予告の通り、インタビュー第三弾となる今回は"Mew2king"を紹介いたします。
Mew2kingはDX&Xのマルチプレイヤーとして世界的な名声を築き上げてきたプレイヤーであり、特にDXでは「マルス」「シーク」「フォックス」という驚異の"トリプルメイン"で現在も世界最上位に君臨しています。
DXプレイ歴10年の「知識」と「経験」を武器にしたその立ち回りは、25歳という格ゲーマーとしての年齢的衰えを全く感じさせません。
また数学的知識である"フレームデータ"を徹底網羅していることから、アメリカでは「フレームマスター」という異名を誇っています。
「Five God」の一角として世界のスマブラーに多大な影響を与えてきた、彼のゲームに対する姿勢を知って頂くべく今回のインタビューを翻訳いたしました。
(※Five God = 五神。世界トップ5である "Dr.PeePee Armada Mango Mew2king Hungrybox" の5人を指すアメリカでの総称)
今回は非常にボリュームのある内容となっておりますので是非お楽しみください、それではどうぞ。
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()内に※がある場合それは管理人である"私"による注釈、無い場合は"Mew2king"本人によるコメントとなっております。
このインタビューは2014年4月に行われたものです。
序文
今回我々は"Mew2king"について更に多くのことを知り、ゲームのテクニックに関する知見を広げ、また"Esports"としてのスマブラの興隆を議論するために彼にインタビューを行いました。
Q, はじめに自己紹介と、あなたがスマブラを始めるまでの経緯をお聞かせください。
A, CT EMP Mew2kingと申します。CTとEMPはともに私の所属スポンサーとチームを意味しています。
それではスマブラを始めるまでの経緯ですが、まず私は4歳のときから任天堂に熱中していました。
5歳の時にはスーパーマリオブラザーズに没頭し、3-3のポール越え(※ゴール地点のポールを飛び越える裏技、3-3のステージにおいては高難度とされる)の方法を知っているほど遊び倒していました。
またスーパードンキーコングの1と2で、それぞれ101%クリアと102%クリア(※完全クリアのこと、攻略本無しでは厳しいといわれている)にも成功していましたね。
小学2年生の時には「大きくなったら何になりたい?」という問いに対して私は「任天堂マスター」と答えたのを覚えています。
http://clashtournaments.com/mew2kings-melee-information-and-discoveries/ のなかでスマブラDXの徹底攻略リストも自身で制作し、私は今やDX / X / PMにおいて世界最上位にいるプレイヤーなのです。これは非常に素晴らしいことでしょう。
それとスマブラ以外にもロックマン2がとても得意だったりします。
Mew2kingマルスによるコンボ動画。華麗なコンボの連続に、M2Kのお気に入りである"ロックマンのBGM"が添えられている。
"The Dark knight"と称される世界屈指のマルスを是非ご覧になって頂きたい。
Q, スマブラで遊んだ最初の記憶はどんなものでしたか? またそのゲームが極められるものであると自覚したのはいつごろからであったのかもお尋ねします。
A, 初めのうちは楽しむためにスマブラをしていましたが、大会の存在に気づいてからは世界最強のプレイヤーになりたいと思うようになりました。
ただ単に人が熱中できるようなことを見つけただけのことなのです。
Q, あなたが最も熟練しているスマブラのシリーズをお教えください。
A, スマブラDXです。他の誰よりもこのゲームを極めていますし、それに対しても強い自信があります。
スマブラXについてですが、その発売前に全ての時間を一つのキャラに注ぐことを決心しました。
私は今もなおDXとXで世界トップ3のプレイヤーであると見なされていますが、自身の習熟度に関して言えばXよりもDXの方が高水準であると思います。
Xでは最強キャラであるメタナイトを使用しているので、誰も私を止めることはできないのです。
しかしDXでは上から4、5番目のキャラ(シーク/マルス)をメインに据えているので、最も習熟しているゲームとはいえ勝ち損ねることもあります。
Q, スマブラで使用するお気に入りのキャラは何でしょうか?
A, ミュウツー、フォックス、シーク、マルス、メタナイトの5キャラがお気に入りです。
連携もしくは復帰阻止が容易である高機動キャラが、私にとってプレイしていて楽しめます。
この5キャラが私のプレイスタイルにぴったりなのです。
Q, 所属チームのEMPとはどのようにして接触したのですか?また競技チームに所属することにどんなメリットがありますでしょうか。
A, EMPの代表であるTriforce氏がスマブラの大会中に私にアプローチしてきて、現在所属しているチームはあるかどうか尋ねてきたのがきっかけでした。
そしてどこにも所属していないと返答したところ、EMPの一員になってみないかと彼は助言してきたのです。
それで私は2009年にEMPのメンバーに加わることができました。
EMPはJustinWong、Yipes、Sanford などのアルカプのトッププレイヤーを擁していました。
そういうこともありEMPに参加することが、自身のゲームキャリアを築くための良い機会であると私は考えたのです。
EMPのメンバーであることのメリットの一つは、企業やメディアがプレイヤーを世界に向けて広報してくれることでしょう。
チームに加わって以来、私は多くのことを成し遂げています。
去年EMPチームのメンバーが大会で勝ち取った優勝数の合計のなかで、その約半数は私によるものだったのです。
これもあってEMPは「世界で最も大会優勝を稼いだチーム」としてギネス世界記録に認定されました。
EMPのメンバーはギネスに認定された2012~2013年の期間に"300"もの大会で優勝し、そのうちの"141"は私自身によるものでした。
ProjectMはこの数字に含まれていませんが、仮に含めるとするならば自身の優勝数は更に増えることでしょう。
私は数多くの大会で優勝してきましたが、チームのなかで協力し合える仲間を持つことも素晴らしいことだと思います。
そういう理由で"Armada"が同じチームメイトであることが嬉しいのです。
DXのダブルスでArmadaと組むこともできますし、この組み合わせが「世界最強」であることにも自信がありますから。
Q, あなたは1年間でどれくらいの数の大会に参加していますか?
A, 平均で毎週もしくはそれ以上の頻度で大会に参加しています。
Q, 大会で稼ぐ賞金はどのくらいでしょうか?
A, 週平均で数百ドルですが、大会の開催場所が地方か大都市かによって異なります。
APEXやMLGなどの大規模大会が時々開催され、それに数千ドルもの賞金がかけられることもありますね。
今年の7月にニューヨークで"MVG"という大会が開催されますが("MLG"と混同しないように)、それには二千ドルもの賞金がスマブラに用意されています。
Q, "Mew2king"というハンドルネームはどのようにして思いついたのですか?
A, 最大規模のスマブラ掲示板である"Smashboards"を見つけたとき、急いで私はそのHNを考え出しました。
スマブラが上達してきて、すぐさま界隈で有名になったのでその名前が定着したんです。
HNの由来としてはポケモンの"ミュウツー"が好きだったからということが一つに挙げられます。
Q, あなたは"The Return of the King"(※ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 になぞらえたもの)と称賛されており、また"The Robot"という異名も持っています。これらのニックネームについて私たちに詳しく教えて頂けますでしょうか?
A, 私はかつて最強のスマブラーであると考えられていました。Xが発売される以前は、DXで数多くの大会において優勝していたのです。
近年その栄光を取り戻してきたとして、HNに"King"という名も冠していることから"The Return of the King"と称賛されるようになりました。
また私のプレイスタイルがロボットのように完璧であったので、人々は私を"The Robot"と呼ぶようになったわけです。
"The Return of the King"と称賛されるきっかけとなった大会動画である。2009年からの4年間一度も勝利することができなかったHungryboxに対して快勝し、Mew2kingは跳び上がって喜びを爆発させた。それまで感情表現に乏しいプレイヤーであったため、この勝利シーンは多くの海外スマブラーに感動を与えることとなった。
Q, あなたは幾つかの理由があってのことでしょうが「DXはXより優れたゲームである」と昔から公言してきていますね。本当にこのようにお考えなのか、またその理由を大まかに説明して頂けますか?
A, はい、私は実際にDXはXよりも競技的なゲームだと考えています。DXはXよりもやられ硬直(※攻撃を喰らった側に生じる硬直)が長く設定されているため、コンボが容易であるということがその主張の理由です。(いったん攻撃を喰らったら何もできなくなる"スマブラ64"ほどには"やられ硬直"は長く設定されていませんが)
また絶空の存在が、上位プレイヤーに見られるような発展的な動きを可能にしています。
絶空を使用する必要性は必ずしもありませんが、それはゲームプレイに更に多くの選択肢を加えてくれるのです。
Xでのガードは強力すぎるが故に、ほとんどのシチュエーションで最善の選択肢となってしまっている状況です。
一方DXではガード硬直が要因となって、薄ガードやシールドシフトが"ガードシステム"をより釣り合いの取れたものにしています。
最後にXでは自動崖掴まりが可能なため、復帰阻止の機会がほとんど失われています。
しかしこれは競技的視点からの見解であり、開発者である桜井氏の意見を反映したものではないということに留意して頂きたいです。
Q, あなたはスマブラDXを綿密に解析していることから、細かいゲームシステムを熟知していますね。これはそのような研究に時間を割かない感覚派プレイヤーに対してアドバンテージがあるとお思いでしょうか?
A, 私の学習能力は平均的な人間よりも高くて才能がある方だと思いますし、小さいころからテレビゲームも得意としていました。
それは子供の頃からゲームを遊び続けてきたことによって築き上げてきた才能なのです。
私は「経験」と「実践」を通して日々成長しています。
この記事を読んでいる皆さんも上記の2つを意識していけば、自らの内に秘めるポテンシャルを容易に引き出すことができるはずです。
いかなるプロゲーマーも自身が専門としているゲームに対して真剣に時間を注ぎ込んでいますが、私はDXにおいて娯楽かつ趣味という意味も含めて"大会"に多くの時間をかけています。
数学的分析(フレーム解析等)も重要であるとはいえ、大会で様々なプレイヤーと対戦することが最善かつ最速の上達方法なのではないでしょうか。
Q, スマブラDXで発見してきたシステムの中で最も驚いたものは何ですか?
A, 私はスマブラDXを長年プレイしてきたので、システム発見で本当に驚かされるようなことはありません。
大会中にランダム要素で同じ現象が繰り返し起これば、それは面白いでしょうが驚くことではないでしょう。
Q, スマブラDXで勝利を目指している初心者プレイヤーたちに対して、あなたはどんなアドバイスを送りたいですか?
A, ほとんどの初心者プレイヤーは知識が限定されているために、単純な戦法に頼りがちです。
シンプルな例は、復帰の際に高い地点で空中ジャンプを度々使用してしまうということが挙げられます。(※上級者間では復帰の際に比較的低い地点で空中ジャンプを使用する。これにより復帰阻止としての相手の空中ジャンプ狩りを喰らわずに済むことができる)
この問題を解決するための答えは、多くの人と対戦することでしょう。
それによって自分が考えてきたことを実践でき、多くのプレイヤーに対応できるようになるのです。
「経験を積むこと」は非常に役立つ方法であるのに間違いありません。
Q, あなたはスマブラ専用のプロ仕様型・次世代コントローラーを開発したいとおっしゃっていますが、現在流通しているコントローラーに何らかの問題があるとお思いなのですか?
A, 私はそのコントローラーを製作するためにゲーム会社で働きたいと思っています。
自身がコントローラーにどれほど気遣っているのかということにお気づき頂ければ、コントローラーの操作が如何にして処理されるのかという複雑な側面の重要性がご理解頂けるはずです。
コントローラーの"質"は勝負を左右する要素に成り得ます。
故障や経年劣化したコントローラーを使用せざるを得ないのが自身の現状であり、これを解決するためには次世代のコントローラーを開発する必要があるでしょう。
もし私が結局そのコントローラーの開発に携われないのであれば、任天堂がゲームキューブのコントローラーをWiiUでリメイクするべきです。
皆がGCのコントローラーの操作に慣れているでしょうし、その発売がベテランとカジュアルゲーマー(※日本でいう"非ガチ勢")を遠ざけることにもなりません。
もし任天堂が自社の公式アダプターを開発しないのであれば、全スマブラーがGCのリメイクコントローラーでWiiUを遊べるように配慮して頂きたいところです。
他の多くのスマブラーもこの私の意見に賛同していますから。
Q, あなたは新作スマブラの設計に携わることに興味を示しています。もし任天堂があなたのノウハウを認めて、その提案を引き受けるならばどうしますか?
A, 昨年に憧れであったReggie氏(※米国任天堂の社長兼最高責任者)に会うために、Triforce氏と共にE3に足を運びました。
その場所で「スマブラについてじっくり考えてほしい」という私の意見を任天堂に述べようとしましたが、直接それができるような機会は一度もありませんでした。
現時点におけるスマブラの第一課題は「ゲームデバッグ」でしょう。
私はバグやその他諸々の不具合を見つけ出すというテストに関心がありますし、それらの要素はゲームに付き物なのでその分野に携わることができたらと思っています。
しかしこの点で桜井氏はしっかり仕事をしていますので、他の課題を挙げるならば「ゲーム攻略本の制作」かもしれません。
正直に言って私はゲームの公式ガイドブックを制作することも厭わないです。
Q, 発売が迫っている"新作スマブラ"についてどうお考えなのか教えて頂けますか?新作スマブラがシリーズ最高傑作となり得るか、またその一方で新作に対する不安はあるかの二点も含めてお答えください。
A, 新作に関するニンテンドーダイレクトの放送を見てから、その発売を前に胸が躍っています。
新作が今年の夏に発売されることを私個人は願っていますが、結局発売日を決定するのは任天堂です。
いずれにせよ3DSは購入しなければいけなくなるでしょう。
新しいキャラクターやモード・ステージ、また桜井氏の斬新なアイデアがこのゲームに盛り込まれていることから、シリーズ最高傑作になるであろうと確信しています。
今のところ順調そうなので不安は一切ありません。
仮に不安があるとするならば"シーク"が参戦するかどうかについてですが、"彼女"が戻ってきた暁にはその不安は晴れることでしょう。
Q, "Esports"の情勢についてはどうお考えでしょうか?また近年においてそれが進展していると思うかどうかをお聞きします。
A, Esportsの進展は競技ゲーマーの私にとって非常に素晴らしいことであり続けることでしょう。
またそれによって競技レベルは向上しますから、観戦が楽しめるという意味でカジュアルゲーマーにとっても有益であるはずです。
Esportsの発達の歴史を見てみれば、この考えが本当に現実化してきています。
スマブラがEsportsの一員になることは喜ばしいことです。
スマブラはMLG、EVO、MVGなどの大会により、競技ゲームとしての規模を拡大させつつあります。
Esportsがアーケード時代に比べて大いに発展してきているのは明らかです。
Esportsの大会に目を向ければ、その会場はバスケットやフットボールの大会のように観客で満たされているかもしれません。
Esportsが運動スポーツの人口規模をいつの日か上回ることを私は願っていますし、それはすぐにでも起こりうることでしょう。
1vs1のDX対戦動画で現在世界最多の再生回数を誇る"Mew2king vs Shiz"の第4試合の動画である。
「Revival of Melee(スマブラDXの復活)」と題したこの大会は、X発売により危機的状況にあったDX人気を復活させるべく2009年にアメリカで開催された。
多くのプレイヤーは「背水の陣」と呼ばれたこの名勝負で"DXの素晴らしさ"を再認識することとなり、DX人気はこの機を境に盛り返していくこととなる。
EVOにスマブラDXが2年連続で採用されるなど近年"Esports"としての発展が目覚しいが、この"名勝負"が全ての始まりであったと言っても過言ではない。
Q, 今までで最も誇りに思っているスマブラの大会成績は何でしょうか?またこの分野で将来的な目標をお持ちであるかどうかもお尋ねします。
A. 参加した大会や勝ち取ってきた優勝が多くて、どれか一つだけ特別に取り上げることはできません。
新作で私は最強プレイヤーになるつもりですし、視聴者にアドバイスしながら楽しませるような有名な配信者とまではいかなくても大物の一人にはなりたいですね。
最終的には新作スマブラ、もしくはその次の新作のゲームデバッグを手がけたいと思っています。
Q, あなたが他に極めたいゲームはございますか?
A, スマブラの大会以外に興味はありません。
Q, 大会に向けてのトレーニングの休憩時間に、あなたは他にどんなゲームをしていますか?
A, 旧作のマリオシリーズ、メトロイド、ゼルダ、もしくは任天堂の新しいゲームで遊んだりしています。
Q, 競技スマブラ界に興味のある人に向けてアドバイスはありますか?
A, まずはたくさん大会に参加しましょう。
私が http://www.twitch.tv/mew2king で配信しているときに個人的にアドバイスもできます。
かけがえのない経験をするためにも皆さんスマブラをしましょう。
Q, 最後に読者の方に向けてメッセージはございますか?
A, まずは私のことをインタビューして頂き本当にありがとうございました。
また自身のスポンサー及びチームである"Clash Tournaments"と"Empire Arcadia"にお礼を申し上げます。
そして親友である"Armada"と"Sky Williams" 配信で私に力を添えてくれた"Chibo"にも深く感謝いたします。
私は自身の能力を以って任天堂で働くという夢に近づきつつありますし、少なくとも新作スマブラには直接的な影響を与えられることでしょう。
最後に自身のツイッターアカウントである https://twitter.com/CT_Mew2King とスポンサー及びチームである https://twitter.com/EmpireArcadia とhttps://twitter.com/CLASHTournament をフォローして頂けると幸いです。
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以上です。
このインタビューを読み終えて如何だったでしょうか?
翻訳した管理人の視点からいうと、Mew2kingのスマブラに対する姿勢は非常に「合理的」かつ「スマート」であると感じました。
Mew2kingが大会に参加する姿は今後も見られるはずなので、彼に興味を持った方は配信をチェックしてみましょう。
以下のリンクでMew2kingの大会や日常における写真が掲載されています、随時更新されているのでご覧になってみてください。
http://picturesofm2k.tumblr.com/