大人気だよ☆千鶴ちゃん【縁側へ*続2】 | 白い憂鬱

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・・・ライトノベル作家を目指し、非ヲタ界とヲタ界を往来する看護学生の日常。
ローリンガールなので、私は今日も転がっています。
*薄桜鬼の小説公開中*

続きます(´ω`)
ちなみにもう一回続きがあるので、待っていてくださいね(´・ω・`)見捨てないでっ←
ちょっと斎藤さんが甘甘なので凛々しい斎藤さんをお望みの方はお許しください(;・`ω・´)



「雪村くん!さぁここに…」
「はい!…斎藤さんっ、ここに横になってください…」
千鶴は近藤と共に斎藤を彼の自室へと運び、布団へ寝かせた。近藤は千鶴の肩を軽く叩いて、彼女に泥酔しきって横たわる彼を任せた。

縁側での僅かの間に起きた出来事が未だ頭から離れず、彼を直視できずにいる。冷たい指先が彼の頬に触れ、その熱を拭い去っていく。
閉じられた瞼が僅かに動いた。そして開かれた目の深い青が千鶴を捉え、逃れることを難くする。

「千鶴…」
「は、はい…って、えっ…」
少し身を起こしたかと思うと、彼女の大腿に頭を乗せ、再び仰向けになる。そしてまたその目で彼女を見つめると、微かに微笑んだ。
「さっ…斎藤さん…どうしたんですか?」
彼がこんな大胆な行動にでることも、こんなに柔らかな微笑みを見せることも過去一度もなかった。
縁側で見つけた彼が見せていたような表情がふと思い出される。相反するような二つの表情にどこか通ずるものを感じた。

「千鶴…俺は…いまの俺は、何かおかしい…」
「どうしたんですか?お酒が強すぎたのかもしれませんね…。ごめんなさい…」
彼は小さく首を振ってそれを否定する。
「いや、違う…胸のうちに秘めたものが全て溢れ返って…」
言葉半ばにして斎藤は千鶴から離れた。突然の態度の変容に千鶴はまごつくしかない。

長い沈黙が続く。

「このままではあんたを巻き込み兼ねない…悪いが、俺から離れてくれ…」
千鶴がふるふると拒否の反応を示すと、またあの切なげな表情を浮かべて薄く開いた口をきゅっとつぐんだ。

堪えきれなくなった斎藤の手がそっと千鶴を捕まえ、彼女に捕まるようにして身を起こす。そして彼は息がかかるほどの距離まで彼女の顔を引き寄せた。
触れられた頬や外耳が熱い。
彼の目に宿された青い炎に心が焼かれていく感じを全身で感じる。
「斎藤、さん…」
心臓が飛び出して勝手に駆け出してしまいそう。
「…だ、だめです…私…」
彼をほしいと思ってしまう。

「何故いけないのだ。…………俺を嫌い、か…?」
「…!」
「俺はこんなに苦しいのに…」

はっとして彼の目を見つめ返す。
恥ずかしさから思わず目をそらしてしまっていた。きっとすごく気まずい顔をしていたに違いない。
彼の目には大粒の涙が溜められ、僅かに俯くだけで零れ落ちてしまいそうだ。長い睫毛まで濡れ、少し震えた吐息が前髪を揺らした。

指の背で彼の涙をそっと掬ってやる。いつもは千鶴よりもずっと大人で、こんなに切なげな顔など誰にも見せることはない斎藤の別の面にかなり驚いたが、余計に彼への思いが膨らみ、胸は苦しくなった。
「苦しい、苦しいんだ…」
掬いきれなかった涙がはらはらと落ちる。
「こんなに近くにいるのに、どれだけ近づいても千鶴は遠い。」
伏せられた彼の顔をそっと自らの首筋に埋めさせ、優しく背中を擦った。それが尚、涙を誘い、言葉を紡がせる。
「いつも隣にいて…なのに遠くから千鶴を見つめて、苦しくてたまらないのだ…」


続き