記憶の住人２

2004年3月、ちょっとした用事のために久しぶりに前に住んでいたところへ出掛けた。

友達に会うことも考えたけど、親も一緒だったし時間がなかったので断念。

変化した町並みを探すことで気を紛らせた。

ただそこで、自分は町についてほとんど知らなかったことに気づく。

自分が住んでいた場所以外ほとんど分からない。

公園での記憶も、お店での記憶もあるのに、そこへの行き方が全く分からないのだった。

それはよく行く場所さえも。

そしてあることが頭をよぎった。

好きだったあの娘の家は覚えているのだろうか？

家には行ったことがあった。

バレンタインのお返しをもって、友達に連れられて家に直接行ったのだ。

その時に出てきたその娘の顔と服装を今でも覚えている。

けれども・・・。

そのことを思い出して気になりつつも、記憶に自信が持てなくて、その日は時間をかけて家に帰った。