「父さん一緒にお墓参り行けなくてごめんな」
 
と娘からLINE。
母が他界してから節目節目に俺の手を引っ張るように一緒に行動してくれたこの子を誰が責めることができようか。
 
「ええよ、おばあちゃんがきっと合格させてくれるから受験勉強がんばっときな、とおさんが多めに頼んどくからさ」
「おばあちゃんが困るからよけいなこと頼まんといて」
 
ああ。
おばあちゃん子だったよな。
この子。
ほんと。
 
なんて思いを巡らせながらの秋の彼岸。
台風一過の墓参り。
むしろ霧雨が心地よい。
 
不思議なものでいくら寒暖の差があれ毎年この季節になると存在感を示すのが彼岸花。
和名は曼殊沙華(マンジュシャゲ)。
花の色は原色に近い朱。
どこまでも血の色に近い。
やはり様々な逸話があるのも頷ける。
たとえばこういう逸話はご存知だろうか。
 
時は戦国。
山崎にて覇権を争うも時勢は味方せず敗走するに至った明智光秀。
退路、自城、坂本城を目指すも果たせず秀吉の軍勢に囲まれた山中。
 
「この恨み永年種となり覆うこと憚らん」
 
との言葉を残し真っ白な曼殊沙華咲き誇る地を家臣数十名と共に自害しその血糊で一面朱に染めたという。
 
時は天正6年旧暦9月。
長月の候。
 
曼殊沙華はこの時より毒素を伴い朱に染まりいつしか来るであろう復讐の日に備えてその魅了するほどの色彩、朱の美を年々誇らしげに濃くしていったという・・・。
 
・・・。
 
悲しい話だろ。
 
ん。
まあ。
お察しの通り。
指が動くに任せた俺のつくり話だけどな。
 
あ、雨やんだ。
 
ほら。
ちょっとすねた君のそばに。
まるで奇跡の前触れのように虹が降りた。
 
 
<Tips>
最初のEp以下は、ん年前書いたものをトレスしただけです。
花の件を季節に応じて変えるだけでそれっぽくなるだなんてなんて汎用性があるのでしょう。
こういったテンプレ的な文章は大好物です。
(まるで反省していない)