【第1回】兵庫県職員のみなさんへ ~兵庫県庁を再生するために~」(兵庫県庁を再生する職員とOBの会)の記事について


「適法・違法」の解釈権限に関するロジックの飛躍


声明では「違法なものを適法と言うな」と主張しますが、そもそも行政実務において何が「適法」で何が「違法」かの判断権限は、個々の職員やOB組織にはありません。

法令解釈が分かれるグレーゾーンにおいて、行政としての統一判断を下すのは首長(知事)や法務管轄部署、あるいは最終的には裁判所です。

個々の職員が自らの解釈を「正義(適法)」とし、組織の意思決定を「違法」と断じることは、公務員法上の指揮命令系統(服従義務)を根底から壊し、行政の停滞や混乱を招くリスクを孕んでいます。


選挙で選ばれた「民主的正統性」に対する過小評価


地方自治の本旨において、最も強い正統性を持つのは「選出された首長」です。

民意を得て着任した知事の施策や人事方針に対して、一部の退職者(OB)や有志職員が「組織の本来の姿」を理由に抗う姿勢は、見方を変えれば「選挙で選ばれていない元官僚組織による民主的統制(民意)への抵抗」とも受け取れます。

公務員が守るべき「県民の利益」を誰が定義するのかという問題において、選ばれた知事ではなく「自分たちの思う理想の行政」を優先することは、官僚主義的本末転倒を生みかねません。


「責任なき外側」からの関与による組織動揺


OBが「現役の防波堤になる」と掲げる点についても、実務的には問題が生じます。

退職者は職務上の法的責任や人事上のリスク、行政結果に対する直接の責任を一切負いません。

「責任を負わないOB組織」が内部の現役職員に影響を与え、職務上の判断を揺さぶる仕組みは、組織のガバナンス(統治)を極めて不安定にします。

本来であれば、こうした課題は公的な内部通報制度や労働組合、議会などの正規の枠組みで処理されるべきものです。


政治的中立性と「自浄作用」の形骸化


声明は「知事個人への批判ではない」としつつも、実質的には現体制の対応を「違法・不適正」と決めつける前提に立っています。

このような有志団体による外部発信は、特定の政治対立や世論の渦に組織を巻き込む結果になりかねません。

行政の「政治的中立性」を保つ観点からは、かえって県庁という組織に対する県民の不信感を増幅させる諸刃の剣となり得ます。