空に昇った月の下
霞がかった枝先を
桜の淡雪が舞っていた
ひらりひらりと舞い落ちる
嘆きの雫のつたう闇
静かでした、本当に静かでした
私の心は
死んでしまったかのようでした
その時私は言いました
誰にも言ったことがない言葉で
死のうお前よ 落ちて死のうと呟くと
桜色の飛沫が風に飛び
涙の海にゆらめく漁火の
きらめきまたたく潮の味でした
はるか遠くの海を
月明かりが泳いでゆく夜でした
墨絵の色に眠る町
小川の音のその向こう
屋根のかかる路地向こう
ゆらりゆらりと立ちのぼる
向こうの山が燃えていた
虚しさでした、滲む悔恨でした
耳鳴りもいつしか
潮騒に変わって行くのでした