティーヴの姿、それだけです。率直にいって、華やかさや派手さを映画に求める方には不向きな作品で、好き嫌いがかなり分かれるのではないかと思います。
スティーヴは、ナサニエルを助けようとする役柄ではありますが、彼自身もまた問題を抱えています。解決し難い問題を抱えながら他人のために行動を起こし、そのたび現実の厚い壁にはね返される彼の姿は、現実社会に生きる人々そのものといっても過言ではないように思います。確かに、うまくいかないことばかりで見ている方はストレスがたまるのですが、甘くない現実をよく描いているということもできそうです。結局、スティーヴの努力はわずかに実るだけで終わってしまいます。それでも彼は、ナサニエルを助けようとしたことで得られたものがあると、ラストシーンで述懐するのです。
本作は、一市民が現実と闘い、力及ばずも、わずかながらの収穫を得ることに成功する物語です。誤解を恐れずにいえば、地味な話といって良いと思います。しかし私は、厳しい現実と向き合いながらも強く生きる主人公達に、エールを送らずにはいられませんでした。
オススメ度★★★★☆ 善き人のためのソナタ スタンダード・エディション

¥3,976
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2007年アカデミー外国語映画賞受賞作です。物語の舞台は、東西冷戦下の東ドイツ。社会主義一党独裁体制を維持するために、秘密警察「シュタージ(国家保安省)」が暗躍していた時代です。自由主義的な思想は危険視され、盗聴と密告による徹底的な監視体制がしかれていました。
主人公は、「シュタージ」の冷酷な局員です。国家と党のため身を粉にして働く彼は、シュタージ内部でも一目置かれています。そんな彼が、反体制的な劇作家の監視を通じて、心動かされていく様子が本作では描かれています。
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シュタージの敏腕局員であるヴィースラー(ウルリッヒ=ミューエ)は、国家と党に忠誠を尽くしていた。反体制派を徹底的に監視し、必要とあらば厳しい尋問を加える。その冷酷なふるまいは、教え子からも「非人間的」といわれるほどだった。
あるとき、ヴィースラーは有名な劇作家であるドライマン(セバスチャン=コッホ)に対する盗聴を開始する。ドライマンは、表向きは党に従順だったが、面従腹背ではないかとヴィースラーは疑っていた。やがてヴィースラーはドライマンの尻尾をつかむが、当局への報告に躊躇してしまう。ドライマンと仲間達が抱く自由への熱意にあてられ、ヴィースラーの心には迷いが生じていた。
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タイトルの「善き人のためのソナタ」は、ドライマンが作品中で演奏する曲のことです。「この曲を聴くと悪いことができない」とされるソナタに、ヴィースラーも心を動かされます。もちろん、ソナタを聴いたくらいで冷酷な男が改心するというのは、いささか無理がある話です。ソナタは、あくまでも、きっかけの1つに過ぎません。ストーリーの中では、あまり重要でないといってもいいくらいです。おそらくは、邦題を考えた方が、宣伝のしやすさも考慮して拾い上げたのでしょう。
ドイツ映画らしいというべきか、派手さはありません。とても真面目で、どちらかといえば陰鬱な雰囲気が漂う作品です。しかし、ラストシーンには、なんともいいがたい感動を覚えます。ヴィースラーの決断は、ドライマンの人生に大きな影響を与えるのです。
やや大げさかもしれませんが、本作は、徹底的な監視と弾圧が当たり前だった社会を生き抜いた人々の物語です。"Das Leben der Anderen"という原題が示すように、そこにはまさしく「人生」を描かれていると感じました。
オススメ度★★★★☆
ティム・ロビンス/輝く夜明けに向かって

¥1,500
南アフリカのアパルトヘイト時代に、ANC(アフリカ民族会議)の闘士となった男の姿を描いた作品です。実話をもとにしているそうで、当時の映像らしきものが作品中に混ざります。主人公のパトリック=チャムーソは、現在も南アフリカに住む実在の人物です。
現在から過去を振り返れば、もちろんアパルトヘイトは不当な政策だったというべきでしょう。しかし、自由と平等を求めた黒人と、「権利のための闘争」に名を借りたテロ活動を防ごうとした白人は、いずれも自らの行いを正当なものと考えていました。両者の対立は、「黒人差別がいかに不当か」という話におさまりきるものではなかったのです。本作は、そのあたりの事情まで、しっかりと見せてくれているように思いました。
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南アフリカの精油施設で働くパトリック(デレク=ルーク)は、恵まれた生活をしていた。そこそこの収入はあるし、妻は美しい。2人の娘に恵まれ、気の合う友人もいる。周囲ではANCの活動を支持する人々が増えつつあったが、パトリック自身は政治から距離を置いていた。
ところがある日、精油施設がテロによって爆破される。パトリックは無実の罪を着せられ、公安警察から拷問を受ける。否認を続けるパトリックに対して、公安警察のニック(ティム=ロビンス)は、自白を得るためにあらゆる手を使う。
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誤解を恐れずにいえば、時代に翻弄されるパトリックの人生は、非常にドラマチックです。しかし、同時に過酷でもあります。強力な白人支配に抵抗することは、並大抵のことではありません。作品中には、絶句するような場面も出てきます。
他方、公安警察のニックもまた、時代に翻弄される人物の1人です。彼はテロ対策のために身を粉にして働きますが、そもそもアパルトヘイトがなければ、全く違う人生を歩んだかもしれないのです。そういう意味では、彼もまた、アパルトヘイトの影響を大きく受けたというべきなのかもしれません。
本作は、単に「黒人の解放」を描いていた作品ではないように思います。ラストシーンを見ると、むしろこれは「人生」と「融和」の物語なのだ、という気がするのです。
オススメ度★★★★☆
ディパーテッド

¥1,349
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2007年アカデミー作品賞受賞作。マーティン=スコセッシ監督による、アクションサスペンスです。警察に潜入したマフィアの手先(マッド=デイモン)と、マフィアに潜入した覆面警察官(レオナルド=ディカプリオ)の2人を主人公に、警察とマフィアの息つまる攻防が描かれます。香港映画の「インファナル・アフェア」をリメイクしたものです。
娯楽映画としてはとても面白く、個人的にはかなり楽しめました。ただ、「警察とマフィアにそれぞれ潜入している」という設定を知らずに見ると、はじめのうちはストーリーがわからず混乱するかもしれません。マッド=デイモンとレオナルド=ディカプリオの区別で苦しんだのは、もしかして私だけでしょうか。
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州警察学校を卒業したコスティガン(レオナルド=ディカプリオ)は、署に配属されるなり覆面警察官になるよう命じられる。コスティガンは犯罪者一族の生まれで、マフィアへの潜入捜査に適任と思われたのだ。他方、秘かにマフィアに育てられたサリバン(マッド=デイモン)は、エリート警察官として特別部隊に配属される。彼は、マフィア撲滅を目指す部隊で頭角をあらわしながら、裏では捜査情報をマフィアに流し続ける。
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敵対組織に潜入している男2人の綱渡りぶりには、おもわず息をのみます。警察とマフィアの死闘の行方は、主人公達の行動によって決まるのです。覆面警察官のコスティガンが心理的においつめられていく様が、緊迫感に拍車をかけます。
命をかけた騙しあい、裏切り、それにお約束の女性関係と、見どころはたくさんあります。スコセッシ監督らしく、暴力シーンも多彩です。サスペンスものが好きな方はもちろん、話題づくりのためにご覧になる方でも、十分に楽しめる作品ではないかと思いました。
なお、作品中には刺激が強い場面もありますので、小さなお子様がいるご家庭ではご注意ください。
オススメ度★★★★☆

