ムダに長いどうでもいい話 | 雨あがりの夜空の向こう・・・☆

10年以上前のことだ。


俺はスウォッチ(時計)に凝ったことがある。
とは言ってもなんちゃってスウォッチャーであったのだが。

それでその頃、世界限定5万本で立花ハジメモデルが発売されることになり、俺はそれを入手すべく発売日を雑誌でマメにチェックしていた。
インターネットなんてものがまだ普及してなかった時代だ。

しかし、その発売日というのが何月上旬予定とか全然あてにならないものばかりで、毎週某店のスウォッチ売り場に行き、発売をチェックしていた。

ある土曜日、いつものようにそこを訪れると『立花ハジメモデルまもなく入荷』と書かれた紙とともに、ショーケースにはその展示スペースが作られていた。

店員に聞くと「たぶん今日中に入ります」とのこと・・・
しかし今日はもう時間が無い・・・。

日曜日、俺はまた某店に向かった。

絶対に手に入れなければならないのだ。
性格的に自分の興味が無いものは買わない主義、
その代わり自分が好きなものは何が何でも手に入れなければならず、
買い逃しなどは許せることではない。

駐車場に車を停め、俺は店へ走った。
どれどれ立花モデル・・・。
しかし、悲しいことにそこには売り切れの札がぽつんと置かれているだけであった。

・・・!!!!

発狂寸前!!!

絶叫したいがさすがにそれは恥ずかしい。

俺は何事も無かったように店内を一回りして外へ出た。

「発売日がはっきりしないんだよ、俺は何回ここへ通ったと思ってんだ!コンチクショー!!!ったく!コンチクショオオオオオオ!!!!」

俺は車の中で虫の鳴くような小さな声で絶叫していた。

「もうスウォッチなんて絶対買わねーよ!!!バ~カ」

しかし俺の怒りは簡単におさまらず、こんなことでは終わらなかった。

俺はずっと欲しくて楽しみにしていたスウォッチを入手出来かったショックでその晩悔しくて眠れなかった。
そして雑誌を見て近場のスウォッチ取扱店を調べた。

近いところは盛岡市のK、あと仙台市のアムス西武、Fデパート、ソニープラザだ。

まずは今度の土曜日盛岡に行くことが決定した。


そして土曜日の盛岡。
俺はKのスウォッチ売り場で、肩をふるわせていた。

「ぜ・・全然入荷した跡も何も無いじゃないか、これだもんな~。」


そして次の日、俺は懲りずに仙台へと向かった。

「こうなったら今日は仙台じゅうの立花モデルを全部買い占めてやるからな!見てろ!」

俺は熱くなって冷静さを失い、目的もなんだか当初と少し変わってきていた。

そして仙台駅前、アムス西武の前に立っていた。
気合いを入れて朝早くから車をぶっ飛ばしてきたのだ。



しかし何でだろう?遠足の前日とか夜寝るのが遅くても朝は早起きして元気だった。
それに不思議とバスで酔うことも無かった。

楽しい時間は人を元気にさせるってことだ。
逆に怒っているときも元気だ。

俺は決して負けず嫌いじゃないからどうでもいい時は平気で人に負けることが出来る。
でも絶対負けたくない時もたまにあって、そういうときは怒りモードである。

訳もわからず怒っている時もある。

人生、怒って笑って怒って笑って怒って笑って怒って笑って怒ったり笑ったりしていればいつも元気でいられるかも知れない。

俺の元気の秘訣は笑うこと、そして怒ることだ。

・・・いや、今これを書いていてそうなのかなと思っただけなのだが、
なにしろ思いつきで書いているので違ってるかもしれない。




それで、アムス西武の前、実は朝早すぎてまだ開店前だった。

「ちっ、早く来すぎたようだ。10時開店か、普通そうだよな、少し熱くなりすぎたかも・・・仙台じゅうの立花モデルを買い占めるなんてたぶん無理だな、全部で30本もあったらどうしようか?」


・・・買わなければいいだけのことだったが、まだ冷静にそれを考えるのは無理だった。

そして開店、入り口のドアが開いた。
まるでパチンコの新台入替えオープンのごとく俺はダッシュでスウォッチ売り場を探した。

・・・しかし実は入り口を入ってすぐだった。
立花モデルは売り場の一角に1本展示してあった。

「でもこれを全部出してくれなんて売り場のおねえちゃんにはとても言えないなー、だいたい在庫が何本ぐらいあるのかもわからないしな・・・」

ここでは全部買うのはやめてとりあえず2本だけ買うことにした。

「すいません、これと同じのを2本ください。」

すると、おねえちゃんが

「2本というと贈り物ですか?」

と聞いてきた。

「・・・あ、え~と、1本は贈り物にするのでリボンつけてください。それともう1本は自分のですからつけなくていいです。」

何を言ってるんだ俺は・・・
売り場のおねえちゃんが一瞬不思議そうな顔をした。

おねえちゃんは奥にいって戻って来て

「すいません、こちら展示分だけになります。」

(ぐゎ~ん)

「・・・そうですか、残念だな・・・じゃあそれにリボンをつけてください。」

アホか、なぜリボンをつける?
自分でもわけがわからなかったが、とりあえず立花ハジメモデルを1本GETすることが出来たのであった。


念願のスウォッチをやっと入手した俺は、仙台じゅうのそれを買占めすべく、次にFデパートへと向かった。

そこでは立花モデルは売切れだったが、既に一本手に入れて余裕のヨッちゃん(死語)だった俺は、同じシリーズの別のアーティストのモデルを買うことにした。

そこは係りの人が不在の為、急きょ別の売り場のおばちゃんがレジに回ってくれたのだが、これがまずかった。

このシリーズは他のスウォッチと違ってケースも特別デザインされた専用ケースがついてくるのだが、そのおばちゃんはなんと普通のケースに入れようとしやがった。

「あっ、それ違います!ちゃんと専用ケースがあるんです。」

思わず指摘してしまった、一応笑顔で。
ま、トーゼンの事だ。

「あら、ごめんなさい。どれかしら」

「これだと思います」

「あ、これですか?すいません」

おばちゃんはそれでもケースになかなか入れられずに四苦八苦している。

俺は余裕のヨッちゃんのはずがまた怒りモードに逆戻りしそうになった。

それにおばちゃんが専用のケースに入れようとした時に、『ボキッ』という音がしたような気がした。

「・・・・・」

売り場を離れた俺はトイレに入って包みを開けた。

「ああ・・・」

嫌な予感は的中、
ケースの一部が壊れていた。

あのおばちゃんにケースが壊れているから取り替えろと言えるか?

・・・俺は言えなかった。


面倒くさくなってきたのでそのあと俺はソニープラザに向かい、立花ハジメモデルを1本GETした。

これで仙台じゅうの店の立花モデルは事実上全部俺のものになり、無事に当初の目標は達成されたのであった。

ははははは・・・・・。


おしまい。