空と山とが紡ぎだす 

雲の糸の花の下

故郷の川はゆるゆると流れ 

故郷の道はうねうねと曲がる

きみが育った町に野に

きっと天狗は生きていて

朝と夕には疾風が走る

目にも止まらぬ早業で

 

 風の歌のひとり歌

  青くうねる木々の声

 月夜の虫の歌うたい

空から流れる星の歌

 

梢と屋根とがはじき出す

雨の滴のひき語り

泣き声は祠に深々と隠れ

笑い声は瓦を朗々と転がる

きみが学んだ道に舎に

そっと軒に燕は隠れ

一足早くに巣立っていった

この町にさよならを告げて

 

 風の歌のふたり歌

  共に歩いた花の里

 囃子の続く川沿いに

座って見上げた煙火の花

 

人と町の織りなす

定めと営みの道の歌

小鳥はピルルと来て

ガタゴトと線路に日は暮れる

きみが育った町に野に

今も変わらず古代の

山から町から抱いている

久しい言葉を掛けながら