その夜アタシは独りぼっちで



昔の恋人が住んでいた街までドライブしたりして



とにかく1人では居たくなかったのね




誰かに話を聞いて欲しかった



誰でも良かった




出会い系で捕まえたのは、二歳くらい年下の男の子



その頃年下って本当に興味が無くて



まあ、メールをくれた中で一番まともそうな人


ただ、アタシはまともな精神状態じゃないのは自分で分かっていたから



車の中にカードや身分証明書は隠して



待ち合わせた彼の車に乗ってみた




まあまあ男前だけれど好みじゃない



というか、そんな精神状態じゃなくて



ただただアタシは愚痴をぶちまけた




朝まで愚痴や世間話をして



帰り際に少し抱き締められたけれど、少し抵抗しただけでキスも無く






「また会えますか?」

と言う彼の問いかけにも答えずに車を降りた





家に帰って、ベッドに突っ伏すと



瞬間、何かが弾けた




アタシ、あの人が好きだ






訳もなく




突然恋に堕ちた
その時の恋人とは、結婚して子供まで授かったけれど、今はもう隣には居ない



あの頃の辛い日々を思うと、未だに寒気がする



相手が悪い訳じゃない


自分も責めた



でも過ぎてしまったことはどうにもならない


つまりは若かった



また、それは別のお話と言うことで



ただ、アタシの少しばかり狂った脳みそを更に掻き回すには充分過ぎたわね



その頃出会い系で知り合った人は、男としては全く興味が無かったけれど、色々相談に乗ってもらったわ



既婚者のくせに出会い系で人妻にハマって離婚して、しかも引き摺っている馬鹿な男だったけれど




そしてアタシが本当に狂いそうな夜に



アタシは運命の出会いをした



運命的な出会いではなくて


その後の人生を変えるに価した、運命の出会い
その恋人は、大好きな人を失った寂しさまぎらわせ、ツナギ、そんな風に思っていた。



だから、愛情なんて無かった。



相手にもそれは伝わるんだろう。


彼はアタシを繋ぎ止めるのに必死で。



アタシはそれが嬉しかった。



もっとアタシを見て。

必要として。

離れられないと言って。

追いかけて。

夢中になって。






若かったんだろう。



お互いの浮気をした、しないの下らないケンカ。



でもアタシは


根は一途な様で


いつも戻っていた






出会い系で出会う人達は


皆何かが欠けている



アタシはそれにすぐに気付いて



今までに自分に沢山のルールを作った



時折寂しさに負けてルールを破ると


大抵嫌な目に会った


だからルールは守る




既婚者はダメ

今なら、23歳以上で小文字を使う男はダメ

!マークの多い男は自我が強い

返信が遅すぎる男はダメ

肉体労働の男はダメ

車に凝る男はダメ


そして何より重要なのは、勘


少しでも引っ掛かりを感じたならば、どんなに良い男に見えても無視


写メは分かりやすい


目や口元にだらしなさや険がのぞく男はダメ




アタシは例えば、同じような文面で、似たような写メの人でも、片方には返信しても、片方は無視するかもしれない


全ては勘が頼り



大きな獲物を逃したかもしれないけれど、大きな災難も避けられたと信じている。