白い鳥が二羽、例によって薄暗いことで有名なあの部屋の内を間の抜けた顔でコトコトと、理由もなさげに歩いていた。





「確かにこれは扱いに困るね」





少女の両目は閉ざされたまま。



私には善処できないわ?





それを聞いてひとりが呟いた。





「死んじゃいたい。」





もうひとりは考え込んでいる。



部屋には三人と二羽。ガサガサと、羽の擦れる音がする。





「鳥のくせに。」





鳥は鶏でもないくせに、その羽は飾りかと罵られて然るべき飛行能力しか持ち合わせていなくて、しかし辛うじて部屋の中を往き来することはできる。けれど、開け放たれた窓があったとしてもその外に飛び立つことはできないのだと、先程から数刻それらを眺めていて知った。





死にたい方のひとりは泣きそうな顔でまだそれを眺めている。





「なんというか、見境無くというか、無遠慮に願うことが叶うなら、もっと汚いものを選んだのに」




「…本能のままに?」





黙っていた方のひとりが怪訝そうに訊ねた。





「や、見栄だけど。」





「なんだ、気づいてるんじゃないか。」





鳥は死んだ魚の目で楽しげに羽をばたつかせている。





「だって。」



苦しいのはいやだ。





「自由なんていらない。そんな得体の知れないもの欲しくない。ここにずっといろって言われる方がいい。」





「それは言うな。喜ばせるためにそれを贈ったわけじゃないのに違いないんだから、たぶん。」





「つまるところ嫌がらせね」



レベルの高い。





「俺たちが中途半端な自由っぽいごっこをして何年も生きてきたことを馬鹿にしてる。俺は好きでやってることなのに。」





「それかアレだ、皮肉。」





「もう死んじゃいたいよ。」





間抜けな鳥は、嗚呼、と笑うように鳴いて、ばさばさと部屋を一回りして見せた。





「おちつけ。
お前の死にたいというのは間違ってる。
生きて苦しみたくないだけだろ。
嘘をつくなよ。」



宥めるような声は咎めるような声に成るべくして成る。





「そんなこと、わからないだろう。」





その言葉に反応してか、少女は眠っているかのようだった瞼をゆっくり開いた。





「それを言ったらお前、」



言葉の存在価値を
全否定することになるよ。



「俺は有効数字一桁か
二桁ぐらいの話をしてる。」





「俺だってバカじゃない。
円周率みたいに、無いかもしれない螺旋を追ってる訳じゃない。
自分に関係ない架空のソレを
形容することも諦めた。」





けど囚われてる。



「ひどいことね。」





「うん。」










『怖いね。』













でもね、私はね、



「夢をみたいの。」





「俺にはできない。
そんな恐ろしいことは、してしまった段階で俺の辞書を壊す。」





自由っぽいなにか、という言い回しも水泡。言葉が意味のない文字の羅列になること。





「俺たちは正しいことをしよう。」





ふたりは冷たくなった肩を寄せた。