「メガネメガネ」
最近、お世話になっているカフェで
、娘のヘアゴムをいただいた。
可愛らしい果物の飾りがついたヘアゴムで、
娘もとても気に入った様子。
さっそく、その日から使い始めた。
娘の髪はまだ柔らかく、
サラサラとしていて、
ヘアゴムがすぐにずれてしまう。
それでも妻が丁寧に
後ろ髪を左右に結んでくれて、
娘はご機嫌だった。
ところが、その日の夜。
娘の髪を見ていた妻がふと気づいた。
「ヘアゴム、片方ないよ?」
確かに、朝は両方つけていたはずなのに、
いつの間にか片方が消えている。
慌てた妻が
「どこかで落としたのかな?」
「小さいから、もし口に入れてたら大変!」
と心配する。
「分かりました、探します!」
私は家じゅうをくまなく探した。
ソファの隙間、ベッドの下、おもちゃ箱の中。
もしかして、お風呂場?
いや、洗濯機の中かも?
しかし、どこを探しても見つからない。
「うーん……見つからないなぁ」
「もうちょっと気をつけて探してよ!」
妻の言葉に肩を落としつつ、
その日は諦めるしかなかった。
***
翌朝。
「ねえ、ちょっと!」
妻の声に振り向くと、
驚いた表情を浮かべた妻が、
自分の髪を指さしていた。
そこには……
昨日必死に探したはずの、
娘のヘアゴムが。
「……えっ?」
そう、なくなったと思っていたヘアゴムは、
なんと妻が自分の髪を結ぶのに
使っていたのだった。
しかも、妻自身も気づいていなかった。
「私が使ってたんだ……」
妻が苦笑いしながら
ヘアゴムを外して娘に見せる。
私はポツリと
「……メガネメガネ、じゃん」
まるで、メガネをかけたまま
「メガネどこ行った?」
と探すのと同じパターン。
必死になって探していたのに、
答えはずっと目の前
いや、妻の頭の上にあった。
「まあ、見つかったからよかったけどさ」
妻の言葉に、二人で顔を見合わせて笑う。
まさかこんなオチとは思わなかったけれど、
なんだか微笑ましい出来事になった。
次からは、
探す前にまず自分たちをよく確認しよう。
メガネメガネ、ならぬ、
ヘアゴムヘアゴムにならないように……。
