おはぐろとんぼ+5・7・5・7・7メモ -4ページ目

短歌

いちご摘み その10

乙女・八十路・道
乙女座の父八十路にて夜道なら送ってゆくと我に言い切る


幼稚園まで送ってはきたものの妹の手は離れないまま


ひもじさに大根盗み触れたのは温い土だと吉川英治

なす
茄子紺の帯すっきりと貝にして後ろへ回す鏡の我も

つられ
あくびする人につられてあくびする車内を照らす午後の御日様


引力は働いていて私へのチャイはカップに還らなかった


写真機という鋏なら一瞬で四角い空を手に入れられる

み(ん)な
ヴェニスにてみな欺いた男装の人の救った商人の業


空色は男の子色でしたから似合わないのにピンク着ました


かぼちゃにはかぼちゃの甘味あることにようやく気づく連れ合いである

                                           

                                          

短歌

いちご摘み その9


モジリアニえがくところの女性像おもいだすとかいわれた首よ


屈めないほど締め付けるコルセット 鯨の骨で出来ていたころ

褐色
褐色の肌の行き交うテヘランで牛乳を買う黄色い私

日野原
日暮れまで遊び呆けた野原には青大将でなく人が棲む

みな
始まりと終わりの日付そして姓みなそれぞれに合祀される碑


しなやかな猫バスのあの停まりかた思い出させる伸びをした猫


母をして口から先に産まれたと言わせるほどにお喋りだった


春の日に落ちてくるから顔上げる か細く淡い温かい雨


幾度でも引き算しては原っぱを心の中に遊ばせておけ


ドレスこそお下がりであれ花嫁の手に大粒の胡蝶蘭咲く

                                   

短歌

いちご摘み その8


蝶タイの君がロビーを横切ればボーイさんかと声かけられる

20キロ
五里霧中 20キロとは何故かしら同じ距離には思えずにいる


ガラス越しガーゼの服にくるまれたケーキは無垢な乳飲み子のよう

母・照・エビ
エビネラン照らす木漏れ日たどったら祖父母らのいる天国に着く

編・毛糸
編みぐせの付いた毛糸を湯のしする叔母は真剣そのものだった


骸とは音の似ている無患子の実は羽子板に突かれるさだめ
(無患子=むくろじ)

小説
探偵の心に心重ねては星追いかける小説の中

丈・妹
転校のたびに背丈のせいだろう姉妹は取り違えられ


にょきにょきと買い物袋はみだした独活を見あげるような雪道


ひとえだのローズマリーと握手して森の匂いに抱かれています

短歌

いちご摘み その7


まぶしさと闇のあわいに横たわる逢魔が時は保護色でいる


ポケットに片道切符だけを入れ会いにいきたい人のいたころ


やわらかな胸に真紅の刺し傷の小鳩の震え間もなく止まる


花嫁として立ちつくす隣には座布団回す花婿の芸


花屋にて大鉢に水みちていて透きとおってる二匹のメダカ


鉄線の花をデッサンした絵には青にわずかな赤まぜてみる

不気味な
漂白を重ねたすえに辿りつく不気味なまでの白いひととき


体重をかけてしゃがめばリヤカーは田んぼのきわにようやく止まる

きざむ
微塵にもピーマンだとは悟れないくらい刻めばいいのだろうか

人形
こわれても祖父にもらったセルロイド製人形のミルちゃんといる

短歌

いちご摘み その6

見透かす
この嘘を見透かせるのは食卓の畳鰯(いわし)の瞳だけです


三つ葉やら蕗の薹(とう)やら多羅の芽を小皿に盛れば春も近くて


金次郎像背景に師の膝にいて横目した別れの写真

鉛筆
鉛筆を寸の詰まった丈にしか削れなかった面長の我


風薫る五月だからと名づけられ君(くん)と呼ばれていた妹よ


かみさんは第九歌っているころとドライバーいうタクシーのとき


その杖の名に含まれる松葉茶を嗜んでいた宮沢賢治

ゆびさき
サービスの茹で卵むくむき方にさえそれぞれのゆびさき光る


目で触れた母の頬には幾筋も涙があったあたたかかった


本当にカミキリムシは紙を切り髪も噛み切る昼の沈黙

短歌

いちご摘み その5


霜枯れの庭に小さく揺れている日だまりのよう 君のひとこと


こんなにも青いのかしら天上は 英名を知り朝顔を見る


眠りから覚めない人の魂が本を抜け出す夕闇である


猫年は何故いつまでも来ないのと問いかけてくる瞳した猫


花束にあしらわれてる姫林檎ここへ置くから弓を引いてよ


おでんなら竹輪麩がいい 鍋にあるものみなすべて吸いこんでいる

樺太
帽子には耳あてのある軍服の父は捕虜にて樺太を去る

舞台
袖にいる 舞台にスピンする人の汗きらきらと輪をえがいてる


新聞紙つばさに見たて飛んでみた ちゃぶ台からの落下ではある

悲しみ
悲しみというしみのあるハンカチは洗わないまま取っておきたい

短歌

いちご摘み その4

水音
王子には成れなかったかあの蛙 世をはかなんだ遠い水音

カーテン
妹とカーテンの布ねじらせて身にまきつける冬の縁側


本日は手にも足にも水掻きが現れたので川へ行きます

なじむ
誤りを指摘されても馴染んでる「汚名挽回」 もとい「返上」


頭ではマイナスかけるマイナスはプラスになると信じています


言の葉を歌いあげては響かせる人それぞれの魂を聴く


おたがいに返したくなる思いなど一年置いて又の賀状に


シーソーを漕ぐとき多分わたしたち量りあってはいるんだろうね

まつさおな
まっさおな鳥が見たくて目を閉じる 死角に入らないようそっと


床の間に活けこまれてる水仙は楚々と凛々しい香りを放つ

短歌

いちご摘み その3

ゆっくり
ゆっくりとふくらんでいく餅たちは箸にはさまれ旅へ出るのだ


やわらかな輪郭をして揺れている虹を畳の上に見た日よ


そよそよと風が吹いても痛いとかいう人だとは知っていました

笑い
押さえても押さえきれないありさまに擦れ違いざまもらい笑いだ

信じ
星空の星たちによるお喋りは 信じていても救われないわ

フーフー
自転車が倒れるほどの風を見るフーフーというラーメン屋にて

右・左
二人してAのかたちを作ってはタンゴを歩く右左 冬

二階
二階から目薬をさす要領でしたためている君への手紙


快い気を吸いたくて息を吐く身体の軽くなるまでもっと


包丁も火もあやつって胃袋を満たす仕事は正しく強い

短歌

いちご摘み その2

匂い
いい匂い 百合の芯まで顔寄せて黄色い鼻に気づいていない


湯浴みする桜の花のふうわりとほどけだしてく静かな時間


傾いた二段ベッドに放られた外は荒海むこうは伊予よ


霜に焼けグローブみたいだったのに今では指輪まわるほどです

先生
受け取れば「青い服の」と吾(あ)を指した先生の文(ふみ) 代筆による

握りし
握りしめてた紙テープ離してもまだ鳴っている「蛍の光」

琵琶湖
琵琶湖にて泳ぎほうける夏の日は祖父の率いるイベントだった

ナイフ
雲間からナイフのように放射する薄日手折って封を切りたい

フィッシャーマン
日に焼けたフィッシャーマンの心地して繕っている網タイツ 海


悲しくて小石川面(かわも)へ飛ばしたら水を切ってるスキップしてる

短歌

いちご摘み その1

黄の色
味噌汁に見えかくれする黄の色は馬車になれないカボチャのかけら

殺・刻
みずからを殺してないか回りをも殺してないか刻々に問う

前向き
あのころははっきりとした方向もなくひたすらに前向きだった

関係
静電気かんじるときの関係を反芻してはいる冬の朝

カー
牛や馬うかんでこない「真夜中のカーボーイ」とは邦題である


首の差で負けたことなど気にしない一寸先に光が見える

祖父
祖父がよく食べ残しからヨーグルトこしらえていた炬燵にはいる


夜景ではなく映された隣人を盗みみている窓際の席


底なしの沼のほとりに咲く蘭のような女性を一人知ってる

干し
おひさまの愛をからだに吸いこんだ干し椎茸を戻しています