7月中旬の健康診断の結果、尿酸値に異常が出た。

結果を知ったのは盆明けのことだ。

 

「8.9」

 

要再検査とのことなのでいつもの病院で血液検査をしたのが8月下旬。

そして本日結果を聞きにいったわけだが、「結果発表~」と親しいことを良いことに浜田口調で煽ってきた主治医にほのかな殺意が芽生えたのもしかたのないこと。

 

「9.6」

 

さらに上昇していたようで、下衆い主治医もちと小首を傾け誰ともなしに不安げな言葉を呟く。

 

「ボーダーの更に上をいくか・・・いよいよ、終わりの始まり」

 

患者不安にさせるとはコイツ本当に医者失格やろ。

なんて思ったがコイツとは長い付き合いなので不問に付しておくが上記のほのかな殺意が確たる殺意に変わった瞬間でもあった。

 

「受付で処方箋もらって隣の薬局で薬を得るとよい」

 

お前はRPGのNPCかよ。

きっちり脳内でつっこみ入れておいて順路通り薬局へ向かった。

俺はチュートリアルはきっちりこなす方なんでな。

 

処方箋をむしゃぶりつきたくなるような乳のでかい受付に渡し、まつこと数分で「まぁぼぅさん」とコール。

あいよ、と向かったブースには20代前半の超絶イケメンが対面に。

芸能人には詳しくないが、城田優くん?そんな感じのハーフ系青年薬剤師が俺に対応したわけだ。

 

城田「これからフェブリクという薬をお出しするわけですが、その前に尿酸値がここまで上昇した原因はお分かりですか?」

 

目をしっかり見つめて詰問してくる。

俺はへらへらと答えた。

 

まぼ「やっぱ酒やろなぁ」

城田「それがわかってるのならどうするのですか?」

 

一回り、もしかしたら二回りも年下の薬剤師から畳みかけるように投げかけられ少々苛立ちながら、それでもまだへらへらと俺は答えた。

 

まぼ「え?いや、まぁ減らそうかな、休刊日作るとか」

城田「そうじゃなくて、飲酒やめなきゃいけないでしょ?こんな数値だして、アルコールそのもの絶つ意志持てないんですか?」

 

はあ?

 

言ってることは至極もっともだ。

もっともだが、それ以前の問題で彼の言い方が癪に障った。

俺の性格はご存じの通り(かどうか知りませんが)非常に温和だが、体格と外見のコワモテさから普通初対面でこんな絡んでくるような口調で話してくる人はいない。

ものだから、かなりどころか相当イラっときた俺の目つきはかなりヤバかったと思うが、介さず城田は言葉を続けた。

 

城田「痛風は怖い病気です。今ならまだ、防げるんです。薬は補助的な役割をするだけです。お願いです、アルコール断ってください。足を引きづるような生活をあなたにしてほしくないのです。まだ間に合います。こんな耳の痛いことでも言うのが僕の仕事です。一緒に克服しましょう!」

まぼ「はぁ・・(どうでもよくなった感じ)」

 

俺は瞬時に判断したね。

この子(城田)は松岡修三なのだと。

振り分けを間違えた熱い薬剤師なのだなと。

悪気はない分、いつか痛い目に逢いそうだなと。

 

熱気にあてられた俺は牙をもがれた野犬のように後ずさりしながら「わかったよ」と袋を握りしめ後にした。

そして、改めて『あいつが言うように酒、本当に辞めなきゃな』と真摯に受け取ったわけだが、帰宅途中で着信のあった同僚の尚也にそのことを伝えると。

 

「尿酸値下げる薬もらったってことは安心して酒呑めるってことやろ?むしろ倍プッシュや!」

 

あかん、俺のまわりアホしかおらん・・・。