北極星がノース・ポールの巣箱に入ったら冬の嵐。
波長の異なる七色の雪が降る。
その断面図は虹の結晶のように見える。
チャピが言った。
「どうして冬になると雪が降るの?」
「みんなが動けないようにだ」
「それってどういう意味?」
「北極星が冬眠に就くと方向を知る目安がわからなくなるからだよ。あまり動くことがないように雪は降るってことだな」
確かに動いているのは雪だけで・・・はなかった。
「でも、雪が降ってもみんな動き回っているよ」
「ふむ。今は方角を知って動くよりも、時刻を知って動くことの方が多いのさ」
「それは何か違うの?」
「質と量だよ。本質と物量。必然と偶然。旋律とノイズ」
「・・・・・」
「個々の存在の時間の線が重なり合うところに必然と本質、旋律が生成されるように、時刻の重なりが方角なんだよ」
「・・・・・」
「学校の時間と家の時間、友達の時間と塾の時間、クラブの時間、父親の時間の母親の時間、宿題の時間に、TVの時間、ゲームの時間、定期の時間、もっともっと多くの時間が、いまここで19:35の列車を指している。帰宅の時間だ」
「確かにそうだね。わかったよ。いつも指す時刻は止まっていて、列車は動き出す。北極星の冬眠はぼくが動き出す時刻を指しているんだ」
チャビは筋雲の列車に飛び乗るとアップダウンをくり返し、最後のUPでノース・ポールの巣箱が見えた。
ポリスバッチのような北極星が冬眠している。
それが見えたかと思うと、チャビは見事に青い雪になっていた。